医師が注目している頭鈹鍼

白川式頭鈹鍼法・手背鍼法」DVD – 頭鍼(頭針)・手背鍼解説CDセット

医師が注目している頭鈹鍼

―臨床から生まれた理論と効果ー

座位による短時間で即効性のある治療方法(頭鍼)の 理論・手技が解り易く収録されております。

Head Acupuncture

「白川式頭鈹鍼法・手背鍼法」DVD DVD (90分) 解説 CD(P132) -2枚セット-

東京医療福祉専門学校 教員養成科講師 白川徳仁

現代病は、食べすぎ、飲みすぎ、現代的ストレス、運動不足を主な病因とする癌、脳梗塞、心筋梗塞、認知症、うつ病、アレルギー疾患等に代表される。 黄帝内経が書かれた数千年前の古代や、また日本の、戦中戦後の栄養不良、重労働、貧困、短命であった時代状況下での病気とは、病気の種類、原因、性質において大きく変化してきている。

黄帝内経に貫かれている古代哲学の陰陽五行理論や基礎理論の大半は現代においても有効であるが、現代における病気の診断法や治療法は、時代の状況変化に対応して、基礎理論の運用においては、時代状況に即したものに変化させてゆかなければならない。

私の基本的な治療法は、このような考えに基づいた臨床実践からの経験により導き出された現代版黄帝内経とでもいうべきものである。

1部 白川式頭皮鍼法(DVD)

頭皮鍼の治療線「大脳線、脳幹線(上焦、中焦、下焦)脊椎線、小脳線、上肢線、下肢線、少陽前線、少陽後線」の解説

臨床応用の仕方と疾患別の治療法(脳が原因の病、認知症、統合失調症、うつ病、脳梗塞による半身麻痺、失語症、小脳変性、運動能力の向上自律神経失調、婦人科、男性科、耳鼻咽喉科、視力の向上、眼科、歯痛、リュウマチ、免疫細胞の増加、抗がん剤の副作用、こじらせた風邪、心筋梗塞、心房細動、アレルギー疾患全般、全身的療美容法

手技の解説手技の実演 手技のポイントの解説

2部 白川式手背鍼法 (DVD)

手背鍼の治療線「膀胱経一行線、膀胱経二行線、少陽線、肝経線、下後谿」の解説

臨床応用の仕方と疾患別(運動器疾患全般、片頭痛、精神科、婦人科)の治療法

手技の解説手技の実演 手技のポイントの解説

解説書 CD(P132) 「

手技の基礎」・「頭鈹鍼・手背鍼図」・「頭皮鍼法の手技の説明」・「手背鍼法の手技の説明」・ 「頭鈹鍼法と手背鍼の臨床応用(疾患治療40例)」

定価(2枚セット) ¥9,800 消費税別・送料代引き手数料¥500

予防医療臨床研究所  電話 03-6909-5959

パソコン病と、それと関係する疾患や体質の治療法

パソコン病の現状

今や、国民の過半数が程度の差はあるが、パソコン病に罹っているように思える。しかし、包括的で効果的な治療法が、いまだ確立していない。パソコン病の深刻な症状に苦しんでいる人が多いにもかかわらず、命に関わる病気ではない、あるいは、あまりにも一般化してしまっているので仕方がないという諦めから、まともに病気として扱われていないのが現状である。

現代の職業や日常生活において、パソコンや携帯、iPad、スマホ、ゲーム器等を長時間、使用することが一般化している。このような現状において機種によって症状も多少異なるが、深刻ないわゆるパソコン病になって仕事を継続することが不可能になった人や、パソコン病とそれに関係すると思われる深刻な症状に悩みながら仕事を続けている人は数知れない。

例え、深刻なパソコン病を患っていても、現代社会においては、パソコンを抜きにした仕事が考えられないということもあって、我慢して続ける以外に選択の余地がない。

いろいろ治療を試みてみるが、満足のいく治療結果が得られないで困っているのが現状である。

*パソコン病は、仕事の効率という面からすると、眼が霞んできて、頭が回転しなくなり、首、肩、上肢の痛みや痺れに耐えながら、パソコンに向かって座っているが、ポカミスが連発するようになり、時間が経過するだけで仕事になっていないことがある。

現場の第一線の本来的には優秀な人材が、パソコン病で無気力化しているようでは、日本経済の先行きは暗澹たるものである。これは仕方がないでは済まされることではなく、なんとしても、どうにかしなければならないことである。

このような現状に対して、明確な対策と効果的な予防法と治療法を提示したい。またパソコンを使用し続けることができる長距離ランナーであるために、この治療法が頼りになるものと確信する。

 

はじめて体験する治療法

パソコン病をめぐるこのような現状に応えるために、パソコン病の一般的特徴を明らかにすること、また体質や仕事の条件によって、その症状やその程度が異なってくる。

個々の患者の主症状と、それと関連する体質や諸症状、さらに、男女差、年齢差、職業等の差を総合的に勘案した個々の患者にみあったオーダーメイドの治療法が必要である。個々人の条件が異なるので、画一化された治療法には限界があるので、例え、マッサージによる治療であっても、問診、経絡診、舌診、脈診等の丁寧な診断をして、その人の証にそった治療を心がけるべきである。

医学レベルの高い治療効果を発揮し、しかも気持ち良く治療するという新しいスタイルの治療型マッサージを調気手技療法という。

*これまでのマッサージは、ほとんど診断行為をしないままで、一律のパターン化された慰安としての慰安型マッサージであった。このようなマッサージでは、高度の医学的レベルの治療を必要とするパソコン病の本格的な治療は不可能である。

調気治療法は、四診合算による正確な診断をし、その診断に基づいて治療方針を立て、経絡経穴に対して補瀉手技を行って治療をする。

*また、この治療法は、精神科、内科、外科、五感器科等、全疾患に対応できるもので、現代医学の脳の解剖生理に対応し、かつ中医学の基礎理論に基づいた頭皮治療法を中心にして治療を行う。

頭皮治療法は、頭部への治療をすることで、全身の司令塔である脳(治療区域は大脳、脳幹、小脳に区分される。)の治療を通して身体の治療ができる。

この頭皮治療法は、脳が原因の病気、たとえば、痴呆症、脳梗塞による半身麻痺、鬱病や不眠症を含む精神科疾患等の治療は得意分野になる。

頭皮治療法は、鍼治療あるいは手指による手技療法のいずれでも治療することができる。

*さらに、調気治療法は、頭皮治療法の他に、全ての運動器疾患の治療に対応できる手鍼療法、また臓腑弁証を基礎にし、現代医学も取り入れた治療法であり、全疾患に対応できる精度の高い耳ツボ療法、また中医基礎理論に基づいて体系化された補瀉法による全疾患対応型の体鍼等を行う。

実際の治療は、患者の希望する治療法によって、手技療法、鍼治療、耳ツボ療法、手鍼治療法、吸い玉療法等の単独の治療、あるいは、それらの組み合わせによる治療によって行われる。

 

臨床家の養成

あん摩指圧マッサージ師、鍼灸師、鍼灸学校あるいは盲学校の学生は、調気治療法を積極的に学んで、パソコン病の治療ができるようになってもらいたい。調気治療法を学ぶということは、パソコン病に限らず、広範な難しい病気、とりわけ現代病に対して自信をもって治療することができるようになる。

*調気治療法の治療家になる条件は、鍼灸学校や盲学校で、中医学の基礎理論を、しっかり勉強してきた人で、向上心のある人である。

学校で学んできた中医学の基礎理論には歴史的な制約があって、それだけでは不十分なところがあるので、さらに、それに、上乗せする形で、現代社会で一般化している現代病の特徴を理解できるようにするためのハイレベルの中医学基礎理論と脈診、舌診、経絡診等の診断学の実践的学習、経穴の効能に関する経穴学の学習等が必要になる。

*鍼治療の臨床家として、本格的なプロのレベルを目指すには、経絡、経穴、治療線、反応点のミリ単位での正確な位置を感覚レベルでわかるように訓練すること、1ミリ以内の誤差で、正確に無痛で経穴に鍼を刺入できるように訓練すること、経絡を流れている気に対して補瀉手技をして、その補瀉の効果が治療直後には、はっきりと確認できるようになるレベルまで訓練をすること、最後に実際の患者に対する臨床訓練を経て治療結果を予想して、その予測通りの治療効果を発揮できるようになるまで長期の訓練を続ける必要がある。

*臨床訓練の成果が比較的早く出しやすいことや、訓練の順序から考えて、手指による調気手技療法の訓練を優先的に先行した方が良い。このことは、手技療法の方が、鍼治療よりランクが低いと考えるべきではない。手技は、一切の道具を使わずに、手指だけで治療するのだから、それで驚くほどの良い治療効果を出せるのなら、まるで神技のようになる。人間のなせる技としては、最高級のものであると誇れるようになれるまで臨床訓練に励んでもらいたい。

*現代人が本格的な鍼師、手技療法のプロになるためには、臨床訓練のなかで、歴史的に喪失してきた人間の感覚や感性を呼び覚まし回復させる必要がある。

鍼師の場合は、邪念の虜から解放されて治療に集中できるようにする、またミリ単位の正確さが求められる鍼の操作技術等の訓練を通して、失われた能力を徐々に回復させることができる。回復には、個人差があるが、相当、長期の訓練を要する。鍼師に必要なレベルの感覚や感性を獲得できた人は、将来、本格的なプロの鍼灸師になれる。

鍼灸師の一般的レベルは、資格においてはプロであっても、その実力は、半人前のレベルにさえ達していない。しかし、適切な指導を受けながら、基礎的な手技の訓練と臨床経験を重ねてゆけば、ほとんどの人は本格的プロになれる可能性がある。

*鍼灸の技術は、数千年の歴史的経験の上に築かれてきたものなので、自己流の学習や訓練には限界がある。補瀉手技の原理や基本的な技術は、歴史的に形成されてきた技術を継承し発展させてきた先生から学んだ方が良い。その技術が本物か、偽物かは、臨床において、その効果が実証されるかどうかである。

ほとんどの人は、本物を見たことがないので、偽物をつかまされていることに気付くことがない。偽物を本物と信じ込まされていることが、悲喜劇の始まりである。プロにふさわしい治療能力を身に着けるには、本物に出会って、本物の鍼の技術を獲得することである。後は、本人が執念をもって諦めずにやることである。楽な近道はない。

 

盲人の臨床教育と雇用について

盲人は、指の感覚の鋭さ、精神的集中力、手技に関する学習能力の高さ、さらに最も大切なやる気において、治療家としての資質が優れているので、その能力や資質が、十分に生かされるように教育すれば、優秀な治療家に育ってゆく可能性がある。

その可能性を実現させるための教育の問題は、施設や設備や資金の問題ではなく、教育内容、あるいは、先生のレベルの問題である。しかし、個々の先生のレベルの問題というよりも、日本全体の鍼灸のレベルの低さの問題である。

*国際的な比較をすると、日本の針灸のレベルの低くさや制度上の問題があることが明らかになってくる。日本の中だけで議論していても、何が問題なのかさえ分からない。

中国、アメリカ、韓国等と国際比較したとき、鍼灸の国家的レベルでの普及の度合いは、日本の方が、比較にならないほど低い。老舗の日本が低迷し、鍼灸の伝統がゼロであった新参者のアメリカが、なぜ、そんなに盛んになったのか、日本は、なぜ低迷し続けているのか冷静に、良く考えてみる必要がある。

国民的な人気や信頼度、治療の実力、教育制度において、比較にならないくらいの差があるのが現状である。

低能力高プライド型になった老舗の日本鍼灸は、歴史の皮肉で、いまや井の中の蛙である。自らの姿を鏡に映してその滑稽さを自覚し恥も外聞も、かなぐり捨て、アメリカから学ぶべきものは学び、日本の鍼灸を立て直すための参考にするべきである。

*さて、盲人が仕事に付いてからは、仕事をする際に、盲人としてのハンデイーがあるので、患者へのサービス面等で不十分な面があると思うが、肝心の治療内容自体は何ら劣ることはない。

盲人の仕事上の能力や問題点が総合的に、客観的に評価され、行政の支援も得ながら、関係者が仕事の環境を整えるようにすれば、盲人の雇用が促進されることになると思う。

これまでの行政の盲人に対する福祉政策は、社会的評価が高かったと思う。しかし、今後は、さらに盲人の治療家としての能力や資質が社会的に正当に評価されて、積極的に社会進出できるように官民を問わず、努力すべき課題である。

そのためには、社会的なニーズに合致する教育内容や制度に必要に応じて改められるべきである。社会的に評価されるような教育のレベルを設定すること、現代の状況から、あまりにもかけ離れ現代社会とかみ合わなくなった教育内容から、現代社会の要請に答えられるような内容に根本的に改めて行くべきである。また、思い切って発想を変えて、これまでのしきたりや習慣、既得権に拘ることなく改善してゆくことが大切である。

国民のニーズに答えるということは、平たく言えば、これまでよりも格段に治療効果を発揮できるような教育内容と教育環境にするということである。

*たとえば、一般の鍼灸学校や盲学校の学生時代は、国家試験に合格するための授業はするが、臨床家を養成するための授業はほとんどない。例えば、在学中に、一度も、本物の患者を治療する経験はないままで、国家試験に合格したので、さあー、臨床現場で、自由に患者の治療をしてくださいと言われても、治療できる人などいるわけがない。

誰が考えても、卒業後、最低1年間くらいの臨床研修制度が必要であることは分かるはずであるが、そのような研修システムはどこにも存在しない。つまり、臨床家としては素人同然の人が治療していることになる。患者の側から見れば、なんという恐ろしいことか。

試みに、特区制度のような考えを導入して、盲学校の卒業見込み者や卒業生の希望者から小人数を選抜して、1年間、適当な研修施設で、盲人の条件に合った教育内容(たとえば、望診よりも、脈診、問診、経絡診を重視した独自の実践的な診断学を採用する)で、ハイレベルの臨床研修を行い、その結果を参考にして、今後の改革の方向性を探っていったらどうだろうか。

学校の経穴の取穴の授業では、ツボの位置に、直径1センチくらいのシールを貼る練習をしている。臨床では、無痛で刺入し、臨床効果を発揮するには、約1ミリの誤差で取穴する必要があるが、そのような臨床指導能力のある先生は、ほとんど見かけることはない。鍼治療はツボを使って治療するのに、そのツボの位置が外れている。あるいは、経絡やツボが、どこにあるのか感覚レベルで分かっていない。これでは、臨床効果が出る治療ができるはずがない。

盲人は、指の感覚が鋭いし、集中力も高いので、正確なツボの位置を指先で分かるように、丁寧に指導すれば、短期間に、相当ハイレベルの段階まで行ける可能性がある。

また、どのツボが何に効くのかという経穴学の授業が存在していないので、ツボを使ってどのように治療すればよいのか見当もつかない人がほとんどである。

日本鍼灸の現状は、絶望的なほど、臨床家が育つ見込みが制度的にない。ここで、高級なレベルの議論をしているのではない。本来は、鍼灸学校の一年生で終えていなければならないことが、教育のカリキュラムから抜け落ちているのである。

必要不可欠な針灸の基礎知識と技術の臨床研修が最低でも必要である。臨床家として将来、飛躍してゆくための基礎的な訓練をする研修施設が必要である。あるいは、学校のカリキュラムの変更をするか、臨床教育能力のある教師の養成から始める必要がある。

あん摩指圧マッサージの教育内容は、鍼灸以上にお粗末で医学レベルの治療効果は、ほとんど期待できない。

また、整骨院は、保険治療で成立っているが、もし、鍼灸と同様、保険適用がなくなれば、その治療レベルからみて、どれだけの整骨院が生き残れるだろうか。

盲人の治療家としての資質が臨床教育を通して開発されて、これまで以上に、その能力が格段に高まれば、社会福祉とは別次元で、経済的メリットを動機にして、盲人の雇用が拡大してゆく可能性が出てくる。

福祉的性格の生活支援というよりも、職業能力を高めて自立して安定的な生活ができるようにするための臨床研修を中心にした教育投資の方に重点を移すべきではないだろうか。

*鍼灸、マッサージの一般の学校教育制度の問題もあるが、先ずは、盲人の職業能力の向上と、経済的自立能力を高めることを目標にして、あれこれの既存の制度や習慣に拘ることなく、実行可能なところから改革に着手すべきである。

もし、盲人が、有能な治療家として活躍できる能力を身につければ、例えば、パソコン病等の現代病の治療が得意であれば、鍼灸マッサージ治療院へ、リハビリの期間を半分以下に短縮できる治療能力があれば、それが評価されて病院のリハビリ科へ、病院で、診断がつかない、あるいは治療効果が出にくい疾患の治療が得意であれば、病院の鍼灸マッサージ外来へ、湯治客から治療型のマッサージを期待されて、湯治目的の温泉地への雇用が開けてくる。また、条件が揃っていれば、開業してもやって行ける。

盲人の高い治療能力による集客力が期待できるということになれば、雇用する側にとっては、営業上のセールスポイントになるので、雇用の機会が増えてくる。

たとえば、温泉地で、治療型の優れたマッサージができる盲人がいるという噂がたてば、全国から湯治客がやって来て、寂れかけていた温泉町の観光が蘇るかもしれない。

盲人が、その地方の福の神になれるかもしれない。

 

A.パソコンの長時間の操作によって引き起こされる身体的症状

全身的には、極度の運動不足になるが、作業の姿勢を保つために、頚部、肩、肘、手首、背部、腰部を固定し続けるので持続的な負担がかかることになる。それで、これらの部位は動かさないことによる疲労が蓄積されることになる。一方、指や眼は動かし過ぎによる疲労が蓄積される。この疾患の特徴は、全体的には固定して動かさないが、指や眼の局所の使い過ぎによる疲労が存在している。このようなアンバランスな疲労の仕方が問題である。この疾患の治療は、局所的治療に限定することなく全身的観点から、上記したようなアンバランスを回復させるような治療が必要である。

身体的な主な症状としては、以下の1から3の症状である。

1.長時間、パソコンの操作をするため前屈姿勢が、主な原因で引き起こされるストーレートネック等による頚部や肩の凝り、上肢の指、腕関節、肘、肩関節等のシビレや痛み

2.長時間、座りっぱなしの姿勢が原因で起こる背部、腰部の凝りや痛み、下肢の浮腫みや重だるさ

3.眼の酷使による眼精疲労

 

B.高度な頭脳労働に伴う症状

「パソコン」を操作する際に、機械的操作だけでなく、高度な頭脳労働あるいは創造的な仕事をしている場合は、Aの身体的症状に加えて、以下のような、頭の使い過ぎによる固有の症状が出る。

1.数時間、集中して脳を使い続けると、頭の中が満タンになってそれ以上詰め込めない状態になる。具体的には、極度の頭の疲労感、集中力の低下、頭痛、意欲の減退、記憶力の低下、創造性やひらめきの欠如等である。

2.頭の使い過ぎによる脳の疲労は、気血を損傷するという虚の側面もあるが、むしろ、頭がいっぱいになって、オーバーヒートしてエンスト状態になることから、脳が気滞於血になって、しかも熱化して働かなくなるという実証になる。

この状態では、パソコンに向かって仕事をしているつもりでいても、実際には、頭が回転しなくなり、ミスが続発し、時間だけが流れて仕事がはかどらない状態になる。

3.これらの症状は、パソコンの機械的操作を長時間続けるだけでも出現することがあるが、高度な頭脳労働を伴う場合は、このような脳の疲労に伴う症状が一層、出現しやすくなる。

4.脳の疲労回復をはかるためには、睡眠によって脳を休息させることができる。

また、夜、睡眠を十分に取らないと、陰陽のバランスが崩れて、頭が熱っぽくなったり、頭の切れ味が悪くなったりして、創造的な仕事ができなくなる。

睡眠に関わりなく、脳が一定の限度を超えて疲労した場合は、仕事を継続することは、実際的に無理であり、時間の無駄になるので、早めに仕事を切り上げて治療した方が良い。

脳の疲労をリフレッシュする治療は、比較的速く効果的に行うことができる。

 

C.精神的ストレスがかかっている場合の症状

仕事上のストレスや、人間関係の軋轢によるストレス等の問題を抱えながら仕事をしている場合は、A,Bの症状の他にストレスによる固有の症状が加算される。

  1. 強いストレスを受けると肝気鬱結を起こして気血の流れが全身的に停滞する。

肝気鬱結になると、肝血によって養われている筋が、肝血の流れが詰まることで養われなくなる。このことが引き金になって、それまでは潜在的で我慢できる範囲内であったA、Bの症状が増悪し、我慢の限界を超えて、仕事を投げ出してしまうようになることもある。

2.パソコンの操作による眼の使い過ぎからくる眼精疲労だけでなく、ストレスによる肝気鬱結で気血の流れが詰まり眼が肝血で養われなくなると、極度の視力低下や眼の奥の痛みや眼の乾燥あるいは眩しさや眼の周りのクマという症状がさらに加算されることがある。

3.また、肝気鬱結になると、身体的症状の悪化にとどまらず、精神症状を伴うことが多い。イライラ感、怒りっぽい、あるいは鬱々とする、落ち込む、泣きたくなる等、精神状態が不安定化しやすくなる。それで、仕事の集中力の低下、ミスの続発、対人関係でのトラブル等を起こしやすくなる。

4.一般的には、誰しもパソコンのやり過ぎは固有の様々な症状を引き起こすものである。

しかし同じ条件でパソコンの仕事をしていても、ある人は深刻な症状が出るが、ある人は肩凝り体操をすれば楽になるという程度の症状しか出ないという人もいる。

このような個人差が生じる主な原因として、ストレスによる肝気鬱結証に伴う症状があるかどうかが大きく関係している。

5.現代社会はストレス社会なので、大半の人は程度の差はあるが肝気鬱結があるので、この面からの治療を加えることで、効果的な治療をすることができる。

肝気鬱結の治療は、即効性があり、治療後は爽快になるが、ストレスの原因そのものは治療で除去することはできない。治療で、ストレスに立ち向かう力を回復させることが、ある程度、可能になるので、後は、本人の努力でストレスの原因そのものを取り除くようにしてもらいたい。

しかし、同時に人間生きている限り、ストレスは、つきものであり逃れられないというのも事実なので、ストレスを自分流の仕方で解消しながら上手に付き合っていくようにすることも大切である。

 

D.飲食不節に伴う症状

アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎ(とくに、甘いもの、野菜や刺身などの生もの―火をとおすとよい、油っこいもの等は湿邪が生じるのでよくない)、また夜食は、痰湿を生じ、水の代謝が悪くなって、浮腫み、重だるさ、眠気、無気力等の症状が出やすくなる。また症状は天候に左右されやすい。

このような症状が、A,Bの症状に加算されると、頭が重く、眠くなり、意欲と根気がなくなって仕事を継続する気力がなくなり、まるで、ふぬけのようになる。これは、性格の問題ではなく、痰湿証という病気の一種である。

痰湿証の病因である飲食の不摂生を改めることが第一であるが、同時に痰湿を取り除く治療をする必要がある。

食べ過ぎ、飲み過ぎであることは、本人も分かっているが、飲食がストレス解消のためになっているために、やめられない場合がある。ストレスの解消法として、スポーツとか、森林浴とかが良い。運動によって代謝をよくすることもできるのでダイエット効果も期待できる。また、趣味や好きなことに夢中になることがストレス解消になる。また、ストレスがあっても、それほど気にならないように精神的安定感が保たれるような治療や訓練をすればよい。

ストレスが強い時は、なおさらそうなるが、胃に余分の熱があると、消化吸収が良すぎて、食べても、食べても、お腹がすきやすいということがある。このような場合は、胃熱を取り去る治療をするとか、口と胃に蓋をするような治療をすることで、食べ過ぎ、飲み過ぎを自己コントロールしやすくする必要がある。

 

E.生理痛と随伴症状

男性には実感として分かりにくいことではあるが、女性は毎月の生理に伴う諸症状があって、それが仕事において支障を来すことがあり得る。これには、個人差があるが、ほとんどの女性にあり得ることである。このことが当然のこととして、男性の側においても認識され、企業としても相応の対策が立てられていなければ、現代は男女共同参画時代と言われても、その前提条件が整っていないということになる。

生理に伴う症状には、生理前にイライラしたり、怒りっぽくなったり、精神的に不安定化しやすくなり、仕事に集中できなくなることがある。さらに季肋部痛、少腹部痛、片頭痛、耳鳴り、冷えのぼせ、異常な頚部や肩の凝り、視力の低下、少腹部痛、浮腫み、動悸、下痢あるいは便秘、異常食欲あるいは食欲不振、顔面の吹き出物、眼の周りのクマ等の症状を伴うことある。

A,Bの症状に、このような症状が加算されると、ますます仕事に集中することがむつかしくなる。

生理痛の程度が酷くて、仕事に集中できない人が、相当数いるにもかかわらず、何もないかのように見過ごされているのが現状である。

生理痛の重い症状がある人に対しては、企業としても対策を立て、仕事に集中できるようにする必要がある。

このことの解決策は、大げさに考える必要はなく、生理痛の治療は生理前に行えば、生理痛の予防ができるし、また生理痛そのものの治療も効果的にできる。また痛みを抑えるだけでなく、すべての症状を同時に治療することもできる。さらに、治療を継続すれば、生理痛の根本的な治療の可能性もある。

婦人科疾患のもう一つの代表的な更年期障害は、個人差はあるが、程度の重い人は深刻であり、心身ともに限界をオーバーするような症状が長期に続く場合もあり、退職せざるをえなくなることもある。

更年期障害は、一定の時期が来なければ、すっかり治癒することはむつかしいが、症状をコントロールすることは可能であるので、治療しながら仕事を継続することができる。

 

F.運動不足に伴う症状

学生時代に運動部にいて、スポーツで鍛えて、体力には自信があった筈の人が就職後、パソコンの仕事を一日中するようになって、半年もしないうちに、身体も心もぼろぼろになって会社を辞めていく人がいかに多いことか。

本人が一番、ショックを受けているが、会社の方も有能な人材として将来を期待していた人の突然の退職願いに驚くと同時に、またか、どうしてと疑問符が湧いてくる。

この疑問に答えるのは、さほど難しいことではない。

学生時代には、スポーツをして身体をよく動かしていた。就職をしてからは、一日中、パソコンに向かって座っているので、運動によるエネルギー消費が極端に減少しているにもかかわらず、食べる量はほとんど変わらないという場合、どうなるか、食べ過ぎた分は、人体にとって不必要な邪気である痰湿として体内に蓄積される。

食べ過ぎによる痰湿は、デブになってかっこが悪くなるというだけでなく、邪気となって、自分自身に襲い掛かってくるのである。

巷では、この状態をメタボとも言っているが、痰湿は全身の至る所に行き着き、いたずらをする。頭に行き着くと、頭重、嗜眠、無気力、落ち込み、鬱々としてくる、この状態にストレスが加わると本格的鬱病になる可能性がある、皮下に貯まると浮腫、全身的重だるさと倦怠感、様々な臓器にも深刻な影響を及ぼす可能性もあり、まさに万病のもとになり得るのである。

また、極端な運動不足は、動かないことによる於血を形成するので、全身至る所に、於血に伴う痛みを生じる可能性がある。

A,Bの症状に、運動不足と食べ過ぎによる痰湿の症状が加算されると、深刻な得体のしれない症状を伴ったパソコン病になって、就職後、数ヶ月もしないうちに退職願の提出という事態になりかねない。

このような事態を回避するには、急激な運動不足が命取りになるので、運動量を減らすにしても、徐々に減らすようにするべきである。そのためには、仕事が終わった後、適当なスポーツができるような時間的余裕が持てるようにする必要である。また、運動量に見合った食事量にするべきである。

なお、病的状態になってしまった場合は、食欲を抑える治療と痰湿と於血を取り除く治療を行う必要がある。このような治療を行えば、退職願いを出す必要がなくなる。

 

G.低血圧、高血圧タイプの症状

高血圧、低血圧のいずれであっても、肩凝りの性質のちがいがあるが、仕事と関わりなく日常的に肩凝りになりやすい場合がある。このような肩凝りタイプの人は、パソコンのような肩凝りを起こしやすい仕事をしたら気の毒なことになる可能性があるので、しっかりとした対策を立てて仕事をする必要がある。

現代では、少なくなってきた脾気虚タイプの低血圧の人は、脾の昇清作用が弱く、また気の流れる勢いも弱いので、気に先導されて流れている血も目詰まりを起こして流れが停滞し、気虚於血の肩凝りになる。このタイプの人は、肩凝りになったからと言って運動をしてもエネルギー不足のタイプなので運動をした分だけ、さらに疲れる可能性があるので、疲れるような激しい運動は避けて、負担が少ない軽度の気持が良くてほぐれるような運動をするとよい。

このタイプの治療は、補気をメインにして、正気を損傷しないように活血する必要がある。治療効果は即効性があり、また治療を継続すると体質が変わって根治することもある。

また現代は、メタボの問題が大きくクローズアップされる時代なので、食べ過ぎによる痰湿中阻、またストレスによる肝気鬱結の状態が長く続くと、結果的に、脾の昇清作用が低下して肺や頭に栄養が届かなくなり、中焦が実証であるにもかかわらず、上焦が虚証になって低血圧になることがある。

このタイプの低血圧は、若い女性にも多く、食欲があって、エネルギッシュである反面、午前中は低血圧の気虚証の症状があるが、身体を動かしているうちに、中焦の実証による詰まりが緩んでくると、脾の昇清作用も働くようになって上焦の虚証がなくなり、エンジンがかかってくる。この治療は低血圧の虚証の症状があっても、肝気鬱結や痰湿中阻が本質的な原因なの、実証としての治療をメインにするべきである。

高血圧症タイプの人は、陽気が亢進しているので、仕事に関わらず、常に頭の中が熱っぽくて膨張する感じがあり、頚部や肩も、同様に張っている感じがする。興奮するような刺激を受けると、症状が悪化することがある。このようなタイプは、肩が凝りやすいパソコンの仕事を長時間続けることはできない。無理をしたら、後で大変辛い症状に襲われることがある。

比較的若い人で、陽気が亢進しているだけの実証タイプの高血圧は瀉法の治療をするとよい。老人や陰虚陽亢タイプの高血圧には、陽亢には瀉法、陰虚には補法をするとよい。

 

「パソコン病の基本的症状と関係する疾患別の治療法」

1.パソコンの長時間の操作に伴う身体的症状とその治療法 

a.頭皮治療法

この治療法は、身体に対する司令塔に相当する大脳、脳幹、小脳に対する治療を通して、全身の治療を行うという新しい治療法である。これまでの一般的な治療法である身体の臓腑や身体の各部分に対して行う治療法とは、発想において全く異なるものである。

*パソコン病の特徴である疲労の仕方のアンバランスの回復には、全身運動である水泳、ジョギング、全身を動かす体操、その他の適切なスポーツ等が良い。頭皮治療では、全身的な運動に相応するものとして、全身的な治療効果を狙って、全身の気滞於血、痰湿を取り除くために、脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦に対して鍼または指の手技による瀉法を行って、全身の気血津液の調和をはかる。その後、個別的な症状や局所の治療を行うようにする。

*パソコン病の直接的な症状である頚部と肩、肩関節の症状がある場合には、頭皮治療法の図に描かれている脊柱線の頚椎とそれに並行する数ミリ外側の反応線、さらに肩凝り線とそれに並行する反応線に鍼よる雀啄の瀉法、または手指による平補平瀉の手技を行う。

上肢、下肢に症状がある場合は、大脳線Ⅳの上肢線、下肢線とそれに並行する反応線に、

また背部、腰部に症状がある場合は、脊柱線の胸椎、腰椎、仙骨と、それに並行する反応線に、鍼の瀉法または手指による平補平瀉法の手技を行う。

*手指や適当な道具による手技の治療効果は、針治療に近い効果を出すことができる。

手指による手技の場合は、治療線中で反応が強く現れている部分を中心にして平補平瀉法の手技を行う。

*治療線の選定は、臓腑弁証や経絡弁証を基礎として行うが、同時に、現代医学の基礎知識を参照にして選定する。

「手技のポイント」

治療線は、1から2ミリくらいの細い溝状になっているので、20度角くらいで、正確に刺入する。線から逸れると、痛みが出やすく効果も少なくなる。正確に刺入すると、絡むような感じがなく鍼先が滑らかであり、痛みや響きもない。少し時間が経過すると、鍼先が締め付けられるような粘い感じがしてくる。そのような感じがしたら、治療効果がはっきり出てくる。

鍼の手技は、雀啄の補瀉法である。

指による手技は平補平瀉法である。得気を得て気持ちが良い範囲内の圧力で手技をする。

b.耳ツボ療法

神門、肝、眼、 頚、肩、腰、上肢、下肢の相応する部位、耳尖の刺絡

取穴位置の誤差は1ミリ以下のピンポイントである。少しずれても、治療効果は半減するか、ゼロになる。圧刺激をすると、顔をしかめるくらい痛がるところがピンポイントのツボである。種子を貼った後に、もう一度、顔をしかめるくらいの圧痛があるかどうかを確認する。圧痛点を丁寧に探すことが仕事である。単純なことであるが、このことが実行できるようになれば、耳ツボ名人になれる。

臓腑弁証を基礎にした取穴に、現代医学に基づいた取穴を併用する。

この耳ツボ療法では、植物性の種を絆創膏で張り付けるだけなので、補瀉手技はできないが、平補平瀉の手技の効果が出るので、良性の双方向性の調節作用を引き出すことができる。したがって、虚証、実証に対しても効果を発揮できる。

鍼や金属製品を使って耳の軟骨の炎症を起こした場合、治療が難しいことがあるので使用禁止すべきである。植物性の種は安全である。

c.手鍼治療

督脈、小腸経、膀胱経の痛みに対しては、下後谿

頚部のすべての部位の痛みや凝りに対しては、三焦穴で5分から1寸の範囲の反応点

背部の凝りや痛みに対しては、三焦穴の1~1.5寸の範囲の反応点

腰部、下肢(胃経、三陰経)の痛みや凝りに対しては三焦穴の1.5寸~2寸の腰腿点付近の反応点

腰部、股関節、下肢(膀胱経、胆経)の痛みや凝りに対しては、下焦穴の1.5寸から2寸の腰腿点付近の反応点

肩井穴の前方から鎖骨の内側部の痛みには下合谷

手のツボに鍼、または手技による瀉法をする。運動鍼にすると効果的である。

d.経絡、経穴による鍼治療

全身の気の巡りをよくするために、内関から間使あるいは郄門までの透刺を先行して行う。すると、局所や個々の症状に対する治療効果が良くなる。

大腸経の症状と頚部(C2の天柱付近)の症状と肩井付近の凝りには合谷の運動鍼

少陽経の風池や天髎の凝りや痛み、頚部(C3からC6の膀胱経)の症状には外関

小腸経の症状と頚部(C6からTh1の膀胱経)の症状には後谿の運動鍼

督脈上の頚部や腰背部の症状、同名経の膀胱経全体の症状には後谿

全身の於血による症状、または肩関節の肺経の痛みには三陰交

肺経の重だるい症状には同名経の陰陵泉

全身の湿邪による重だるさや浮腫みには陰陵泉と豊隆

大腸経の肩凝りや関節痛には、同名経の足三里の下1寸

肝気鬱結、肝火上炎には太衝、内関から間使の透刺、風池、百会

眼の症状には光明、太衝、陰陵泉(湿熱)、三陰交(於血)、風池、天柱、攅竹から晴明の透刺、絲竹空から太陽へ透刺

風池の周辺の凝りや痛みの症状には丘墟

胸鎖乳突筋の痛みには懸鐘

頚部、肩凝りの局所取穴としては天柱、風池、肩井、天髎、天宗等、また、局所の是穴

症状のある経絡の井穴

局所に吸い玉

e.経絡、経穴への手技療法

全身的レベルの肝気鬱結や労損による気滞於血による痛みや凝り、精神的不振には、内関から郄門にかけて心包経の経絡に対する瀉法を行う、この治療を、個々の症状に対する治療よりも先行させて行う。また、肝経の太衝と、肝経の骨上の蠡溝から中都までの経絡に対する瀉法

全身的レベルの湿邪や痰湿による重だるさには陰陵泉や豊隆の瀉法を加える。

*治療は、全身的レベルの治療を優先した方が良い。局所の治療は、全身状態を好転させておいた後に治療すると、効果的な治療ができる。

手技療法では、鍼治療のように、ツボという一点に対して、あるいは、経絡の線に対して、さらに面に対しても対応できるので、臨機応変に使い分けながら効果的な治療をすることができる。

*その後、個別の大腸経に沿った肩、肩関節、上肢、とくに示指の痛みやしびれ、運動制限、さらに肩井付近の凝りには、大腸経の合谷、あるいは曲池から温溜までの経絡に対する瀉法、あるいは陽明大腸経と同名経の陽明胃経の上巨虚から足三里にかけての反応点への瀉法

少陽経の頚部の風池や天髎付近の凝りや痛みに対しては、四瀆から外関までの経絡に対する瀉法

また風池の凝りには丘墟、肩凝りや肩関節部の凝りには陽陵泉、胸鎖乳突筋の凝りには懸鐘の瀉法

肩背部、肩関節部の小腸経の凝りや痛みには、支正の付近の経絡上の瀉法、あるいは後谿、または養老の瀉法の手技をしながら運動をさせる。

肺経に症状がある場合は、尺沢あるいは尺沢から孔最までの経絡上の瀉法、湿邪による重さがあれば、同名経の陰陵泉、また於血による痛みがあれば、三陰交の瀉法

督脈、太陽小腸経、膀胱経の3経の凝りや痛みには、後谿の瀉法で運動をさせる。

各経絡のどの部位であっても、関係する経絡の井穴を指で刺激しながら運動をさせる。

膀胱経の下肢、腰部、背部の痛みや凝りには、委中の瀉法

頚部の膀胱経の痛みや凝りには、崑崙の瀉法

膀胱経の湿邪による重みには、兪穴の束骨、胆経の湿邪には足の臨泣

各経絡の疎通経絡には井穴

「手技のポイントについて」

伝統的な手技療法である調気手技療法は、四診合算による弁証に基づいて、経絡経穴を選定し、経絡に流れている気に対して、程よい圧を加え、得気を得た状態で、補瀉手技を行い、陰陽五行のバランスを整えることである。

*撮む強さ、押して回転するときの圧力の強さの加減は得気を得られる強さである。

指による補瀉手技で、得気を得る指の適度の圧力とは、経絡に流れている気に、指が程よく届く深さである。患者は、気持ちよく感じ、効きそうな気がする指の圧力が良い。

圧が弱ければ、経絡の深さに圧が届いていないので、物足りない感じがする、強過ぎれば、経絡を突き抜けているので痛く感じ、治療効果も半減する。

程よい強さで気持ちよく感じる圧力が、経絡の深さに丁度、届いていて、経絡の中を流れている気を捉えることができるので治療効果も高くなる。

*男性は、筋肉質であるので、筋肉の中に流れている経絡に指の圧力が届くには、女性よりも強い圧力が必要である。女性は男性よりも弱くてよい。女性は男性の半分から3分の2程度の圧がよい。

実証は硬くなった凝りがあることが多いので、経絡に圧刺激が程よく届くようにするには、強くする必要がある。虚証の場合は、力がなくなって柔らかくなっている場合が多いので弱い圧力でよい。

経絡経穴から指が逸れたら、効果がなく、痛いあるいは嫌な感覚がして、効く気がしないと患者は感じる。

*この手技は、筋肉やリンパに対するマッサージとは違って、経絡を流れている気に対して働きかけていくことがポイントなので、気の感覚を捉えながら治療することが大切である。そのためには、患者の反応をよく見ながら、初心者は、時には、どんな風に感じているかを患者に尋ねながら行うとよい。

*引くは瀉法、押すは補法、 経絡の気の流れに逆らうのが瀉法、従うのが補法、患者の正面に向かって外回りに回転さすのが瀉法、内回りが補法である。この回転方向は陰経、陽経にかかわらず、あるいは背部においても同じ回転方向になる。したがって、背部では内回りになる。これらの補瀉法の原則を間違えると、治療効果は裏目に出ることがある。揉みおこしなどというものは本来的にはあってはならない。それは、虚実の診断を間違えたか、得気が取れていないか、補瀉手技をまちがえたかである。

*一般的に行われているマッサージでは、ほどほどの気持ち良さがあるが、実証タイプの拒按の反応が出る人はマッサージ嫌いになる。一般的マッサージは、補の作用に傾いているので、このような拒按タイプの人には裏目になる。一般的には、補瀉法の原理は適用されていないので、まぐれで効くこともあるが、裏目に出ることも多い。プラスマイナスゼロであれば、まあまあということになる。

*肩井、天髎、肩外兪付近の局所の実証の凝りには、大きく撮んで引っ張る提挿の瀉法の手技が良い。

背部や腰部の凝りには、脊柱起立筋を縦の状態で、あるいは、交差するように、大きく撮みながら、下から上に向かって手技をする。凝りの強いところは、撮んだ状態でしばらく引っ張るとよい。

あるいは、親指や母指球を使って、ときには、硬い凝りがある腰部などには肘を使って、瀉法の方向(背部では内回り)に回転させる捻転の瀉法の手技をしながら、また補瀉迎随の原則に従って、下から上に向かって補瀉迎随の瀉法を行う。

*捻転の瀉法の回転方向は、患者さんの正面に向かって、外回りの回転が瀉法であり、この回転方向は、背部においても、陰経、陽経に関わらず同じである。ちなみに、背面の回転方向は内回りになる。なお、任脈、督脈の回転方向は、男性は左半身の回転方向、女性は右半身の回転方向に準じて行う。

*頚部の膀胱経や胸鎖乳突筋の凝りは、大きく撮んで引っ張る、撮みにくいところは、瀉法の捻転による手技にする。

手足の凝りや弁証取穴による経穴の瀉法には、補瀉迎随による瀉法、撮んで引っ張る提挿の瀉法、それがしにくい場合は、瀉法の回転による捻転の瀉法、なお、アキレス腱やふくろはぎは、撮んで引っ張る瀉法がよい。

 

2.頭脳労働に伴う症状の治療

a.頭皮治療法

大脳の疲労に対しては、大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰ上焦に鍼の瀉法、あるいは指による手技療法

b.耳ツボ療法

神門、額、神経系統皮質下、脳、心、枕、

c.経絡経穴による鍼治療

百会、風池、天柱、印堂、合谷、内関から間使、三陰交

d.経絡経穴への手技療法

内関から郄門までの経絡には経絡の気の流れに逆らうように補瀉迎随の瀉法を行う。

百会の捻転の瀉法、 督脈、任脈の手技は、男性は左半身、女性は右半身の手技に準ずる。

風池、天柱の付近は、内回りの回転による捻転の瀉法、頚部の膀胱経は、撮んで引っ張れるようなら、そうしてもよい。また、少し難しいけれど、膏肓兪付近のスジを指で引っ張ってもよい。

肩井、天髎、肩外兪の付近は、一括して大きく撮んで引っ張る瀉法

肝兪の付近から大序までを、下から上に向かって、内回りに回転させながら行う補瀉法と捻転の複合の瀉。

脊柱起立筋を縦の状態で撮んで引っ張ってもよい。あるいは、兪穴を下から上に向かって、親指を滑らすようにしながら大きく撮んで行く、特に、肝兪、膈兪、心兪、蕨陰兪をやや強く撮んで引っ張る提挿法等の複合の補瀉手技を行うとよい。この代わりに、吸い玉で、下から上に向かってオイルを塗った皮膚の上を滑らしてゆく方法もよい。反応の強いツボは、吸い玉を、引っ張って刺激量を強くしてもよい。

 

3.精神的ストレスによる症状の治療法

a.頭皮治療法

大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰあるいは大脳線Ⅱの中焦、上焦に刺鍼するか、指による手技をする。

鍼治療は瀉法

治療効果は、即効性があり、リッラクスできるようになる。ストレスの原因そのものは、治療で取り除くことはできないが、精神状態が好転してくるので、原因の解決に向けて取り組む力が出てくるかもしれない。あるいは、ストレスに対する免疫力が生理的にアップしてくる。

b.耳ツボ療法

神門、肝、心、神経系皮質下、脳幹、脳、額、枕、眼

治療効果は即効性があり、4~5日間、種を貼った状態のままにする。1日に、5回くらい撮んで多少痛い程度の刺激をする、すると、これで治療を継続していることになる。

それで鍼治療の効果よりも持続性があるので、慢性的な症状がある場合には、耳ツボ療法を採用するとよい。

c.経絡経穴による鍼治療

印堂、四神聡、風池、天柱、内関、神門、太衝に瀉法

肝気鬱結による精神症状に、不眠症が加わった場合には、心肝火旺として捉えて神門を追加取穴する。

老人や慢性化している人の不眠症の場合は、心腎不交の不眠症も考えられるので、その場合は、復溜あるいは三陰交の補法を追加する。

また、脾気虚タイプの人が、不眠症になると、心脾両虚になることがあり、その場合には、神門、三陰交の補法

d.経絡経穴への手技療法

心包経の内関から郄門、さらに、心経の神門から通里までの瀉法

印堂を撮んで引っ張る

百会、風池、太衝へ捻転の瀉法、

背部の肝兪から蕨陰兪、膏肓兪まで、捻転の瀉法、補瀉迎随の瀉法、あるいは撮んで引っ張る提挿の瀉法

肝経の骨上の蠡溝から中都の経絡に対する補瀉迎随の瀉法

 

4.飲食不節に伴う症状の治療

a.頭皮療法

脳幹線Ⅰ、脳幹線Ⅱの中焦、大脳線Ⅰへの鍼による瀉法、あるいは、指による手技をする。

脳幹線Ⅰ、Ⅱで、痰湿中阻の治療ができて、大脳線Ⅰで脳の痰湿を取り除く。

b.耳ツボ療法

脾、胃、肝、神門

この配穴で、脾の水湿の運化作用や肝の疏泄作用が良くなるので、メタボに伴う諸症状の治療や病気の予防には最適である。

頭皮治療と耳ツボ治療を併用すると、相乗効果で、さらに、全身の水の代謝が良くなり、気滞於血がなくなれば、顔面部や下肢、さらに全身の浮腫みや弛み、腹部の膨満、眼の周りのクマ、くすみ、肌荒れが取れ、全身的美容効果が出る。

ダイエットには、さらに飢点を追加するとよい。部分痩せを希望する人には、たとえば、腹部であれば、腹に取穴すれば良い。脂肪太りには、興奮点あるいは丘脳に取穴して、筋肉運動をすると、効果的に脂肪を消費できるのでダイエット効果が高まる。

c.経絡経穴による鍼治療

内関、中脘、水分、足三里、豊隆、陰陵泉、太衝、すべて瀉法にする

胃熱があり、冷飲を好む場合には内庭を追加取穴する。

頭重がある場合は頭維を追加取穴する。

脾虚湿生の虚証タイプには、足三里、陰陵泉に先瀉後補、補法にポイントがある。

d.経絡経穴への手技療法

内関から間使への瀉法、足三里、豊隆、太衝の瀉法、あるいは、肘、膝から先の手足の心包経、胃経、肝経への瀉法、さらに、胃兪、脾兪、膈兪、肝兪の膀胱経への補瀉迎髄、捻転法の瀉法

 

5.生理痛とその随伴症状の治療

a.頭皮治療法

脳幹線Ⅰ、Ⅱの下焦、中焦に鍼の瀉法、または調気手技療法の平補平瀉

b.耳ツボ療法

神門、肝、子宮、卵巣、内分泌

c.経絡経穴による鍼治療

内関、三陰交、太衝、少腹部の肝経上に出る反応点あるいは子宮穴

冷えのぼせには百会、太衝から湧泉に透刺、肝気鬱結による実証の全身的寒がりや冷え性には内関から間使のへ透刺、期門、太衝、三陰交の全面的瀉法で気血を巡らせるようにすると、全身の冷えが抜けて行く。季肋部痛には期門、偏頭痛には風池、丘墟、仙骨部痛には次髎を追加取穴する。

d.経絡経穴への手技療法

内関から郄門までの心包経の瀉法で行気することで、去湿の治療効果も高くなる。

三陰交から地機までの脾経の補瀉迎随の瀉法

太衝の捻転の瀉法、あるいは肝経の骨上の蠡溝から中都の経絡に対する補瀉迎随の瀉法

膀胱経の肝兪から膈兪まで、さらに次髎の瀉法

生理の後半から、出血したことで、血虚に伴う虚痛や全身的消耗感が出る場合は、足三里、三陰交に補法をする。

 

6.運動不足に伴う症状の治療

身体を動かさないと、気血津液の流れが停滞し、気滞、於血、痰湿が形成されて、それらの邪気が自分自身の身体に襲いかかってきて、様々な疾病を引き起こすようになる。

邪気を取り除き、気血津液の流れを回復させる治療をしなければならない。

治則は行気活血、行気去湿である。

a.頭皮治療法

脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦、上焦、邪気が停滞している臓腑や身体の局所に相応した治療線

b.耳ツボ療法

神門、肝、胆、脾、胃、さらに相応する臓腑や身体の局所のツボ

c.白川式手鍼

鍼または指による手技で、症状に応じて取穴するとよい。

d.経絡経穴による鍼治療と吸い玉治療

行気活血には、内関から間使への透刺、三陰交、また合谷、太衝の瀉法

行気去湿には、内関から間使への透刺、陰陵泉、豊隆の瀉法

各経絡の去湿には五兪穴の兪穴の瀉法

各経絡の活血には郄穴、あるいは井穴への刺鍼や、局所の吸い玉

各経絡の疎通経絡や炎症の治療には、井穴への刺鍼、さらに井穴からの抜鍼跡からの出血に対してはアルコール綿でよく拭き取って消毒する。

背部、腰部の兪穴には委中の瀉法と吸い玉をする、また腰背部にオイルを塗り、吸い玉を使って補瀉迎随法(下から上へ滑らす)と提挿法(吸いついている吸い玉を、さらに引っ張る)の複合の瀉法

e.経絡経穴への手技療法

行気活血には、内関から郄門までの瀉法、三陰交から地機までの瀉法、さらに合谷と太衝の瀉法、また肝経の骨上の蠡溝から中都の経絡に対する補瀉迎随の瀉法

行気去湿には、内関から間使の補瀉迎随の瀉法、豊隆、陰稜泉の瀉法

各経絡の去湿には五兪穴の兪穴

各経絡の活血化於には郄穴

各経絡の疎通経絡には井穴を爪で刺激をする。

背、腰部の気滞於血、あるいは湿邪には、補瀉迎随法、提挿法(撮んで引っ張る)、捻転法(背部は内回りの回転)の複合の手技、また委中の補瀉迎随の瀉法

肩凝りの肩井、天髎、肩外兪付近の凝りには、大きく撮んで引っ張る提挿の瀉法

肩背部の実証の凝りに対して、指圧で押すと、補瀉法の原理からすると押すは補法になるので、後から、重くなったり、なお、痛くなったりすることがある。揉みお越しの原因になる。

虚証タイプの人の凝りには、押すのは正しいが、現代では、治療院にマッサージで来る人のほとんどの人は、実証タイプの凝りなので、押さずに引っ張る瀉法がよい。

天柱、風池の凝りは内回りの捻転の瀉法か撮んで引っ張れるようなら、それがよい。

肩井、天柱、第2頚椎付近の凝りには合谷の捻転の瀉法、さらに曲池から手三里までの大腸経の補瀉迎随の瀉法がよい、また肩井の凝りは胆経であるが合谷の瀉法が効果的である。

風池や肩髎、第4~6の頚椎の凝りには外関の捻転の瀉法、また四瀆付近の三焦経の捻転の瀉法か補瀉迎随の瀉法がよい。

第6~7頚椎、第1胸椎の凝り、また小腸経、膀胱経、督脈の痛みには、後谿の捻転の瀉法

腰背部の実証の痛みには、委中の補瀉迎随の瀉法、頚部の膀胱の痛みには崑崙の瀉法、

心兪、蕨陰兪、膏肓兪の凝りや痛みには内関、太衝がよい

 

7.高血圧、低血圧に伴う治療

a.頭皮治療法

実証タイプの高血圧の治療には、脳幹線Ⅰの中焦、下焦の瀉法、脳幹線Ⅱの中焦の瀉法

陰虚陽亢タイプの高血圧には、脳幹線Ⅰの下焦は補法に変える

気虚証タイプの低血圧には、脳幹線Ⅰの中焦、上焦に補法

実証の痰湿中阻や肝気犯脾等により脾の昇清作用がうまく働かなくなると、結果的に、上焦が虚証になって引き起こされる低血圧には、脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦の瀉法

b.耳ツボ

実証タイプの高血圧には、肝、降圧点、神門

陰虚陽亢タイプには、実証タイプの高血圧のツボに、腎を追加する

気虚証タイプの低血圧には、脾、昇圧点

中焦が実証であるが、上焦が虚証になる虚実夾雑タイプの低血圧には、肝、脾、胃、昇圧点

「手技の問題」

耳ツボの治療は、植物の種を使って、ツボに圧刺激をするだけなので、鍼治療のような効果的な補瀉法をすることは難しい。しかし、耳ツボは双方向性の良性の調節作用が働きやすいので、虚証、実証のいずれにも、効果を発揮することができる。低血圧の虚証、虚実夾雑のいずれのタイプにも、脾、昇圧点等のツボは有効性を発揮する。

c.経絡、経穴による鍼あるいは手技による治療

実証タイプの高血圧には、百会、風池、内関、太衝、足三里の瀉法

陰虚陽亢タイプには、さらに復溜あるいは三陰交の補法を追加する

気虚証タイプの低血圧には、百会、合谷、足三里、あるいは太淵、太白の補法

中焦が実証であるタイプの低血圧には、内関から間使の瀉法、太衝、陰陵泉、足三里の瀉法。表示法として、合谷、百会の補法をすることもある。

 

おわりに

パソコン病の治療方法には、頭皮治療法(鍼、手技のいずれも可)、調気手技療法、耳ツボ療法、手鍼療法、鍼治療、灸、火鍼、刺絡、吸い玉等、様々な治療法がある。

患者の希望する治療法で、患者の体質や症状に合わせて、効果的な治療法を選択することになる。

鍼は、怖くていやだという人には、手指による調気手技療法や耳ツボ、吸い玉等で、鍼治療とあまり変わらないくらいの効果的な治療ができる。

治療する身体の部位も、頭皮、耳、手、眼のまわりや顔面、そして手足に重点をおいた全身治療等になるが、これも、患者の同意のもとに、効果的な治療の部位を選択することができる。

パソコン病の直接的な症状を中心にして治療するが、その症状を悪化させている病因に対して、あるいは体質に対しても治療する。また各患者に相応した養生法をアドバイスする。

根本的な問題は治療する側のレベルにある。現状のマッサージは、医学レベルの治療ができる体系になっていないので、慰安型マッサージの域を出ることができない。

患者からのマッサージに対する要望は、パソコン病をはじめ、病院に行っても、治りにくい病気に対して、医学レベルの治療効果があって、しかも気持ちよく治療してくれる治療型マッサージが求められている。

鍼治療においても、同様のことが言える。慰安型の鍼灸や、治療範囲が特定の疾患に限定されてしかも低レベルの治療効果しか期待できない鍼灸から、日常的疾患から難病の現代病に対しても対応能力のある治療型の鍼灸に転換してゆくことが求められている。

 

今後、鍼灸マッサージの学校、盲学校の学生や有資格者を対象に、パソコン病をはじめとする現代病の治療ができるように、臨床訓練を中心にした再教育を実施して、患者の要望に応えられるようにする必要がある。

 

鍼灸マッサージ専門学校、盲学校、さらに、病院、IT関連の企業、温泉地の観光関連産業等からの要求があれば、講習会、説明会、治療のデモストレーション等を行います。

東京五行堂中医臨床国際交流センター代表

東京医療福祉専門学校教員養成科講師

白川治療院 院長

調気手技療法研究会会長

 

白川 徳仁

 

白川式頭皮治療法の臨床応用

白川式頭皮治療法の臨床応用

                               

白川式頭皮治療法は、鍼治療あるいは手指による調気手技療法のいずれでも行うことができる。

頭皮治療法は、大脳、脳幹、小脳に作用させることができるので、脳の老化や脳に起因する病気を、また内臓、運動器、五感器等の一般的な病気に対しても、身体の司令塔である脳に作用させることで効果的な治療ができる。

頭皮治療法は、脳の機能をレベルアップさせることも期待できるので、病気の治療に限定されることなく、精神活動、内臓の活動、運動能力、感覚器等のさらなるレベルアップや若返り、また美容に対しても効果が期待できる。

「疾患別の治療法」

1,認知症 

2,大脳の疲労回復、記憶力、精神安定、集中力、創造性の向上

3,脳梗塞、脳出血等による後遺症の半身麻痺、老化による運動能力、感覚の低下、さらに頚部、肩、肩関節、肘、手関節、指、腰部、仙骨部、臀部、股関節、膝関節、足関節の治療

4,小脳の老化に伴う平衡感覚の低下、足腰のふらつきや頼りなさ、協調動作のスローモーション化、記憶装置の機能低下による記憶力の低下、運動の学習能力低下等の治療,また運動における平衡感覚の向上、スポーツや運動の練習での学習能力の向上

5,老人病の治療

6,老化に伴う頚部、背部の痛み、とりわけ腰腿部の虚痛や無力感

7,不眠症

8,鬱病、精神安定、意欲の向上

9,嗜眠、無気力、精神的落ち込み、眩暈、頭重、浮腫

10,冷えのぼせ、片頭痛

11,全身的冷え性、寒がり

12,生理痛

13,眼病(黄斑変性、中心性網膜症、飛蚊症、網膜剥離、サルコイドーシス、アトピー性白内障、緑内障、網膜色素変性)

14,狭心症、心筋梗塞

15,顔面麻痺

16,アレルギー性の疾患(花粉症、慢性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、化学物質過敏症等)

17,美容(表情の問題、顔面のクマ、くすみ、しみ、しわ、吹きでもの、頬の浮腫とたるみ、ほうれい線、眼瞼下垂、足の浮腫み、腹部膨満、乳房の下垂、臀部の弛み、食欲のコントロール、減肥)

18,パソコン病、頚部の痛みや肩こり

19,頻尿、前立腺肥大、インポテンツ、腰部仙骨部の重痛

20,慢性腎不全

21,禿

22,甲状腺(バセドー氏病、橋本病)

23,腰痛(ぎっくり腰、腎虚腰痛、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、湿熱下注による重痛、脊柱管狭窄症、痺証、癌の骨への転移による腰痛)

24,五十肩、肩関節痛、肩凝り

25,手術の癒着による後遺症(乳癌、子宮癌等)

26,骨折や外傷の手術後のリハビリ段階での治療

27,酸欠等による脳障害

28,痰切、咳

29,全身的レベルの筋肉痛、運動麻痺、筋萎縮

30,慢性疲労症候群

31,ヘルペス

32,シェーグレン症候群

33,不妊症

34,爪の変形、乾燥肌

35,突発性難聴

36,多汗症

37,認知症の証型別治療

38,鬱病の病因病機と治療線と取穴

 

「頭皮治療法の手技」

鍼治療と調気手技療法では、治療手段が鍼によるか手指によるかの違いがあるが、基礎理論や四診合算による診断法や、頭皮の治療線と身体の経絡経穴に関しては共通している。

鍼治療、調気手技療法のいずれにおいても、経絡や頭皮の治療線に流れている気に対して得気を得て、その気に対する補瀉手技を通して調気する治療法ということでも共通している。

調気手技療法における得気は、経絡や治療線の中に流れている気に対して、程よく作用しやすいように、手指による適度の圧力を加えることである。その圧力が強過ぎて経絡に流れている気の深さを突き抜けるような圧力、また、弱過ぎて気に届かないような圧力でも効果が得られない。

補瀉手技は気に対して行うので、気を逃さないように行わなければならない。

鍼治療、調気手技療法の双方に使用される補瀉手技には、補瀉迎随法、捻転法、提挿法、呼吸補瀉法、平補平瀉法等があり、原理的には共通している。

具体的な手技では、鍼治療と手指による手技療法のそれぞれの特徴を生かすように工夫して行われる。

頭皮治療法における鍼治療では、頭皮の治療線に対しても、経絡経穴に対する手技と同様に、得気を得た後、虚実によって補瀉法を使い分けて治療する。

頭皮治療法における調気手技療法の手技は、平補平瀉法を基本にして行う。

耳ツボ治療も、補瀉法が難しいので、補瀉法は行われないが、よい治療効果が出る。

頭皮治療法も補瀉法をしなくても、平補平瀉法で治療効果が出る。

鍼や指の圧よる適当な刺激をすることで、身体の方から、双方向性の良性の調節作用が発揮されて治療効果が出るようになる。言い換えれば、鍼治療や手技療法には、自己治癒能力を上手く引き出すことができるということがある。

このような効果を引き出す適当な手技は平補平瀉法である。

調気手技療法は、経絡経穴に対しては効果的な補瀉法ができるが、頭皮の治療線に対する補瀉手技の難しさがあるので、平補平瀉法を基本にするとよい。

鍼治療も平補平瀉法でもよいが、弁証に基づいた補瀉法は、より高い治療効果が期待できるので補瀉法を採用するとよい。

なお頭皮治療法での鍼治療には、雀啄の補瀉法が適合している。

 

1,認知症

*大脳線1、大脳線Ⅲの治療線は、脳の精神活動に良好な作用をしやすく、認知症や鬱病に対しても良い治療効果を発揮することができるので、基本処方となる。

*陰虚タイプの認知症―基本処方の大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ―瀉法、脳幹線Ⅰ中焦―瀉法、脳幹線Ⅰ下焦―補法

風池、太衝の瀉法、復溜、懸鐘の補法を追加するとよい。

*気虚証、腎陽虚証、腎精不足タイプの認知症―基本処方の大脳線1、大脳線Ⅲ―瀉法、脳幹線Ⅰ上焦、脳幹線Ⅰ中焦―瀉法、脳幹線Ⅰ下焦―補法

風池、、天柱、太谿、懸鐘、足三里の補法を追加するとよい。

*現代の認知症は、例え、高齢者であっても、全て腎虚証というわけではなく、ストレスによる肝気鬱結で引き起こされる瘀血証や、食べ過ぎ、飲み過ぎ等による痰湿証等の実証タイプもある。腎虚証と於血や痰湿との虚実夾雑証が多い。

また若年性のアルツハイマーは、老化による腎虚証とは関係なく、主にストレスからくる肝気鬱結による実証タイプである。

*実証タイプの認知症―基本処方の大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ―瀉法、脳幹線上焦、脳幹線中焦―瀉法、

内関から間使へ透刺、三陰交、豊隆、陰陵泉、風池―瀉法

*虚実夾雑タイプの認知症は、実証タイプに腎虚証タイプの処方を加えたものになる。

*脳梗塞等の脳血管障害に伴う認知症で、半身麻痺がみられる場合は、大脳線Ⅳの下肢線、上肢線、顔面線―瀉法、大脳線Ⅰ、脳幹線中焦―瀉法による治療で、手足の半身麻痺の回復するのと同時に、認知症も治癒することが多い。下肢線、上肢線だけで認知症の治療ができることもある。

 

2,大脳の疲労回復、記憶力、精神安定、集中力、創造性の向上

*大脳線1、大脳線Ⅲ、脳幹線1の上焦と中焦、 肩凝り、目の症状、頭痛等がある場合は、脊柱線の頚椎、肩凝線―瀉法を追加するとよい。

弁証取穴は、

・肝気上逆―百会、風池、内関から間使へ透刺、太衝から湧泉へ透刺―瀉法

・肝陽上亢―太衝、百会、風池―瀉法、復溜、懸鐘―補法、

・痰湿上蒙―豊隆、陰陵泉、頭維―瀉法、

・中気下陥―足三里、合谷、百会―補法

・腎性不足、腎気虚、腎陽墟―太谿、懸鐘、風池、百会―補法

*試験直前で長時間勉強をするときは、頭に置鍼したままで勉強をすると、精神安定し、記憶力もアップした状態で、脳の疲労感も出ないので、いくらでも詰め込みができる。試験前に治療すると、試験本番では、脳がクリアーな状態で、緊張してあがることがないので実力を発揮できる。

*頭皮針の治療を継続すると、精神安定し、集中力が高まり、記憶力、理解力、創造力、ひらめきがよくなる。さらに、肩こりと目の疲れが解消されるので、頭を使う仕事や精神的ストレスを受けやすい仕事をしている人には最適の治療法である。

 

3,脳梗塞、脳出血等による後遺症の半身麻痺、老化による運動能力、感覚の低下、さらに頚部、肩、肩関節、肘、手関節、指、腰部、仙骨部、臀部、股関節、膝関節、足関節の治療

*脳梗塞等の脳血管障害による後遺症の半身麻痺の治療は、病位が手足であっても、病気の原因は脳の病変にあるので、手足の局所に直接、刺鍼して治療するよりも、脳の病変に効果的に効かせる治療法の方が良い治療効果をもたらすことができる。

そのような効果的治療法は、いくつかあるが、この頭皮治療法が、日本の実情に即した治療法であり、また最も効果的な治療法の一つである。

*下肢の治療―前頂から頭維にかけて溝状になっている治療線で、前頂より約3分の1の下肢線、 顔面部の治療は前頂と頭維の間の治療線で、頭維より3分の1の顔面線、 上肢の治療―顋会から頭維の溝状になっている治療線で、その治療線の満中の3分の1の上肢線―瀉法、

*実証タイプの脳梗塞による半身麻痺の上肢、下肢の治療には、大脳線1、脳幹線1中焦―瀉法、さらに実証タイプの脳梗塞による半身麻痺、高血圧タイプの人の治療には脳幹線1下焦―瀉法。老化等による腎虚証がある場合には、脳幹線Ⅰ下焦の補法。

*さらに脳梗塞の後遺症による半身麻痺には、内関から間使へ透刺、風池、天柱、三陰交、豊隆を追加取穴するとよい。

*気虚於血タイプの脳梗塞には合谷、足三里―補法、三陰交―瀉法を追加するとよい。

*頚部、肩、また頚部の病変が原因で起こる指をはじめとする上肢の痛みやシビレの治療には、脊柱線の頚部、肩凝り線、大脳線Ⅳの上肢で治療する。

天柱や頚部の膀胱経のラインの治療は、患側の反対側の督脈上の脊柱線の外方2、3ミリの間にみられる縦に走っている反応線を追加して治療するとよい。

また、頚部の風池や少陽経のエリア、肩、肩関節の治療は、肩凝り線の数ミリ横に並行して出ている溝状の反応線を追加して治療する。

頚部や肩の凝りには、白川式手鍼の三焦、上焦、あるいは下後谿がよい。

また、経絡弁証で症状のある経絡を特定し、手指、手関節、肩関節であるか、部位にかかわりなく、すべての邪気による痛みやしびれや運動制限には、その経絡の井穴に刺鍼して瀉法を施して運動鍼にするとよい。抜鍼の後、井穴からは出血しやすいので血が止まるまで、アルコールにしたした綿花で、よく消毒をした方がよい。井穴はその経絡上のどの部位であるかにかかわらず、疎通経絡の効果は抜群に高い。

また胸鎖乳突筋の治療は、頭皮鍼や手鍼でも効果が出にくいことがある。その時は、懸鐘に刺鍼して運動鍼にすると確実に効果が出る。

*腰、仙骨部の於血による腰痛の治療は、脊柱線下焦―瀉法で治療する。

膀胱経の痛みの場合は、脊柱線下焦と、さらに患側の反対側で督脈より数ミリ外方で患部に相応する高さに出ている反応線に追加して治療するとよい。

*下焦湿熱による重だるい腰痛には、脊柱線の下焦に、さらに脳幹線Ⅰの中焦、下焦を追加するとよい。

*於血、湿熱のいずれのタイプの腰痛にも、後谿、委中の効果は高い。

また、慢性化している腰痛で、於血タイプには、間使、三陰交がよい。下焦湿熱タイプには、陰陵泉、中極を追加するとよい。

慢性的腰痛の根本的治療のためには、全身的レベルの於血症、あるいは湿熱証を治療する必要がある。

*志室より外方の腰痛は、腎膀胱経の腰痛ではなく、肝気鬱結に伴う肝経のルート上の少腹部の於血による反射痛であることが多い。少腹部痛の部位は中極の外方3寸の子宮穴から2寸5分上方の間で圧痛点が出るところである。そこに刺鍼すると、志室の外方の腰痛は即座に取れる。また生理痛にもよい。

*老化による腎虚証の足腰の無力感やふらつきを伴った腰痛には、脳幹線Ⅰ下焦、脊柱線下焦は補法にする。また弁証に基づいて、太谿あるいは復溜、懸鐘、腎兪を取穴し、補法を施すとよい。

*股関節の治療は、百会から45度角前方の通天までの溝状の反応が出ている股関節線で治療する。

支溝、陽陵泉、環跳を追加取穴するとよい。あるいは、白川式手鍼の下焦がよい。

*ここで紹介した上肢線や下肢線の位置とは異なるが、頭皮鍼の国際標準化方案で、解剖学上の大脳の運動野、感覚野の位置に照応する運動区、感覚区で治療してもよい効果が出るので参考にするとよい。

*頚部、背部、腰仙部の督脈と膀胱経、小腸経の痛みやしびれ、運動制限に対しては、白川式手鍼の下後谿に刺鍼して運動鍼がよい。運動しているうちに、脊柱や背部の筋肉が驚くほど柔軟になる。

*上肢、下肢の痛みや、シビレは、通常、経絡病として、あるいは運動器疾患として治療されることが多いが、しばしば、臓腑の反応として、経絡上に痛みやシビレとして現れることもあるので、その場合は、臓腑弁証による取穴が必要である。

たとえば、膝の内側の痛みは肝気欝結で、外膝眼の痛みは胃の病で出現することがしばしばある。その場合は、下肢線の治療ではなく、患側の反対側の脳幹線Ⅱ中焦をで治療すると著効が出ることがある。

肝経のエリア―である膝の内側の痛みには、膝痛Ⅱ号穴(肘頭より約1寸外下方にある骨が集まってできたような窪み)が特効穴である。

 

4,小脳の老化に伴う平衡感覚の低下、足腰のふらつきや頼りなさ、協調動作のスローモーション化、記憶装置の機能低下による記憶力の低下、運動の学習能力低下等の治療、また運動における平衡感覚の向上、スポーツや運動の練習での学習能力の向上

*老化による認知症の治療に際しては、大脳と小脳の老化現象を鑑別した方がよい。小脳の老化による諸症状の大半は、腎の生理作用である作強の官の低下に相当する。

*小脳の老化の治療は、小脳線―補法、脳幹線下焦―補法

国際標準化方案の小脳に位置する平衡区で治療してもよい。

老人の治療では/風池、天柱と太谿あるいは復溜、懸鐘の補法を追加するとよい。

小脳の老化の治療ではなく、小脳の運動能力やその学習能力の向上には、小脳線、脊柱線の相当部位―瀉法、手鍼の下後谿―瀉法を追加してもよい。

 

5,老人病の治療

*脳幹の機能は、中医学の臓腑の生理作用に、ほぼ相応している。

脳幹を治療する脳幹線を上焦、中焦、下焦に3区分して、臓腑弁証に基づいて、上中下焦を選んで補瀉法を施すと、すべての臓腑病の治療に対応できる。

*老化が原因の病であっても、年だから仕方がないと思われがちであるが、老化の進行を食い止め若返らせることも一定程度可能である。

包括的な老化や若返りの治療は、脳幹線Ⅰ、Ⅱの下焦、、小脳線―補法、大脳線Ⅰ―瀉法を基本にして、さらに弁証に基づいて必要な治療線を追加してゆけばよい。

*老化に伴う耳鳴り難聴には、天衝から角孫の少陽後線―瀉法、脳幹線Ⅰの下焦―補法、

翳風、聴宮、外関、丘墟―瀉法、復溜―補法を追加取穴するとよい。

*老化が原因とされる眼病は、陰虚湿熱証が大半を占める。

脊柱線の中焦の数ミリ外方の両側で肝兪穴に相当する部位の反応線、大脳線Ⅰ、Ⅲ、脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦―瀉法、脳幹線Ⅰの下焦―補法

攅竹から睛明、紫竹空から太陽へ透刺―手技はしない、風池、天柱、光明、太衝―瀉法、三陰交あるいは復溜―補法

*耳、眼の治療線は、頭皮鍼の国際基準の位置を参考にしてもよい。

*老化に伴う頻尿、夜間の回数の増加、小便の失禁、また大便の失禁は、腎陽虚あるいは脾腎陽虚証―脳幹線1、Ⅱ下焦、脳幹線Ⅰ中焦―補法

太谿、関元、腎兪、脾兪―補法、陰陵泉―平補平瀉、関元に灸を加える。

*高齢者でも、飲酒の量が多い人、あるいは、甘いものを食べ過ぎる人は、腎虚証は理論上はあることは間違いないが、病気の直接的な病因、病機は飲酒が原因で生じた湿熱邪が下焦に下注して尿道が詰まったことで、頻尿になったと考えられる。そのような場合は、脳幹線Ⅰ、Ⅱの下焦、脳幹線1中焦―瀉法

陰陵泉、中極―瀉法

 

6,老化に伴う頚部、背部の痛み、とりわけ腰腿部の虚痛や無力感

*相応する脊柱線の治療線―先瀉後補法、脳幹線1下焦―補法

白川式手鍼の下後谿―平補平瀉、太谿(陽虚)あるいは復溜(陰虚)、懸鐘(髄会、老化に伴う骨の変形がある場合)、飛陽(絡穴)―補法

さらに、陽虚証には、関元や命門に補法と灸を追加するとよい。

*老化にともなって、足腰が無力な感じがして頼りなく、ふらつきを伴う腎虚腰痛には、老化による腎の作強の官の作用の低下によるものとしてと捉える。小脳線―補法、脳幹線Ⅰ下焦―補法、両治療線をセットにして治療するとよい。

 

7,不眠症

*不眠症の共通の治療線―大脳線1、大脳線Ⅲ―瀉法

*心肝火旺―脳幹線Ⅰ上焦(心火)、脳幹線Ⅰ中焦(肝火)―瀉法

風池、内関、神門、太衝―瀉法を追加するとよい。

*心腎不交―脳幹線Ⅰ上焦(心火)―瀉法、脳幹線Ⅰ下焦(腎陰)―補法

風池、神門―瀉法、復溜―補法を追加するとよい。

*心脾両虚―脳幹線Ⅰ上焦(心血)、脳幹線Ⅰ中焦(脾気)―補法

風池、神門、三陰交―補法を追加するとよい。

*頑固な不眠症は、通常の弁証取穴による治療だけでも治療効果はあるが、根治させることが難しい場合がある。

弁証に関わりなく、大脳線1、大脳線Ⅲを追加すると、いずれの証型に対しても、治療効果の即効性、持続性ともによく、根治するケースが多い。

 

8,鬱病、精神安定、意欲の向上

*肝気欝結(気鬱化火)、痰迷心竅(痰火擾心)―大脳線1、大脳線Ⅲ、 脳幹線Ⅰ上焦(心)、脳幹線Ⅰ中焦(肝、脾胃)、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法

風池、内関、神門、豊隆、太衝、鳩尾から中脘へ透刺―瀉法を追加するとよい。

*体鍼の弁証取穴による鬱病の治療は、即効性もあり、治癒に向かっているように思える時もある。しかし、鍼治療の無力さを思い知らされるほど逆戻りすることもある。信頼性において不安定性があり、根治させる力に欠けているように思える。

*頭皮鍼による治療と体鍼のコンビネイションの治療は、10数年来の鬱病患者であっても、鬱病の核心部分である鬱的精神症状が、数回の治療で、ほぼ消失し、精神的安定を保てるようになることが、しばしばある。

*しかし問題も残る。鍼治療で不眠症がなくなるが、睡眠薬の服用を継続することが多いので、逆に、嗜眠傾向になって困ることになる。現在は、病院と連携して治療できる状態ではないので、薬の扱いについての問題が残ることが多いので、患者に、この点をしっかり理解しておいてもらうことが必要である。

 

9,嗜眠、無気力、精神的落ち込み、眩暈、頭重、浮腫

*痰湿中阻、痰湿上蒙、痰迷心竅、肝気犯脾―大脳線1、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰ上焦(心、肺)、脳幹線Ⅰ中焦(肝胆脾胃)、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法

風池、陰陵泉、豊隆、内関から間使の透刺、太衝―瀉法を追加取穴するとよい。

*脾虚生湿、中気下陥―大脳線Ⅰ―瀉法、脳幹線Ⅰ中焦―補法

百会、足三里、合谷の補法を追加するとよい。

*痰湿が関係している病気は、鍼治療をすると即効性もあり治療結果もよいが、根本的に治療することは、食事内容や食習慣の問題もあって難しい。

現代は痰湿を生み出す食べ物(甘いもの、魚、野菜、果物等の生もの、油っこいものの取り過ぎ、過度の飲酒)に偏っている食事をしている人が多い。また、夜食の習慣、食事時間の不規則、早飯食い等も、痰湿を生み出す。

痰湿による病気は、数限りがなく、しかも完治するのは難しい。根本的には、食習慣を改める以外に方法がない。食事指導を丁寧にすること自体が、最大の治療効果をもたらす。

 

10,冷えのぼせ、片頭痛

*肝気上逆になると、肝気の上昇速度が平常より速くなるので、気に連れられて血も速く上昇するようになって、足手が冷えて頭顔面部がのぼせてくる。

*脈状では、左の脈は、心(血脈)、肝(蔵血)、腎(腎陰)であるので、血や陰の状態を反映するので、肝気鬱結症では、陰血の流れが詰まって、脈なし状態になりやすい。右の脈は、肺(一身の気)、脾(気の生産)、腎(腎陽)であるので、気や陽の状態を反映する。肝火、胃火、心火等の陽が盛んになると、脈状が浮、滑、有力になる。

治療をして冷えのぼせがなくなると、左右の極端なアンバランスの脈状も、徐々にバランスを回復してくる。

*冷えのぼせは、老人によく見られる腎陽虚証による冷え性、寒がりとは、根本的に異なる。

腎陽虚証には、灸をする必要があり、その効果も高い。しかし冷えのぼせに、灸をすると、手足が温まることはなく、さらに、のぼせの症状が悪化し、深刻な医療被害(顔面麻痺、じんましん、アトピー性皮膚炎等)が出ることもある。

肝病には、灸は禁忌である。肝気鬱結で、温煦作用のある気が鬱結している状態に、お灸をすることは、爆薬の導火線に火をつけるに等しい。

*このタイプの冷えのぼせの治療は、百会、太衝に鍼の瀉法をして降気すると、上逆していた気血が引き下ろされて頭が涼しくなり足が温かくなってくる。

*肝気上逆―脳幹線1中焦(肝)、脳幹線Ⅱ中焦(肝)―瀉法

百会、風池、太衝から湧泉に透刺(透刺する時の太衝の位置は行間から約2寸上の小さな窪み、湧泉の瀉法には引火帰源の作用があり、頭部の熱を足の方に引き下ろす作用がある)―瀉法

*片頭痛には、脳幹線Ⅰ、Ⅱ中焦、少陽前線、肩凝り線―瀉法

さらに丘墟(原穴)あるいは陽輔(経火穴で木の子穴)の瀉法をするとよい。

 

11,全身的冷え性、寒がり

*若くて体力のある人であっても、突発的に精神的な強いストレスが加わると、ショック状態に陥り、肝気鬱結で気血の流れが全面的に止まって意識不明に陥り、顔面蒼白で全身的寒がりになることもある。

また持続的な強いストレスがあり、きつい肝気鬱結になると、陰盛タイプで気鬱化火になりにくい人は、慢性的に全身の気血の流れが詰まり、気血が流れにくくなって、全身的冷え性、寒がりになりやすい。

このような全身的冷え性は、肝気鬱結という実証の極みであり、腎陽虚証の全身的冷え性とは、虚実の違いがあり、根本的に異なるタイプの冷え性である。

*脈診では、肝気鬱結で熱化しないで、全身の気血の流れが詰まっているので、脈の方も沈み、詰まって渋る。肝気鬱結の程度が強いと、左右の脈状は、脈なし状態になる。陽虚証でも、陽気が弱くなるので、脈は沈みやすくなるが、脈なしになるほど沈むくことはあまりない。

肝気欝結の治療をすると、気血が流れ始め全身が徐々に温かくなってくる。また、脈も、緩んできて、脈状が多少感じられるくらいに変化してくる。

*老人の全身的冷え性、寒がりは老化による腎陽虚証の可能性が高い。しかし若い世代の人(たとえば、7×4の28歳の女性は、腎気が最も旺盛な女盛りであるので、数%の例外を除けば、一般的には腎虚証はない)の冷え性、寒がりは、ストレスによる実証タイプの肝気鬱結による。

*肝気欝結タイプの全身的冷え性寒がり―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法

内関から間使への透刺、期門、太衝、三陰交―瀉法を追加するとよい。

*灸は陰陽理論に従って行われるべきである。灸には、冷えや寒さには熱、水には火ということで、温熱散寒、温通経絡、温補腎陽、湿邪には灸の火で去湿、引火帰源等の作用がある。

熱邪による実熱証、陰虚内熱による虚熱のいずれの熱証にも、お灸は止めた方が良い。お灸の適応症かどうかの判断をする際は、必ず、寒熱の弁証が必要である。

また、温煦作用のある気が鬱結している肝気鬱結がベースになっている肝病には、お灸は、深刻な医療被害に直結することがあるので禁忌である。

*腎陽虚証タイプの全身的冷え性、寒がり―脳幹線Ⅰ下焦―補法

太谿、関元、腎兪―補法、さらに関元、命門に灸を追加するとよい。

 

12,生理痛

*実証タイプの生理痛は、生理前や生理の前半に、気滞瘀血で血の流れが詰まって実痛になる。血の色は暗く、血の塊り等の於血の症状がある。また冷えのぼせ、片頭痛、イライラ感、肩こり、季肋部痛や少腹部痛を伴うことがある。

*肝気鬱結の実証タイプ―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅰ下焦、脳幹線Ⅱ中焦、脳幹線Ⅱ下焦―瀉法

内関から間使への透刺、三陰交、太衝、少腹部の肝経上の圧痛点―瀉法

*寒凝肝脈の実証タイプ―脳幹線1中焦、脳幹線Ⅰ下焦、脳幹線Ⅱ中焦、脳幹線Ⅱ下焦―瀉法、

三陰交、太衝、中極―瀉法と灸

冬場あるいは冷房の強いところで、ミニスカートで素足の状態でいると、寒邪に侵襲されて生理痛になることがある。

*生理痛には三陰交を取穴するとよいと覚えている人が多いが、三陰交は血に関係する経穴である。血は単独で動くことはできないので、三陰交にだけ刺鍼しても、瘀血を効果的に処理して生理痛をなくする効果は弱い。

血を動かすには、気が血を先導して動いているのだから、行気できる経穴を取穴する必要がある。肝の疏泄作用を活発にして行気できる経穴がよい。肝経と同名経で、肝経の子経である心包経(心)の内関あるいは間使を取穴するのが最適である。実際に、内関あるいは間使を取穴して瀉法をすると、一穴だけでも、劇症タイプの生理痛であっても痛みは取れる。なお内関と三陰交の組み合わせにすると最適の治療になる。

*虚証タイプの生理痛は、血虚証タイプの人が、生理に伴って、さらに気血が失われ、血虚証がさらに進行するので、生理の後半から生理後に、しくしくと痛む虚痛になる。同時に、全身的消耗感や倦怠感を伴う。

*虚証タイプ-脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅰ下焦―補法

三陰交、足三里―補法

 

13,眼病(黄斑変性、中心性網膜症、飛蚊症、網膜剥離、サルコイドーシス、アトピー性白内障、緑内障、網膜色素変性)

食糧難による栄養不足、重労働による気血の損傷等による虚証が多かった時代には、眼病でも、肝血虚証や肝腎陰虚証等の虚証タイプが多かった。

食べ過ぎ、飲み過ぎ、過剰なストレス、運動不足等による生活習慣病が一般化している現代においては、眼病の病名が異なっていても、ほとんどの眼病は、肝気鬱結がベースにある。肝胆湿熱証などの実証タイプが大半である。

しかし、実証タイプの眼病も、長期化したり、加齢による老化が加わってくると、虚実夾雑、さらには、肝腎陰虚に変化することがある。

*肝胆湿熱証―脳幹線Ⅰの中焦、脳幹線Ⅱ中焦、大脳線Ⅲ、脊髄線中焦の数ミリ外側で溝状で圧痛のある線(肝兪の位置に相当する部位)―瀉法、 頭皮鍼の国際基準の視区の取穴位置を参照してもよい。

*風池、天柱(あるいは圧痛点)、攅竹から上睛明へ透刺、絲竹空から太陽へ透刺、内関から間使へ透刺、陰陵泉、光明、太衝―瀉法をするとよい。

晴明、球后に深く刺鍼してもよいが、内出血の可能性があるので要注意である。

難病あるいは、効果的な治療法がないといわれる眼病であっても、それは現代医学の話であって、医学の原理が異なる中医学の立場からは、それほど困難とは思えないこともあり、治療成績もよいので諦めずに試してみるとよい。

 

14,狭心症、心筋梗塞

*心血瘀阻―脳幹線Ⅱ上焦、脳幹線Ⅰ上焦、脳幹線Ⅰ中焦―瀉法

発作時は、脳幹線Ⅱ上焦に刺鍼し手技をして、5分くらい置鍼していると、発作が沈静化し始めるが、さらに脳幹線Ⅰ上焦、脳幹線Ⅰ中焦を追加するとよい。

*内関から郄門への透刺、神門、膻中、三陰交、豊隆―瀉法

発作時は、頭皮鍼は、第4と第5胸椎棘突起間、第5と第6胸椎棘突起間の督脈の外方7分から、やや内方に向けて約1寸5分の深さまで刺入し強刺激する。

一時、発作が治まっても、再発する可能性があるので、病院へ行くように勧めた方が良い。

 

 

15,顔面麻痺

*現代の日本における顔面麻痺は、風邪によるものよりストレスが原因で起こる肝胆火旺証が多い。

*肝胆火旺―脳幹線Ⅰ中焦、大脳線1、脳幹線Ⅱ中焦、頷厭から懸釐の溝状の線がある少陽前線―瀉法

太衝、丘墟、風池、合谷、顔面の局所穴―瀉法を追加するとよい。

*風邪による顔面麻痺―脳幹線Ⅱ上焦、少陽前線―瀉法

合谷、顔面の局所取穴(初期の表証の時期は、刺鍼の深さは浅い方が良い。深く刺すと、邪気を深く追い込むことになる)

 

16,アレルギー性の疾患(花粉症、慢性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、化学物質過敏症等)

*アレルギー性の疾患は、湿熱証、肝気欝結証の実証と、肺気虚証の虚実夾雑証であることが共通している。

飲酒や甘いものを取り過ぎて脾胃湿熱証になると、脾胃の昇降の気機が失調して、脾の昇清作用と胃の降濁作用が低下する。

肺に栄養物質が昇って来なくなるので、結果的に、肺気虚になる。また胃の降濁作用が低下すると湿熱邪が肺に貯まるようになる。

ストレスで肝の疏泄作用が低下すると、脾胃の気機が一層悪化して、結果として、肺気虚証も進行する。

肺気虚で衛気不固になると、邪気からの防御作用が低下して、様々な邪気(アレルゲン)に侵襲されやすくなる。

邪気に侵襲されると、脾胃で造られて、肺、肝、皮下等に貯まっていた湿熱邪が体表に溢れ出てくる。花粉症は肝から眼へ、肺から鼻へ、アトピ―は皮下から皮膚へという具合に、湿熱邪が溢れ出てくる。

*湿熱証タイプの人は、潜在的にアレルギー体質ということになるので、アレルギー疾患をすでに発病している人は、もちろん、予防的な意味で、飲酒、過食、ストレス、運動不足、不眠の「養生5点セット」を心がける必要がある。

*アレルギー性の疾患の共通穴―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦、大脳線1―瀉法、脳幹線Ⅰ上焦―先瀉後補

曲池、内関、陰陵泉、三陰交、豊隆、太衝―瀉法、肺兪あるいは合谷に先瀉後補をするとよい。

疾患別に経穴の加減をするとよい。アレルギー性の喘息には天突を加える。

 

17,美容(表情の問題、顔面のクマ、くすみ、しみ、しわ、吹きでもの、頬の浮腫とたるみ、ほうれい線、眼瞼下垂、足の浮腫み、腹部膨満、乳房の下垂、臀部の弛み、食欲のコントロール、減肥)

*美容全般(顔面から全身まで)の共通の治療線―脳幹線1中焦、脳幹線1上焦、大脳線1、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅱ中焦、頷厭から懸釐の少陽前線―瀉法

風池、天柱、内関から間使の透刺、太衝、三陰交、陰陵泉、豊隆、足三里、内庭―瀉法を追加するとよい。、

*この治療で、精神状態を好転させることができるので、美容の第一のポイントである表情をよくすることができる。

*眼瞼下垂等の様々な下垂症状は、これまで、中気下陥と弁証されてきた。しかし食欲が旺盛でパワフルな実証タイプの人でも、様々な下垂症状がみられる。

中気下陥でなくとも、過食、飲酒による痰湿中阻、湿困脾、さらにストレスによる肝気鬱結で、脾胃の昇降の気機が正常に働らかなくなり、脾の昇清作用が低下して、結果的に、中気下陥と似たような下垂傾向が現れる。さらに、胃の降濁作用も低下するので、痰湿が降りてこなくなり、痰湿が停滞して重く垂れ下がった感じにもなりやすい。

*痰湿中阻による下垂症状全般―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法

陰陵泉、足三里、豊隆、中脘、中極、太衝、内関―瀉法

痰湿中阻や肝気欝結が改善されると、脾の昇清作用が回復して、眠気眼で、ぼんやりした表情がきりりとしてくる、、瞼が軽くなって大きく開き細目から大きな目に変わる、頬の弛みや浮腫が取れ顔面が引き締まってリフトアップされるので、ほうれい線も消える。

同時に、全身の下垂傾向と浮腫(乳房や臀部の弛み、腹部の肥満、下肢の浮腫)、さらに、低血圧による立ちくらみや寝起きの悪さ、頭重、嗜眠傾向、脱肛、子宮下垂等も改善される。

*顔面のクマや、皮膚のくすみは、ストレスが主な原因である肝気鬱結証による気滞瘀血で、於血の暗い色が皮膚に反映してできる。また血の循環が悪くなって、皮膚に栄養が届かないので皮膚がカサカサして潤いや艶がなくなる。いずれも、肝気欝結の治療がポイントになる。

大脳線1、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦、少陽前線―瀉法

内関から間使への透刺、三陰交、太衝、風池、天柱、合谷の瀉法を追加するとよい。

*吹きでものは生理前に出やすいが、生理前になると、血が下がるので、陰陽のバランスが崩れて頭顔面部が熱化しやすくなる。また、肝火が胃に移る、あるいは、熱化しやすい食物を過食て胃熱が発生し、それらの熱が顔面部の胃経に上ってくると、吹き出物が出やすくなる。

脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦、大脳線Ⅰ、少陽前線―瀉法

中脘、内庭、内関、太衝―瀉法

*顔面の美容に対して、局所取穴をしてもかまわないが、顔面の美容の問題は、ほとんど全身性の問題と関連しているので、局所取穴の効果は極めて限定的である。

本治法の頭皮鍼や弁証取穴で、顔面や身体の美容の問題は、ほぼ改善されるが、シミ、しわの治療では、局所取穴を併用してもよい。

食欲のコントロールや減肥治療では、頭皮鍼と弁証配穴による治療は、本治法であり、即効性も高い。耳ツボを加えると持続性が高まる。

局所への刺鍼とパルスによる治療も一定の効果があるが、表示法的効果に終わることが多いので、その必要性はあまりない。

*食欲のコントロールや減肥―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法。

中脘、水分、内庭、足三里、豊隆、陰陵泉、太衝―瀉法をするとよい。

 

18,パソコン病、頚部の痛みや肩こり

パソコン等の労損で形成された於血による頚、肩、上背部の凝りや痛みに対する共通の治療線―百会から絡却の肩凝り線、脊柱線の頚椎とその数ミリ外方の健側の反応線、脊柱線の上焦とその数ミリ外方の健側の反応線―瀉法

白川式手鍼の上焦穴、三焦穴、下後谿、下合谷の中から選穴し運動鍼にするとよい。

ストレスからくる肝欝気滞瘀血の痛みや肝気上逆によるのぼせを伴った張痛、痰湿証や湿熱証による重痛―共通の治療線に脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法を追加するとよい。

*労損による瘀血タイプ―内関から間使へ透刺、風池、天柱、丘墟、外関、曲池、後谿―瀉法

*肝気鬱結、肝気上逆タイプ―内関から間使へ透刺、百会、風池、丘墟、太衝から湧泉へ透刺―瀉法、

*痰湿証、湿熱証タイプ―風池、陰陵泉、豊隆、後谿―瀉法

*中気下陥・気虚瘀血の虚証タイプ―脳幹線Ⅰ中焦―補法または先瀉後補

百会、足三里―補法、三陰交―瀉法

*肝陽上亢―脳幹線Ⅰ中焦―瀉法、脳幹線Ⅰ下焦―補法

風池、太衝、丘墟―瀉法、復溜―補法

痛みや硬結が残っている場合に、局所に取穴するか、耳ツボ、吸い玉、手技療法もよい。

 

19,頻尿、前立腺肥大、インポテンツ、腰部仙骨部の重痛

*これらの疾患は、従来は、腎陽虚証として弁証されてきたが、高齢者は、その可能性が高いが、それ以外の比較的若い世代では、90%以上は湿熱下注として弁証される。このように変化してきた理由は、現代人は、アルコールの摂取量が限度を超えている人が多いこと、あるいは、甘いもの、火を通さない生もの、油っこいものを取り過ぎる傾向があり、これらが中焦で湿邪、あるいは湿熱邪が大量に生み出され、それが下焦に下注し下焦で湿熱邪が詰まって、このような疾患を引き起こすことになる。

ストレスが加わると、症状をさらに悪化させることがある。

*湿熱下注―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅰ下焦、脳幹線Ⅱ下焦、脊柱線下焦―瀉法

陰陵泉、中極(やや下方に向けて1,5寸の深さまで刺入して尿道に響かせる。次膠、あるいは秩辺付近の反応点から内下方に向けて、2寸から2寸5分の深さまで刺入し、陰部神経を狙って尿道に響かせる―瀉法

即効性があり、また食養生と治療を継続して、湿熱邪が去邪されると完治する可能性もある。

*腎陽虚症―脳幹線Ⅰ下焦、脳幹線Ⅱ下焦―補法

太谿、関元、腎兪―補法、関元と命門に灸をするとよい。

 

20,慢性腎不全

*腎には、実証はないという考え方があり、腎病は、腎性不足、腎気虚証、腎陽虚証、腎陰虚等の虚証として弁証されてきた。腎に実証はないということの意味は、腎精は不足することで病になることがあるが、過剰になり過ぎて病になるということはないということである。

また、心のように心包という防衛隊で衛られているわけではないので邪気にやられることはないということではない。

臨床上は、腎も、邪気に犯されて発病することがしばしばあるので、一面的解釈をしないように注意すべきである。

現代では、腎虚証タイプの腎臓病の患者はめずらしい。これは、病因から考えると、分かりやすい。現代は、食糧難で、栄養不足の時代ではないので、飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレス等の生活習慣病を引き起こすような原因が、腎病においても主要な病因になっている。

腎病であっても虚証がメインではなく、中焦で作られた湿熱邪が腎膀胱に下注して引き起こされる湿熱下注が患者の大半である。

弁証をする際には、断片的な一般的理論の誤った適応に振り回されることなく、現代の時代の特徴を踏まえて、客観的で具体的な情報に基づいて四診合算による総合判断によって、どうしてこのような病気になったのかというストーリーを、つまり病因病機について明らかにした方がよい。

*人工透析をしている患者を治療対象に考えているわけではない。鍼治療をして、人工透析をする必要がなくなるというようなことは考えにくい。しかし、人工透析にともなう諸症状は、鍼治療で緩和される。

ここでの治療対象は人工透析を開始する以前の段階であり、慢性腎不全の患者の大半を占めている下焦湿熱証タイプの患者が対象である。この段階であれば、病の程度によるが、鍼治療の効果がよいので、人工透析に頼ることなく、鍼治療で、病状をコントロールすることは可能であり、治癒する可能性もあり得る。

腎虚証タイプの慢性腎不全は、予後の判定は難しい場合があるので、ケースバイケースで判断した方がよい。

*下焦湿熱証―脳幹線1下焦、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ下焦―瀉法

陰陵泉、中極、次膠、足三里、中脘―瀉法にするとよい。腎経の経穴そのものは、経絡病の場合は除外して、直接的な瀉法をすることは腎の正気を損傷することを避けるために控えた方がよい。

*腎陽虚あるいは脾腎陽虚―脳幹線Ⅰの下焦と中焦、脳幹線Ⅱ下焦―補

太谿、関元、腎兪、足三里―補法と灸、陰陵泉の先瀉後補

 

21,禿

*禿の証型―老化に伴う腎精不足、消耗性の慢性病、体力の消耗等による気血不足は、虚証タイプの禿になる。

さらに抗がん剤等による特殊なケースの虚実夾雑の禿もある。

飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレス、運動不足、パソコン等のやり過ぎによる頚肩部のつまり等、生活習慣病を引き起こすのと同じ原因である実証タイプの湿熱証、肝気鬱結症、瘀血症等による禿がある。高齢者を除けば、実証タイプの禿が大半を占める。

*腎精不足、気血不足等の虚証タイプ―脳幹線Ⅰの下焦と中焦―補法

太谿(気虚、陽虚、腎性不足)あるいは復溜(陰虚)、気血不足には三陰交、足三里―補法、さらに陰虚には百会、風池は瀉法、他の虚証タイプには、百会、風池は補法にする。

*飲酒や甘いものの取り過ぎと、持続的なストレスが原因で引き起こされる肝胆湿熱証では、頭部が熱くなり、しかも多汗になるので、まるで、お湯で毛根が蒸されるような状態になり髪が抜けてゆく。

肝胆湿熱証の禿げやすい部位は、肝経のルート上にある百会の位置する頭頂部、胆経と胃経の交会穴である頭維の付近。

なお肝胆湿熱証だけでなく、脾胃湿熱証も同時にあるのが普通であるが、そのような場合は、頭維の付近から前額部全体にかけて禿げ上がる。

肝胆湿熱証の禿―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦、大脳線1―瀉法

百会、頭維、風池、陰陵泉、太衝、足臨泣、内庭―瀉法にするとよい。

*ストレスによる肝気鬱結になると、於血が形成されて気血の流れが詰まって毛根に栄養を補給できなくなるので脱毛する。さらに、労逸による頚、肩部に瘀血があれば症状を悪化させる。

肝気鬱結になると、とりわけ胆経に沿って於血による円形性脱毛症ができやすくなる。さらに持続的な強いストレスによる慢性的肝気鬱結証では、円形性脱毛症の範囲を超えて、肝胆の経絡のルートである百会のある頭頂部や胆経の走行線上から禿の範囲が拡大して全面的に禿げることもある。

肝気鬱結による於血証タイプの禿―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦、大脳線1、大脳線Ⅲ―瀉法、

禿ている局所に梅花鍼か散鍼をしてもよい、百会、四神聡、風池、内関から間使へ透刺、三陰交、太衝、丘墟―瀉法

 

22,甲状腺(バセドー氏病、橋本病)

*バセドー氏病の初期は、激しい肝火上炎があり、その熱邪によって大量の発汗が起こり、それによる気随津液で、急速に気陰両虚が進行する。

この病は、一見すると、実証の症状だけが目に入ってくる。また機能亢進というイメージが焼き付いているので、なおさら、そう見える。

しかし、機能亢進すればするほど、その分、虚の程度も進行するのが、この病の特徴である。虚の側面を見落とさないようにして、しっかり気陰を補うことが治療のポイントになる。

バセドー氏病―脳幹線Ⅱ中焦、大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ―瀉法、脳幹線Ⅰ中焦―先瀉後補、脳幹線Ⅰ下焦―補法

百会、風池、内関から郄門への透刺、天突、太衝、甲状腺腫への局所取穴―瀉法、足三里、三陰交―補法

*バセドー氏病で、肝と密接な関係にある眼が球突出するのは、肝気上逆、あるいは肝火上炎で脳の内部が膨張し圧力が高まって眼球が突出すると考えられる。その予防あるいは初期症状の治療には、平肝潜陽の作用がある百会、風池、太衝、光明―瀉法、復溜―補法をするとよい。

バセドー氏病の後遺症としての眼球突出の治療は、平肝潜陽の作用のある経穴を使って脳内の圧を人為的に下げた状態にしておいて、眼球を手掌でしばらく圧迫する治療を繰り返すと、徐々に、元の位置に戻るようになってくる。

眼球突出の程度がひどいものは、眼窩内刺鍼をした方がよい。さらに、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法、少陽前線、大脳線Ⅲ、風池、天柱、太衝―瀉法をした方がよい。

*橋本病の初期は気虚証であるが、病気が進行すると陽虚証になる。逆に、若い女性で、気虚証や陽虚証の特徴的な症状が揃っているような場合は、橋本病を疑ってみてもよい。気虚証の段階の橋本病は治療効果がよい。

気虚証―大脳線1―瀉法、脳幹線1の上焦と中焦―補法

天突―平補平瀉、 足三里、合谷、百会―補法

陽虚証―大脳線1―瀉法、脳幹線Ⅰの上焦、中焦、下焦―補法

天突―平補平瀉、太谿、足三里、関元、腎兪―補法、 関元、足三里に灸頭

鍼、さらに中脘、膻中、大椎、至陽、命門に温灸をするとよい。

 

23,腰痛(ぎっくり腰、腎虚腰痛、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、湿熱下注による重痛、脊柱管狭窄症、痺証、癌の骨への転移による腰痛)

*腰痛の共通の治療線―脊柱線下焦、(腰椎、あるいは仙骨)と、患部に相応する部位で、督脈上の脊柱線下焦の数ミリ外方にある健側の反応線―瀉法

*ぎっくり腰―脊柱線下焦―瀉法

手鍼(下後谿、あるいは下焦、三焦)、あるいは委中―瀉法、あるいは局所

の阻力鍼法

*腎虚腰痛―脳幹線Ⅰ下焦、脊柱線下焦―補法

陽虚―太谿、腎兪、関元に鍼の補法と灸、陰虚―腎兪、復溜―補法

*椎間板ヘルニア―脊柱線下焦―瀉法

手鍼(下後谿、あるいは下焦、三焦)、あるいは委中―瀉法、あるいは局所の華佗挟脊―瀉法

*骨粗鬆症の急性期―脊柱線下焦―瀉法、

手鍼(下後谿-瀉法)、脳幹線Ⅰ下焦―補法

陽虚タイプ―太谿、懸鐘、腎兪、 陰虚タイプ―復溜、懸鐘、腎兪―捻転の補法(各穴に5~10分間)

この治療で、急性期で、全く動けないくらいの状態であっても、治療後には、なんとかトイレに行けるようになる。髄会の懸鐘への5分間以上の補法が最も効果的である。

*湿熱下注による重痛―腰痛の訴えがあった場合、治療に取り掛かる前に、その症状が、痛いか、重いかを確認すべきである。痛ければ瘀血、重ければ湿邪の可能性が高いので治療法も異なってくる。

湿熱下注―脊柱線下焦、脳幹線Ⅰ中焦―瀉法

陰陵泉、束骨(体重節痛を主る兪穴)、中極、次膠、委中、手鍼(下後谿)―瀉法、 湿邪による重痛には、局所取穴の効果は薄いので省略してもよい。

*脊柱管狭窄症は、椎間板ヘルニアや骨の変形に伴う物理的狭窄と瘀血により、気血の流れが詰まりぎみであるところに、湿熱邪が下注してきて、さらに詰まりが悪化した状態である。

この病の特徴は、脊柱管内部で邪気による詰まりの程度が強いので、下肢の方への気血の流れが悪くなり、歩いて消費される栄養量に対して、供給量が追い付かなくなる。それで少し歩くと栄養不足に陥り歩けなくなってしまうのである。休憩すると、供給量が徐々に増加してくるので、また歩けるようになる。

このようなことなので、治療のポイントは、脊柱管内の湿熱邪や於血を効果的に取り除いて気血の流れを回復することである。

また、腎虚証による骨の変形等があれが、去邪を先行した治療の後に、腎虚証の治療をすることになる。

脊柱管狭窄症―脊柱線下焦、脳幹線Ⅰ中焦―瀉法

内関から間使の透刺、束骨、陰陵泉、三陰交、中極、次膠、委中―瀉法、手鍼(下後谿-瀉法)

*痺証―風寒湿邪による腰痛―全身的に正気が衰えていれば、その虚に乗じて風寒湿邪に侵襲される可能性が大である。若い人であっても、産後や正気を損傷している状態で、無理をして風寒湿邪にさらされるようなことをすると、痺証になることがある。

しかし、虚証でなくとも、またスポーツ選手のような屈強な人であっても、痺症になることがある。

運動をして汗をかいたままの状態、つまり、汗腺が開いたままになっている状態で、汗で湿った下着のままで寒風吹きすさぶ外に立っていたら、風寒邪にやられて、痺症になる可能性がある。

例え、正気が充実していても、邪気に襲われるような条件があれば、痺症になることもある。運動をした後の養生が大切である。

また、骨折、捻挫、椎間板ヘル二ア、手術の痕などが治らずに残っている状態であれば、そこで、気血の流れが詰まっている。全身的虚証でなくても、局所のつまりが原因で正気不足になっているので、邪気に侵襲されて痺証になることがしばしばある。

*痺症による坐骨神経痛―脊柱線下焦、百会から通天への斜めの治療線である股関節、前頂から頭維までの溝状になっている斜めの線で、前頂よりの3分の1の部分の大脳線Ⅳの下肢線―瀉法

手鍼の(下焦)―瀉法、委中(四総穴)、崑崙(喘咳寒熱を主る経穴)、陽輔(経穴)―瀉法で寒邪を取る、 束骨(体重節痛を主る兪穴)、足の臨泣(兪穴)―瀉法で湿邪を取る。局所取穴に灸頭鍼をして寒湿邪を取る。

*癌の骨への転移による腰痛―脊柱線下焦―瀉法、脳幹線Ⅰの中焦と下焦―先瀉後補

手鍼(下後谿)、委中―瀉法、太谿あるいは復溜、懸鐘、足三里―補法、局所取穴は癌の転移の問題があるので禁忌。耳ツボは即効性と持続性があるのでよい。

 

 

24,五十肩、肩関節痛、肩凝り

*五十肩は風寒湿邪による痺症であり、天候に左右されやすいという特徴がある。肩関節痛はスポーツや仕事で痛めた通常の運動器疾患であり、五十肩とは病因が異なるので、その治療法も多少の違いがある。

*共通の治療線―百会から絡却までの肩凝り線、脊柱線頚椎の健側より数ミリ外方の反応線、健側の顋会から頭維までの線の真ん中の3分の1の大脳線Ⅳ上肢線―瀉法、

*大腸経には曲池、あるいは井穴の商陽、三焦経には外関、あるいは井穴の関衝、小腸経には手鍼(下後谿)、肺経には尺沢あるいは井穴の少商―瀉法

*同名経の足の経穴を取って、上の病である肩関節を治療することができる。

陽明大腸経の肩髃の痛み―陽明胃経の足三里の下1寸―瀉法

少陽三焦経の肩膠の痛み―少陽胆経の陽陵泉―瀉法

太陰肺経上の肩前の痛み―瘀血がある時は太陰経の三陰交、湿邪がある時は太陰経の陰陵泉―瀉法

*五十肩での寒湿邪には局所の灸頭鍼がよい。五十肩の初期で、病位が筋肉にあるときは、筋肉に沿って横刺する。時間がたって、肩関節内部の深部に痛みがあり、於血による夜間痛がみられるような場合は、肩髃、肩髎(腕を少し拳ると窪みができるところ)に、約45度角で、深さ1寸3分くらい刺入する。

*肩凝りの標示法は、ほとんど五十肩や肩関節痛の治療に準じたものになるが、肩凝りは、弁証論治による治療をしなければ、その場しのぎの治療になり、患者との信頼を失うことになる。

肩凝りのタイプとしては、パソコン等の労損で頚椎に何らかの損傷を伴っていることがあり、頚、肩だけの凝りではなく上肢に痛みやしびれが出やすい於血証タイプ、

ストレスで肝鬱気滞於血になって詰っているタイプ、あるいは肝気上逆になり、熱感を伴って膨張するような、あるいは張ってくる感じがするタイプ、

痰湿や外湿で重だるくなるタイプ、

さらに、気虚於血タイプ、肝陽上亢タイプ、心血悪阻タイプ等がある。

臨床上は、いくつかのタイプの複合である場合が多い。治療は、タイプに相応した治療をする必要がある。

*労損による於血証タイプの治療は、標示法でよいが、それ以外のタイプは、肩凝りの症状に目を奪われることなく、臓腑弁証に基づいた治療を優先した方が、結果的には良い効果が得られる。最後に局所的に残った痛みや凝りがあれば、局所取穴で簡単に取れることが多い。

 

 

25,手術の癒着による後遺症(乳癌、子宮癌等)

*上枝の手術の後遺症には、顋会から頭維までの線の満中の3分の1の大脳線

Ⅳ上肢―瀉法

下肢の手術の後遺症には、前頂から頭維の線で前頂よりの3分の1の大脳線Ⅳ

下肢―瀉法

*胸部の心、肺や乳房の手術による癒着で発生する瘀血による引きつりや、痛み、リンパの流れの滞りによる浮腫―脳幹線Ⅰ上焦、脳幹線Ⅱ上焦―瀉法

肺の手術には、尺沢、心の手術には内関、乳房の手術には足三里―瀉法、

*肝胆脾胃の手術の癒着による後遺症―脳幹線1中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法

肝―太衝、胆―陽陵泉、脾―三陰交あるいは陰陵泉、胃、大腸―足三里―瀉法、

*子宮、卵巣、前立腺、大腸の手術による於血―脳幹線Ⅰ下焦、脳幹線Ⅱ下焦(大腸には、脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦を加える)

子宮、卵巣―三陰交、太衝、 前立腺―三陰交、陰陵泉、 大腸―上巨虚―瀉法を加える。

*手術による癒着の後遺症は、全て瘀血として捉え、全身的観点から、間使、三陰交の瀉法で行気活血すると効果的である。

また手術部位の該当する経絡の井穴を取り、時には運動鍼にして疎通経絡をはかる。また、局所の圧痛点、反応点に刺鍼する

*また、手術の結果、癒着により、リンパの流れが詰まって起こる浮腫(乳癌や子宮癌の手術でよくみられる)は、もともとの原因である手術の癒着(病因論からすると人為的な外傷により形成された於血として捉える)による於血を取り除くと、同時に、脾が水湿の運化作用の中軸であるので、この作用を利用して去湿する。

また関係する経絡の五兪穴の体重節痛を主る各経絡の兪穴を取穴して去湿する。さらに、三焦の気能化水の作用を活発にして浮腫の治療をすることができる。

*乳癌のケースでは、乳房は上焦に位置し、また浮腫の部位が肺経の領域に重なっているので、肺の通調水道作用を活発にさせることで治療することできる。

乳房は脾と関連し、また乳頭は肝と関連し胃経の走行上にあるので、治療に際しては、これらのことも考慮した方がよい。

手術の経過、患者の感覚、さらに触診もして、水湿の流れの詰まりの原因になっている局所を特定して、そこに刺鍼するとよい。

*乳癌の手術後の浮腫の治療―尺沢、陰陵泉、豊隆、陽池、局所の圧痛点、反応点―瀉法の治療穴を於血の治療穴(内関から間使に透刺、三陰交、太衝)に追加取穴する。

*子宮癌の手術後の浮腫には、子宮が下焦にあることから、水湿の運化作用の中軸である脾に加え、腎膀胱の気化作用を活発にして去湿する。また生殖器は肝経のルート上にあるので、肝経の兪穴を使用することができる。

陰陵泉、中極、子宮穴、太衝、次髎局所取穴―瀉法を、於血の治療穴に追加する。

 

26,骨折や外傷の手術後のリハビリ段階での治療

*骨折部位は、長期間、固定するので、リハビリ段階になって動かそうとしても固まっているので痛くて動かすことができない。リハビリ単独で回復させるには長期間かかる。

これは病因論から言えば、労逸ということになり、つまり、長期間、動かさなったことで頑固な瘀血が形成されたと考える。強力な行気活血を行う必要があり、また、そうすることで、固まって痛くて動かすことができなかったのに、一気に動かせるようになる。

*骨折部位に相応する治療線を選ぶ。たとえば、手足の骨折部位には、そこに相応する大脳線Ⅳの上肢、下肢の治療線を取る。治療線のすぐ近くに反応が出ている線があれば、そこも追加するとよい。

*どの部位の骨折であっても瘀血を取るために、全身的観点から、間使、三陰交の瀉法で行気活血をした方がよい。また、骨折部位で該当する経絡の井穴を取穴して運動鍼にして疎通経絡するとよい。

*井穴への取穴は、爪を使うと、経絡の溝と井穴のアナを確認できる。その穴に20度角で薄い筋肉層に沿って約1分刺入すると、無痛で得気が取れる。その得気に対して捻転の瀉法を軽く施す。得気が取れていれば手技をしても、ほとんど痛みはない。

刺鍼した状態で運動鍼にする。さらに関節の運動やマッサージを加えてもよい。

井穴は抜鍼した際に出血するが、出血が止まるまで、アルコール綿でよく拭き取るとよい。

*鍼治療を取り入れたリハビリをすると、通常のリハビリ期間を3分の1以下に短縮できる。

数回の治療で、リハビリを省略することができるくらい早期に回復することもある。

*骨折部位や手術部位が、寒い日や雨降りには、神経痛様の痛みが出るになりやすいが、リハビリ段階で、鍼治療を取り入れると痺証になるのを予防できる。また、痺症になれば、鍼治療が最も効果的治療法である。

多くの場合、このような痺証は、手術の失敗による後遺症の痛みとして考えられることが多いが、厳密にいうと後遺症とは言えない、手術をした部位と同じ部位に、別の病気である風寒湿邪による痺証が発症したというのが正確な捉え方である。

*痺証は、全身的な虚証があり、邪正闘争に負けて発症すると考えられてきた。臨床上は、正気が充実している人であっても、外傷による骨折や捻挫、また手術による癒着等による於血があると、そこで、気血津液の流れが滞るので、結果的に、局所が正気不足に陥り、風寒湿邪に侵襲されやすくなり痺証になるケースがしばしば見かけられる。

外傷の治療や手術に際しては、あらかじめ、治療の一部に鍼治療を組み込んでおけば、於血を取り除けるので痺証の予防ができる。

さらに、気血の流れが、きわめて良好な状態になるので、術後の痛みの予防ができ、術後の回復も飛躍的に向上する。

27,酸欠等による脳障害

*労災事故や赤ちゃんの保育器の事故等によって、命は助かったけれど、酸欠による脳障害が残るということがある。このような脳障害には、頭皮鍼による治療が最適である。発症後の経過期間が相当、長くても効果が期待できる場合がある。

*酸欠による脳障害は、上肢、下肢の運動障害、精神障害、知能の障害、感覚器の障害、言語障害、内臓の障害という具合に、広範囲に及ぶこともあり、その程度も、軽度から重度まであるが、すべて治療対象になり得る。治療結果が、すべて良好ということはないが、障害の程度がかなり改善することが多い。

*上肢や下肢の運動障害―大脳線Ⅳ上肢、下肢、脊柱線頚椎、大脳線Ⅰ

関係する経絡の井穴に刺鍼して運動鍼にするとよい。

小脳の障害―小脳線、大脳線Ⅲ

脊柱の障害―脊柱線の相応する部位、大脳線Ⅰ

手鍼の下後谿―瀉法

解剖学上の大脳の運動野、感覚野、小脳の位置に刺鍼する「頭鍼療法の国際基準」の治療法を参考にしてもよい。

運動器の障害には、手鍼の下後谿、三焦、下焦、上焦を追加してもよい。

*精神障害、知能の障害―大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ、大脳線Ⅱ(上焦、中焦、下焦)大脳線Ⅱの上焦、中焦、下焦は障害に相応する治療線―瀉法、例えば、精神的イラつき、怒りやすい―大脳線Ⅱ中焦、また怖がり―大脳線Ⅱ下焦、

*眼の障害―大脳線1、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦、大脳線Ⅲ、肩凝り線、脊柱線中焦の数ミリ外方(肝兪の位置に相当する位置)―瀉法

国際基準の視区を参照してもよい。

太衝、光明、風池、天柱、攅竹から上睛明、絲竹空から太陽へ透刺を追加するとよい。

*耳の障害―天衝から角孫の少陽後線、脳幹線Ⅰ中焦、―瀉法

国際基準の治療線を参考にしてもよい。

翳風、外関、丘墟―瀉法を追加するとよい。

もし、腎虚証があれば、脳幹線Ⅰ下焦―補法、太谿(気虚、陽虚、腎性不足)あるいは復溜(陰虚)―補法を追加するとよい。

*言語障害―大脳線1、脳幹線Ⅰ上焦、大脳線Ⅳ顔面(構音障害)―瀉法、

国際基準の言語区(失語症)を参考にしてもよい。

廉泉、通里―瀉法をするとよい。

*内臓の障害―脳幹線Ⅰ上焦、中焦、下焦、 脳幹線Ⅱ上焦、中焦、下焦、大脳線1―瀉法から臓腑弁証に基づいて相応する治療線を選ぶ。

*脳障害の共通穴として内関から間使へ透刺、三陰交、風池、天柱、懸鐘―瀉法をするとよい。

また腎虚証がある場合は、脳幹線Ⅰ下焦、小脳線―補法、太谿あるいは復溜、懸鐘―補法を追加取穴するとよい。

*脳血管障害、脳腫瘍、外傷、細菌の毒素、薬害等による脳障害にも、この治療法は参考にできる。

 

28,痰切、咳

*痰が多すぎても、痰が詰まって出ないのも、痰が絡んで咳こむのも苦しいが、比較的シンプルな治療法で対処できる。

*痰湿阻肺―風邪を引いていなくても、脾胃で作られた痰湿が、肺に貯まり、止めどもなく痰が喉から出てくることがある。

このような痰の治療は、生痰の源は脾、貯痰の器は肺、痰が詰まっている部位は喉であることから、痰湿阻肺の治療線は、大脳線Ⅰ(喉)、脳幹線Ⅰ上焦(肺)、脳幹線1中焦(脾胃)―瀉法

天突、豊隆、尺沢―瀉法をするとよい。

*痰の色が黄色くて、ねばくなり、痰が切れない等、熱化して痰熱になっている場合は、栄穴の内庭、魚際を追加するとよい。

*風邪引きで、表証から裏証になって、痰が黄色く、ねばくなり、また喉の奥の気管支付近から、酷い咳や痰が出るような場合も、この治療法でよい。

*喘息発作時の治療法も、これでよい。

 

29,全身的レベルの筋肉痛、運動麻痺、筋萎縮

*線維筋痛症(筋肉痛)、多発性硬化症(筋麻痺)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(筋萎縮)

これらは、全て難病で、病気の原因も治療法も分かっていない。

このような病名を聞いた段階では逃げ出したくなるが、現代医学にとって難病であっても、医学体系の異なる中医学にとって難病であるかどうかは病名からは判断することはできない。双方にとって難病の場合もあるし、いずれかの一方において難病であって、もう一方にとっては適応症ということもある。

病名が難病であっても、一切、気にする必要はなく、中医学の原理に沿って適応症かどうかを冷静に判断して適応症であれば、たんたんと治療をすればよい。

*中医学の立場からすると、これらの筋肉の病は、病気の具体的な引き金になった原因や患者が置かれてきた状況から判断して、主な病因は強いストレスであると考えられる。

主訴は、症状が異なるが、いずれも全身的な筋の問題(筋の痛みあるいは筋の麻痺あるいは萎縮)と肝の関係、さらに肝と関係する症候群等から総合判定すると、弁証は肝気鬱結である。

個々の筋肉の問題ではなく、全身的レベルでの筋の問題ということになるので、「肝血により全身の筋は栄養される」という中医学の原理が、これらの筋の病を考える際のポイントになる。

強い肝気鬱結状態になると、肝の疏泄作用が低下して、肝に蓄えられている血の流れが全身的に詰まりやすくなる。

とりわけ、筋に対する血流が悪化すると、、瘀血による筋痛が全身的レベルで出たり、さらに詰まりの程度が強くなると、結果として筋に肝血が届かなくなり筋が栄養不足に陥り、体質やその時の発病の条件の違いによって、筋の麻痺、さらには、筋の萎縮という症状が出るようになったと考えられる。

これらの3種類の病気は、病因病機からみると、症状や程度も異なるが、同類の病であるので、異病同治で治療することができる。

*肝血虚証でも、全身レベルで血が不足して筋を養えなくなると、似かよった病気になる可能性があるが、強いストレスによる肝気鬱結が病の基礎になっている場合は、このような病になる。病因論から鑑別する必要がある。

*また、ALSは、筋の委縮という点に着目すると、「痿証」の範疇になるが、古典で取り上げられている痿証の病因は肺熱であるので、古典を標準にすると、痿証の範疇には当てはまらない。

*脳幹線Ⅰ中焦(肝)、脳幹線Ⅱ中焦(肝)、大脳線1、大脳線Ⅲ―瀉法

さらに、症状によって適当な治療線(たとえば、大脳線Ⅳの上肢、下肢、脊柱線の頚椎、上中下焦)を追加するとよい。

*内関から間使へ透刺、三陰交、太衝、陽陵泉、風池―瀉法

症状の変化に応じて、取穴を臨機応変に変えてもよい。

 

30,慢性疲労症候群

*問診で、「いかがですか」との問いに、最初に「疲れる、あるいは疲れた」と答える患者が多い。

おそらく答えるときの表情からして、主訴は、全身的疲労倦怠感であると解釈できる。疲れるという曖昧な表現を、どのように医学的に解釈するべきか悩むところであるが、言葉の意味から素直に解釈すると、何かをしすぎてエネルギーを使い果たして消耗している状態であるといえる。虚実でいえば、虚の状態であるといえる。臨床上、果たして、この解釈で当たっているかどうかということが問題である。

*正気不足による慢性疲労症候群―気虚、血虚、津液不足―脳幹線Ⅰ上焦、中焦、下焦―補法

合谷、足三里、三陰交―補法

気血津液の何が、どの臓腑で不足しているかという臓腑弁証をして、上記の経穴に、臓腑の虚を補う適切な経穴をプラスしてゆけばよい。

*疲労感というものは、虚証の時だけ出るものではなく、肝気欝結による気滞、瘀血あるいは痰湿による詰まりで、気血の巡りが悪化しても、詰まって苦しいというのも疲労感として表現されることがある。

膨張感、痛い、痺れる、重い、熱ぽい、冷える等の邪気の性質を反映した感覚も、「疲れた」と表現されることがある。

さらに、これらの身体的症状や感覚があると、それに相応した精神症状(イライラ感、落ち込み、無気力、倦怠感、泣く、集中力がなくなる)も現れるので、それらも疲労感として自覚されるようになる。、

「疲れた」という表現は、上記したような様々な症状や感覚を、ひとまとめにしてイメージとして表現したものである。

実証タイプの疲労感の方が、虚証タイプのそれよりも、きつく耐えがたいものとして感じられることが多い。

*現代では、高齢者や慢性病で正気を損傷している人を除くと、大半の人は実証タイプの疲労感である。ストレスによる肝欝気滞瘀血や食べ過ぎによる痰湿、運動不足による瘀血等が疲労感を作り出す根本になっているので、患者自身が、それらの病因を取り除けるように適切なアドバイスをすることが、根本的な治療のカギになる。

*実証タイプの慢性疲労症候群―大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法

内関から間使の透刺、三陰交、風池、太衝、豊隆(足三里)、陰陵泉―瀉法

 

31,ヘルペス

*ヘルペスは湿熱証であるが、肝胆の経絡上のエリアに出やすいので、肝胆湿熱証として弁証されることが多い。ヘルペスは体質的に湿熱証タイプの人が、何らかの原因で正気不足に陥ったときに、その虚をついて、それまで体内で潜在化していた湿熱邪(ヘルペス)が暴れ出して発病したと捉えることができる。

*治療は、先ず顕在化した湿熱邪を取り去ることに集中すべきであるが、その後、正気の回復をはかる治療をすべきである。

*ヘルペスの治療―脳幹線1中焦、脳幹線Ⅱ中焦、ヘルペスが出現している部位に相応する治療線―瀉法

陰陵泉、豊隆、足臨泣、中渚、内関、太衝―瀉法、局所の散鍼あるいは梅花鍼

*ヘルペスは、病院で治療ができて、表面上はきれいに治るが、後遺症として相当きつい神経痛が残ることがしばしばある。しかし、その予防法や治療法がない。

鍼で治療すると、治療効果もよく、何より神経痛が後遺症として残ることはないので、これこそ鍼治療の適応症である。後遺症の神経痛に対しても一定の治療効果がある。

 

32,シェーグレン症候群

*この病は難病ということになっているが、弁証は肝腎陰虚証である。

患者のほとんどは、女性であること、好発年齢は40歳代から50歳代であり、まさに、更年期の真っ最中に差しかかっている年齢の人が発症しやすい。女性にとって、この時期は、7×7の49歳で、腎精が衰え、天癸も急激に枯渇して月経もなくなる年齢を挟んだ更年期ということになる。。

肝腎の精血も虚衰してくる、この時期に、持続的な強いストレスを受けて、肝鬱化火になると、その火邪で肝腎陰虚になり、陰虚内熱、陰虚内燥が一層、盛んになり、津液不足が全身的に表面化してくる。

津液不足による具体的症状として、眼の乾燥やまぶしさ(肝陰虚の症状)、唾液が出なくなり口内が乾燥する。かすれ声になる(腎陰虚の症状)。さらに脳の髄液や心陰による心の潤いまでもなくなり、全身が、まるで魚の干物のようにひからびた状態になってくる。全身が干物というイメージに当てはまる症状は、すべて、この病の症状の可能性がある。

*この病は、更年期と重なって発症することが多いので、ほとんどが女性の患者である。更年期障害を広く解釈すれば、この病は、更年期症状の一部と解釈することができる。

この病の症状と言えるのか、更年期に良くみられる症状なのかの境界線を引くことは難しい。たとえば、この病には、更年期によく見られる精神症状が強く現れることが多いが、いずれの症状であるかの鑑別はむつかしい。

ところで、中医学によるこの病の治療においては、更年期障害との関連性はどうかについても、あまり深く考える必要がないということであり、病因、病機をしっかり把握して治療すればそれでよい。

*また、膠原病、とりわけ関節リュウマチを併発している人が多いようである。更年期の時期は、肝気鬱結によって気血の流れが詰まりやすくなるので、結果として、あちらこちらで、正気不足に陥りやすくなる。また老化への曲がり角に差し掛かっているので、全身的レベルの正気不足もあるという二重の正気不足があるので、その虚に乗じて風寒湿邪に侵襲されて、リュウマチのような痺症になりやすいと考えられる。

リュウマチそのものは、風寒湿邪の性質を反映した症状を呈するが、このような陰虚タイプのリュウマチは、寒湿邪の性質が現れている一般的リュウマチと異なる固有の症状を現すことが多い。

たとえば、陰虚による熱ぽっさや乾燥感を伴うことがある。

*シェーグレン症候群・肝腎陰虚証―大脳線1、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰ中焦―瀉法、脳幹線Ⅰ下焦―補法、

リュ―マチには該当する部位に相応した大脳線Ⅳ上肢、下肢―瀉法を追加する。

*肝腎陰虚―三陰交、復溜―補法(5分から10分間)

陰虚による陽亢や、乾燥や熱の症状には、栄穴の行間、内庭、魚際等を追加取穴するとよい。刺鍼後、数分間以内に、乾燥感がなくなり、唾液が出てくる、眼が潤ってくる等、この病の主症状は消失する。治療を継続すると、主症状は治癒する。

肝気上逆、気鬱化火―風池、内関、太衝から湧泉に透刺―瀉法

リュウマチ―曲池、陰陵泉―瀉法)、

 

33,不妊症

*不妊症は、人の成長、発育、生殖、老化を主る物質である天癸の働きと関係している。

肝腎の精血が充足していれば、天癸も充足するが、肝腎の精血が虚衰して、天癸が枯渇しているような状態では妊娠は難しい。

*女性は、14歳で「腎精が充実し、天癸が至る」、生殖機能を促進する物質である天癸が充満して受胎可能になり、21歳で成人になり、28歳で身体的ピークになり、その後、下降してゆく。35歳から老化によるやつれが出始め、42歳で老化が目立つようになり、49歳で腎精が空虚になり、閉経して老人となる。

35歳から腎精が衰えはじめ、天癸も虚衰しはじめるので、妊娠しにくい状態に徐々になりはじめ、42歳が妊娠できるほぼ限界になる。

*21歳で成人になり、28歳でピークを迎え、35歳からは老化し始めるということなので、出産に適した年齢は、腎精が盛んな21歳から35歳ということになる。

*40歳前後の不妊症は、腎精と天癸が虚衰し受胎しにくい状態になっているので、腎精と生殖機能を促進する物質である天癸を充実させて、あるいは若返らせて妊娠可能な状態にするということになる。

このようなことは、不可能なことのように思われるけれど、中医学では、まるで話にならないというわけではない。

*腎精は、たえず後天の気によって補われて充足することになっているので、腎精を直接補うだけでなく、後天の気の方からも補うことができる。

腎精の不足は、精血同源ということから、肝血を充足させることを通して腎精を補うことができる。さらに気血生化の源である脾胃を健やかにすることで、肝血を補うことができる。このような治療をすることで、腎精が充足し、天癸による生殖機能が促進されると、妊娠の可能性が高まる。

*しかし臨床上は、このような理論による治療だけでは、上手くゆくとはかぎらない。治療が成功するには、乗り越えなければならないハードルがいくつかある。そのハードルとは何か。

*現代は、ストレス社会の中で、多くの女性は程度の差はあるが肝気欝結を起こし衝任脈失調による生理痛や生理不順がある。

生理の状態が限度を超えて正常範囲内でなくなれば、腎精や天癸の虚衰の問題はなくても不妊症になる。

*ストレスで肝の疏泄作用が低下すると脾胃の気機が失調する。また食べ過ぎ、飲み過ぎによる痰湿中阻になって、脾胃の気血生化の源が正常に働かなくなっても、後天の気を順調に生産できなくなり、先天の気に悪影響を及ぼすことにもなる。

さらに中焦で生産された痰湿は、経絡の走行に従って全身至る所に運ばれる可能性があり、それが衝任脈にも及び、衝任脈失調になったり、おりものが多くなったりすることがある。

飲食不節による痰湿証は、肥満になるだけでなく、不妊症の原因にもなりかねない。

*40歳前後で不妊治療を希望している大半の人は、肝鬱気滞於血、痰湿等で気血津液の流れが詰まり、その悪影響で生殖機能も低下している可能性が高い。このような場合は、腎虚証による不妊症の可能性が理論上は十分にあるけれど、先ず、実証の面の治療を先行させた方がよい。

肝鬱気滞於血や痰湿証等の実証が治療で改善されると、気血津液の流れが、正常化するので、老化していると思われていた生殖器機能や勢いのなかった卵子も、元気を取り戻して、妊娠可能な状態になることがある。

*実証の問題が取り除かれても、腎精や天癸の虚衰による卵巣や卵子の老化の問題等で、妊娠できないのであれば虚証の治療に集中するべきである。

*また、35歳くらいまでの若い人の不妊症のうち、腎精や天癸の虚衰による不妊症の人は、先天的腎精不足や消耗性の慢性病患者に、ほぼ限定されるので、数%程度の比率になる。

若い人の大半の不妊症は、肝気欝結や痰湿証、衝任脈失調証等の実証タイプの治療をすることで妊娠する可能性が高い。実証タイプの不妊症は、詰まりが取れさえすれば問題がなくなるので、1回から5回くらいの短期間の治療で不妊症の治療に成功する可能性がある。

例えば、肝気鬱結を解く治療に的を絞ること、また、生理の周期を整える治療、生理痛の治療がポイントになることが多い。

また検査の結果で、卵管が詰まって不妊症になっているというようなことが判明すれば、その治療に的を絞って治療すればよい。

*全身的冷え性、寒がりは、一般的には、腎陽虚証と考えられるが、老人では、その可能性が高いが、若い世代では、本物の腎陽虚証の人は、数%程度にしかすぎない。

全身的冷え性、寒がりの人は、腎陽虚証ではなく、肝気欝結の程度が酷い人で、気血の流れが酷く詰まり、それで、全身的冷えや寒さを感じるのである。

*このような冷え性タイプの人の脈診は、ほとんど脈状が感じられないくらい沈、渋である。沈脈は、邪気である於血が裏に詰まっているので、正気は邪気の存在する裏に向うので脈も沈む。

渋脈は、於血で脈の拍動がわからなくなるくらい血流が詰まっていることを意味する。

*陽虚証でも、似たような脈状になることがあるが、陽虚証で、脈上がわからないくらい脈が沈んでいるときは、陽虚の極みであり、ご臨終直前の状態である。不妊治療をしようという意気込みのある人に、陽虚の極みの脈が出るというようなことは考えにくい。

*治療は、思い切った強い瀉法で、頑固な肝気欝結の治療をすると、気血が流れ始めて全身が温まってくる。お灸の必要はないし、お灸をすると、気鬱化火になり、酷いのぼせになって裏目になる可能性もある。

なお、脈状も、1回の治療では、それほど、はっきりした変化が見られないが、何回か治療を継続しているうちに、脈状が分かる程度に脈も変化してくる。

*なお、冷えのぼせタイプも、腎陽虚証とは関係がなく、肝気欝結をベースにした肝気上逆、肝火上炎等の実証タイプである。これらの実証タイプの人で、生理痛や生理不順等が正常の範囲を超えている人は、不妊症になりやすい。

*肝気鬱結、肝気上逆、気滞瘀血、痰湿等の実証タイプの治療―大脳線1、脳幹線1中焦、脳幹線1下焦、脳幹線Ⅱ下焦―瀉法

内関から間使へ透刺、太衝から湧泉に透刺、足三里、三陰交、風池―瀉法

*腎精不足、肝腎不足、天癸の衰弱等の虚証タイプの治療―脳幹線Ⅰ中焦―先瀉後補、脳幹線Ⅰ下焦、脳幹線Ⅱ下焦―補法

内関から間使に透刺―瀉法、太谿あるいは復溜、三陰交、足三里―補法(補法の手技の時間は、捻転の補法で約3分から10分間、鍼尖の感覚が虚から実に変わるまで手技を継続すること、また置鍼の必要はない。)

虚実夾雑タイプは先瀉後補にする。

 

34,爪の変形、乾燥肌

*爪は肝との関係が深く、老化や慢性病による体力の衰えにより肝の陰血不足になると、爪は肝の陰、血の滋潤を受けることができなくなり、爪が乾燥したり、ひび割れたり、もろくなって欠けたり、様々な変形を起こすようになる。また、爪や皮膚の色が赤みや艶がなくなる。

*またストレスによる肝気欝結で気滞瘀血が形成されると、気血の流れが詰まって、爪を滋潤できなくなり、これまた、虚実の違いがあるが、似たような症状が出るようになる。さらに於血があるので爪の色や皮膚の色が、やや紫暗色になり艶もなくなる。

*爪の変形の原因には、これ以外にも、爪切りで深爪にすることが原因で巻き爪になる、ハイヒール等の合わない靴が原因で爪が変形することもある。

*日本の冬場の太平洋側の気候は乾燥しやすいので、燥邪による影響から爪のひび割れや変形、乾燥肌になりやすくなる。暖房による人工的乾燥で引き起こされる乾燥は、さらに症状を悪化させる。

燥邪にやられた場合は、爪だけでなく全身的に皮膚がカサカサする乾燥肌になったり、唇がひび割れたり、口渇もする。

燥邪による爪の変形や乾燥肌は冬場の乾燥シーズンに限定され、他の季節には起こらない。

*爪の変形や皮膚のカサツキは、肝気欝結による実証タイプのものが一般的であるが、高齢者や虚弱な人は、虚証タイプの陰虚、あるいは津液不足による内燥で、爪や皮膚が乾燥する。虚の程度がひどくなると、爪や皮膚にとどまらず、全身あらゆるところが、まるで魚の干物のように乾燥してくる。

*陰血不足の虚証タイプの爪、皮膚の治療―大脳線Ⅳ上肢、下肢―瀉法

脳幹線Ⅰ下焦、脳幹線1中焦―補法、

三陰交、あるいは復溜―補法、太衝―平補平瀉

*肝気鬱結等の実証タイプの爪、皮膚の治療―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱの中焦―瀉法、大脳線Ⅳ上肢、下肢―瀉法

内関から間使の透刺、太衝、三陰交―瀉法、 爪の治療には、大敦、変形している爪の指の井穴―瀉法あるいは刺絡を追加する。

*燥邪による爪の変形、乾燥、あるいは乾燥肌の治療―脳幹線Ⅰ上焦―先瀉後補、大脳線Ⅳ上肢、下肢―瀉法、脳幹線下焦―補法

列欠―瀉法、復溜―補法(捻転の補法3~10分間)、肺兪―先瀉後補

*アトピ―性皮膚炎で、冬場、燥邪にやられて皮膚が異常乾燥した場合は、病因病機が異なるので、根本原因である湿熱邪を取ることがポイントになる。(復溜の補法で津液を増やして燥邪を消滅させる治療法は、湿熱邪を増やすことになり症状を悪化させる可能性があるので適当でない。)

アトピ―性皮膚炎による乾燥の治療―曲池、陰陵泉、三陰交、太衝―瀉法、肺兪―先瀉後補

 

35,突発性難聴

*突発性難聴と言われているものの90%以上はストレスが原因である。その他に、大音響によるもの、風邪引きで中耳炎をこじらせたもの、外傷等がある。

難聴、耳鳴り、耳閉感等の共通する症状があれば、病因にかかわりなく、臨床上は、すべて突発性難聴ということになる。

*耳の症状以外にも、頚、肩のこり、片頭痛、のぼせ、めまい、イライラ感、時には落ち込む、不眠、時には眠気、胸苦しさ、心煩、動悸、季肋部痛、肩甲骨間部の痛み、胃腸症状、浮腫み、生理痛等、次から次へといろいろな症状を併発することがある。これらの随伴症状があるものは、ストレスが原因の突発性難聴の特徴である。

*ストレス性のものは、ストレスが軽減すれば症状も軽減する可能性があるので、精神状態やその他の症状が好転すれば、突発性難聴の症状も自然に軽減するか、一時的に消失することが多い。

しかし、客観的なストレスの原因が継続している場合やストレスを受けやすいタイプの人は治療した時は、すっきりすることがあるが、症状が繰り返しぶり返してくる可能性が大である。治療では、病気の根本的原因であるストレスそのものを除去することはできないからである。

そこで、ストレスへの対処法が大切な問題になってくる。あれこれのカウンセリングは時間の無駄になることが多いので、その患者にとって、ストレスに対する的確で実行可能な対処法を見出すことが大切である。

時には、出過ぎたことになるかもしれないが、ストレスの原因そのものの解決法を見出す話をすることが必要な場合もある。

たとえば、嫁姑の関係が最悪状態であるとき、鍼治療で突発性難聴の治療に成功すると思うか。また、お嫁さんと姑さんの双方が、突発性難聴の治療にあなたの治療院に通っていたらどうするか。

*ストレス以外の原因の突発性難聴は器質的なダメージを受けている可能性が高い。症状そのものは、ある程度、軽減することもあるが、根本的な治癒は難しい場合がある。

*老人性の突発性難聴というものはない。もし老人であっても、そうなった場合はストレスが原因でなったと考えればよい。このような場合は、腎虚証は潜在的にあることはまちがいないが、当面の治療は突発性難聴の治療に絞った方がよい。

老人性の難聴の原因は、老化に伴うものであり、腎虚証がもとにあって、徐々に進行して難聴や耳鳴りになるで、突発的に難聴になるものは腎虚証ではない。

*ストレス性の突発性難聴(弁証は肝胆火旺である。ストレスによる肝火が、表裏関係にある胆経にそって耳の周りを巡行している胆経に影響して発症した)

―脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法、天衝から角孫(少陽後線)、大脳線1、肩凝り線―瀉法、

翳風、風池、百会、太衝、外関、丘墟

耳ツボ―内耳、神門、肝、胆、頚椎外側の反応点

*外傷、中耳炎、音響が原因の突発性難聴

頭皮鍼―少陽後線、大脳線1、脳幹線Ⅰ中焦、肩凝り線―瀉法、

耳ツボ―内耳、神門、胆、頚椎外側の反応線

体鍼―翳風、聴宮(得気だけで手技はしない)、外関、丘墟、風市―瀉法

*老人性の耳鳴り難聴(突発性難聴ではない)―弁証は腎精不足または腎陰虚

頭皮鍼―脳幹線下焦―補法、少陽後線、肩凝り線―瀉法

耳ツボ―内耳、腎

体鍼―聴宮(得気のみ)、外関―瀉法、風池(陰虚は瀉法、腎精不足は補法)、復溜(陰虚)あるいは太谿(腎精不足)

 

36,多汗症

多汗症は、いくつかのタイプがあり、それぞれ病因病機も異なる。

素体陽盛の人は、病気とは言えないが、暑がりで汗をかきやすい。このようなタイプは、他に特別な病的症状がなければ多汗症とまではいえない。

*湿熱証―とりわけ、脾胃湿熱証が基にあり、肝胆湿熱証が酷いタイプは、のぼせやすく、頭顔面部を中心に、熱感を伴った全身性の多汗症になりやすい。

健康な人は温度変化により、高温の時は発汗しやすく、低温の時は発汗しない。発汗によって体温の調節をしているのである。

しかし、湿熱証の人は、体内に湿熱邪がたまっているので、普通の人にとっては発汗するほどの高い温度でなくても、少し動いたりすると熱い汗が溢れ出てくる。また、昼夜を問わず発汗しやすい。

*湿熱邪を作り出す飲酒、野菜や魚の生もの、甘いもの、脂っこいもの、激辛を控えるべきである。またストレスでイライラするようなことがあると気鬱火化して多汗症を促進する。

*湿熱邪は、脾胃で作られるので、脾胃の治療を中心に行い、さらに熱化が促進されないように肝の治療を加えるとよい。また、湿熱邪で下焦が詰まって小便のトラブルがあれば、下焦の詰まりを取って湿熱邪を体外に排泄するとよい。

脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦、脳幹線Ⅰ下焦―瀉法。

陰陵泉、豊隆、中脘、中極、太衝―瀉法

*衛気不固(肺気虚)による自汗―全身性の気虚証であり、脾気虚が基にある。気の固摂作用が低下して汗腺の開閉ができなくなると、温度変化にかかわりなく汗が漏れ出るようになる。

自汗は、昼間、目が覚めている時にのみ起こる。

脳幹線1中焦、脳幹線Ⅱ上焦―補法

合谷、足三里―補法

*衛気不固の自汗と同じ症状を呈するが、病因病機が異なる別種類の自汗タイプがある。

お腹がすいて食べ過ぎる、また飲み過ぎる等による痰湿中阻、ストレスによる肝気横逆があると、脾胃の気機の働きが低下するので、脾の昇清作用が低下して肺に栄養が届かなくなる。

中焦は実証であるが、肺は結果的に虚証になる。肺気虚になると、衛気不固の自汗になり、随伴症状として、立ちくらみや、朝眠くて起きられない、疲れやすい、眼瞼下垂等の脾肺の気虚証による低血圧のような症状を伴うことがある。このタイプは、若い女性に見られる。

脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法、

足三里、陰陵泉、太衝―瀉法

*多汗症と言えるかどうかわからないが、陰虚内熱による寝汗は、夜、眠っている時にのみ大量の汗をかくことがある。また暑い季節に、睡眠中に汗ばんでくるといようなものではなく、季節に関わりなく、睡眠中に大量の汗をかいて目が覚める。糖尿病の後期で、陰虚証進行している患者に良くみられる。

脳幹線Ⅰ下焦―補法

復溜―補法(10分間以上)

*多汗症の範疇にはならないが、大量の汗をかくものに「戦汗」がある。これは、外感病で、邪気と正気との激しい戦いのピークに、大量に発汗することをいう。これを境に、病情が快方に向かうケースと、深刻化するケースの岐路に立たされる。病情が悪化した場合は、高熱と発汗によって、気陰両虚になったと診断して、去邪するよりも補法に治療のポイントを移行させるべきである。

脳幹線Ⅰ上焦―先瀉後補、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅰ下焦―補法

合谷―先瀉後補、足三里、復溜あるいは三陰交―補法

 

37,認知症の証型別治療

認知症はアルツハイマー型と血管障害型や、若年性型と老人型等に分類される。このような分類法や各型の特徴等について参考にすることができる。

中医学的分類法や各証型の特徴、さらにその治療法については中医学の体系に沿って行うことになる。

認知症は全て老化現象による腎虚証であるという捉え方は実情にあっていない。生活習慣病の原因と同じく、飲み過ぎ、食べ過ぎ、ストレス、運動不足等によって形成された痰湿、瘀血が主な病因である実証タイプの認知症もかなり一般化している。

40代、50代に発症する若年性型の認知症の大半は、腎虚証タイプではなく、実証タイプである。

長寿社会の現代では、80歳未満の高齢者で、腎虚証の諸症状があまり見られず、また生活習慣病になるような原因を多く抱えている場合は、実証タイプの認知症になる場合が多い。

現代では、高齢者の認知症の最も多いタイプは、高齢による腎虚証もあるが、実証タイプの要素も重なっている虚実夾雑タイプである。

*老化に伴う腎虚証型―理論上は、50歳前後から、全ての人が老人になり、腎虚証があると考えられるが、現代では、平均寿命が大幅に伸びたので、腎虚があっても、腎虚が主な病因である老人型の認知症になる年齢は、70歳代後半になってからその可能性が高まってくる。

*腎虚証型の認知症―腎精不足、腎気虚、腎陰虚、腎陽虚のちがいによって、治療法も異なる。

全ての腎虚証―脳幹線Ⅰ下焦―補法、 大脳線1、小脳線、大脳線Ⅲ-瀉法

腎気虚型、腎精不足型―太谿、懸鐘、腎兪、風池―補法、

腎陽虚型には上記の経穴に、関元の補法と灸を加える。

腎陰虚型―復溜、腎兪―補法、太衝、風池―瀉法

・痰湿、瘀血等の実証型の認知症―大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ―瀉法、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法、

内関から間使に透刺、風池、陰陵泉、豊隆、三陰交、太衝―瀉法

*痰湿証のみで、認知症になる可能性は少ない。しかし食べ過ぎ、飲み過ぎが原因で痰湿証になると、老若男女を問わず、痰湿証に伴う症状(いつもぼんやりして、眠そうで、気力がなくて、反応が鈍い等)が出るが。これは、一般的な痰湿証の症状であるが、高齢者が痰湿証になると、鑑別を間違えて認知症にされてしまうことがある。実際に認知症にされてしまった人もいる。

痰湿証の治療をすれば症状は好転し、認知症に間違われることはなくなる。

*脳血管障害型の認知症で脳梗塞の後遺症による半身麻痺がある場合は、実証型の治療に、大脳線Ⅳの下肢線、上肢線を加える。すると、手足の麻痺に対する治療効果も、はっきりと現れるが、それ以上に、認知症の症状の方が手足の症状よりも先に好転する。また、くも膜下出血に伴って現れた半身麻痺と認知症も、この治療によって良い治療効果が現れる。脳血管障害型の認知症は、1~3回くらいの治療で、手足の麻痺より先に治癒する場合が多い。

*すべてのタイプの認知症に対して、大脳線1、大脳線Ⅲ―瀉法が共通である。

若年性型あるいは、実証型のいずれのタイプの認知症であっても、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法は、痰湿、於血による詰まりを取るために必須である。

すべての老人型、あるいは腎虚証タイプの認知症には、脳幹線Ⅰ下焦―補法が老化に対応する必須の治療線であり、その治療効果は期待に添う結果を出してくれる。

虚実夾雑証には補瀉兼治をすることになる。

頭皮治療法とっては、認知症の治療は得意分野の一つである。

 

38,鬱病の病因病機と治療線と取穴

鬱病は、持続的な強いストレスがあり、さらにアルコール、甘いもの、生もの、油っこいもの等を過度に摂取する習慣があり、この二つの病因が重なると鬱病になる可能性が出てくる。

ストレスによって引き起こされた肝気鬱結による気鬱が肝の子である心に及び、鬱々とした精神状態がもたらされる。

また、飲食不節によって中焦で痰湿が生産されて、それが胃の経別を通じて心に及ぶと、湿の性質を反映して重くて沈んだ精神状態になる。

気鬱と痰湿が、心で結合すると、両方の性質が混ざり合って鬱病固有の精神症状が生まれる。

また肝気鬱結から気鬱化火になり、その火が肝の子である心に移行すると心火になり、その火が痰湿を結合すると痰火となり、躁状態になる。

火が燃え尽きると、躁状態から鬱状態に戻る。このようにして躁鬱を繰り返すことがある。

*治療は気鬱と痰湿を取り除く治療と精神安定のための治療がポイントになる。大脳線Ⅰ、大脳線Ⅱ上焦、大脳線Ⅱ中焦、大脳線Ⅲの上焦、脳幹線Ⅰ中焦、脳幹線Ⅱ中焦―瀉法 (過敏な人には、大脳線Ⅱ上焦、大脳線Ⅱ中焦、脳幹線Ⅱ中焦を省略してもよい)

百会、風池、神門、内関から間使への透刺、陰陵泉、豊隆、太衝、鳩尾から中

脘への透刺(あるいは鳩尾、上脘、中脘への3鍼)―瀉法、

*頭皮鍼による鬱病の治療は著効がみられることがあり、数回の治療で、長年の鬱状態や不眠症から脱却することもある。

頭皮治療法にとって、鬱病の治療は不眠症の治療と共に得意分野の一つである。

*鍼治療の結果、実質的に抗鬱剤や睡眠薬が不必要になっているにもかかわらず、薬をそのまま服用すると、薬が効きすぎて、異常な眠気に襲われる等の薬の副作用が出始めることがある。長年にわたって薬を飲むことが習慣化しているので、止めるのが怖いということや、リバウンドの心配もするので、この件が問題として残ることがあるので、担当医に症状が好転したことを告げ、薬の加減をしてもらった方が良い。

調気手技療法

「調気手技療法」             

       

調気手技療法は、弁証論治に基づいた手技療法である。この調気手技療法は、四診合算による主訴や体質に対する診断をし、弁証に基づいた補瀉手技をすることによって、陰陽五行のバランスを整え、心身の健康を回復させようとするものである。

1.あん摩指圧マッサージとの違い(治療か慰安か)

調気手技療法とあん摩指圧マッサージの違いは、手技療法という意味では同じであるが、医学レベルの治療か、慰安に近いものであるかということである。

具体的には、診断をして各患者の主訴や体質に合わせて、補瀉手技を行う治療法か、診断はほとんど行われず、主訴や体質の違いに関わりなく、手技の圧力の加減を聞く程度で、ほぼ一律に得意とする手技を行うかの違いである。

一般的あん摩指圧マッサージによる実際の治療においては、先ず、患者に、うつ向けに寝るように指示した後、すぐに背面の治療を上から下への順序で始めるのが普通である。

これは、問診、舌診、脈診、経絡診、腹診等による診断を省略しているので、病因、また、病気の性質である虚実、寒熱、また、どこの臓腑に、どの経絡に、どのような問題があるのかよく分からないままに治療することになる。

診断なき治療というものは、医学レベルの常識では考えられない。これは治療ではなく慰安である。

調気手技療法は診断に基づいた医学レベルの治療をするものである。

あん摩指圧マッサージ以外の各種の手技療法も、免許の有無の違いはあるが、診断をほとんどしないという意味では共通していて、手技内容もかなり似かよったものが多い。

また、リラクゼーション、リフレ、オイル、アロマ等の手技は、ほぼ撫でるだけであり、例外はあるが、専ら慰安を目的としたものが多い。

現状では、資格制度があるあん摩指圧マッサージよりも、リラクゼーションに類する店の方が一般化していて、なかには、風俗店との境が分からなくなったものまであり、むしろ、そちらの方が集客力も大きいように思われる。

エステは美容の範疇ではあるが、内容的には相当部分、一般的手技療法に似かよった内容である。

整骨院も、建前は治療ということになっているが、実質的には慰安目的のあん摩指圧マッサージと似かよった手技内容になっているところが多い。また、保険治療ということで、その範囲内での可能な治療法という制約にしばられて、本来的な柔道整復の固有の治療法が十分に発揮できていない。

さらに、鍼灸治療院は手技療法ではないが、傾向的にみると治療院という名称がついているが、治療というよりも実質的には慰安目的の鍼灸院が多い。

これらの業界では、いろいろな名称はついているが、大半は、本格的な医学レベルの治療院ではなく、慰安になっているのが現状である。

ストレス社会においては、治療効果は、ともかくとして、その時だけでも、気持ちよくてリラックスできれば良いという客も一定の割合でいる。

調気手技療法では、このようなリラクゼーションの要望に対しても、慰安で対応するのではなく、治療という立場で対応することになる。

弁証論治に基づいて、寧心安心させる治療をすれば、その場だけのリラクゼーション効果ではなく、さらに持続性のある本格的な医学レベルの治療ができる。

手技そのものも、治神というキーワードが理解できれば、最高レベルの気持ちのよい手技で、リラクゼーション効果をもたらすことができる。

ここでの問題は、客が慰安か治療かの選択をするのは自由であるが、現状では、慰安の選択しかできないことが問題である。客に治療というもう一つの選択肢を提供することが大切なのである。

おそらく、潜在的には、慰安を求める客よりも、信頼性のある医学レベルの手技療法を求めている患者の方が圧倒的に多いはずである。

さらに問題なことは、治療という言葉や名称ではなく、信頼性のある医学的レベルの治療が本当にできるかどうかである。

信頼するに値しない低レベルの治療があまりにも横行しすぎた結果、あん摩指圧マッサージ、鍼灸も含めて、国民から、ほとんど見放されたのではないかと思える。手技療法による治療そのものが崩壊の危機に立たされて、今や、慰安だけが残ってしまったというのが現状である。

調気手技療法の治療科目は、肩こり、腰痛、疲労回復、リラクゼーション等に限定されることなく、内科、精神科、外科、老人科、男性科、産婦人科、五感器科、美容等、ほぼ全科目になる。また従来の手技療法では考えられなかったような難病治療にも対応する。

 

 

 

2.調気手技療法の特徴

弁証に基づいた補瀉手技による治療を行うので、患者の主訴や症状、体質の違い、また病因も異なるので、一人、一人診断も異なり、その治療法も異なってくる。全員同じような治療をするということはありえない。

この補瀉手技は、陰陽五行理論によって成り立っているという意味では、鍼灸の補瀉手技と共通している。

鍼の各種の治療法である体鍼、頭皮鍼、眼鍼、手鍼、耳鍼、特効穴治療等における補瀉手技を、調気手技療法に転用できるように工夫したものなので、鍼治療の効果にほぼ匹敵するような効果を出すことができる。

もちろん、手技療法の特徴から、鍼治療と同じような効果を出せないものもあるが、それ以上の効果を出せるものもある。

脳梗塞で入院している寝たきりの半身麻痺の患者が、調気手技療法による頭皮治療の直後に歩き出すということもある。脳血管障害に伴う半身麻痺の比較的早い段階での治療なら、数回の治療で、70%以上、回復する可能性がある。

脳に障害があって、半身麻痺になっているのだから、手足のリハビリで回復させようとすること自体が発想の段階からして無理がある。脳の側から治療できる調気手技療法は理にかなった治療法であり、その実際的効果も目を見はるもがある。この治療法で半身麻痺が急速に回復するので、車椅子は不要になり、手足のリハビリをする必要性もほとんどなくなる。

調気手技療法は、経絡経穴を中心にして治療をする。経穴の効能やその臨床応用に関する授業が専門学校で行われてないのは不思議なくらいである。薬剤師に、薬の効能についての教育をしないで、薬の販売をさせているようなものである。

経穴の効能について精通し、臨床応用ができるようになる訓練が必要である。

経絡経穴に関するしっかりとした臨床教育が行われていれば、例えば、通常の腰痛や膝の痛みによる歩行困難な患者であっても、治療後に歩行ができるようになるくらいに回復させることができる。

在学中に、本物の患者を治療する実践的訓練の機会がほとんどなく、卒業後も、臨床訓練する制度がないので、国家資格を取得しても、心もとない状況である。

また、リハビリ段階になった骨折の患者は、通常のリハビリを省略して、数回の治療で、仕事ができるようになるくらいに回復させることができる。調気手技療法は、骨折におけるリハビリの革命をもたらすかもしれない。

これまでの手技療法では主として運動器疾患が対象で、内科、精神科、婦人、五感器系科、難病治療等は、ほとんど治療対象外とみなされてきた。

しかし調気手技療法では、臓腑弁証を基礎にした治療体系であるので、これまで対象外とみなされてきた疾患(例えば、眩暈、吐き気、腹痛、動悸、不眠症、鬱病、認知症、骨粗鬆症、橋本病、半身麻痺、冷えのぼせ、生理痛、つわり、緑内障、慢性鼻炎、抗がん剤、インターフェロンの副作用、美容等)が

得意な適応疾患になる。

脳幹線1、脳幹線Ⅱの上焦、中焦、下焦の治療線は臓腑弁証による臓腑の治療もできるが、脳の解剖学上の脳幹の機能そのものに対しても治療効果がある。

たとえば、脳幹線1、Ⅱの中焦の治療線を使うと、肝胆脾胃の臓腑とその経絡、さらに各臓腑と関連する精神、組織、五官器等の治療もできるので、その応用範囲は想像以上に広範囲に及ぶ。

また、中焦を使うと、脾胃の治療ができるので、食欲不振、下痢や便秘、浮腫等の治療と同時に、中気下陥による眩暈や眼瞼下垂の治療もできる。

また、脳幹線1,Ⅱの中焦の治療線を使って治療すると、脳幹の機能の一つである内臓の自律神経の最高中枢に作用し、たとえば、消化器系統の自律神経を調えて、消化器系の広範囲の疾患の治療ができる。

上焦の治療線を使うと、中医学上あるいは現代医学の心や肺の疾患が治療範囲となる。さらに、上焦には中医学上の心が含まれるので、精神科疾患の治療の要として使われることがある。

下焦の治療線を使用すると、二便の失禁、慢性腎不全、インポテンツ、生理痛、不妊症等に対する治療効果が見られ、両医学上の腎、膀胱、生殖器等の疾患が治療範囲になる

髪際の督脈上の大脳線1、大脳線Ⅲは、鼻、喉、目の症状、視力の向上、顔面部の中心線の美容に即効性がある。

また、認知症の予防と治療、精神不安、鬱病、不眠症等の精神科疾患、広い意味で大脳に起因する疾患の方が、一般的疾患よりも治療効果を発揮しやすい。

身近なところでは、頭の使い過ぎによる脳の疲労感が解消される、さらに、意欲、記憶力、思考力、創造力、集中力が高まる、精神的緊張が緩む、本番の試験等であがらなくなる。

これらの変化から言えることは、大脳線1、Ⅱの治療線は、その位置が前頭葉の中心部分にあることからも、前頭葉の機能そのものを活発にさせる作用があると考えられる。

 

3.調気手技療法の補瀉手技

鍼治療における補瀉手技も、調気手技療法における補瀉手技も、陰陽五行理論を基礎にして成立しているということにおいては共通している。

そこで、鍼治療の補瀉手技を、手指を使って行う調気手技療法に応用できるように工夫して、調気手技療法の補瀉手技を考案した。

たとえば、鍼治療では、腰痛は委中で治療すると効果的であるということは誰でも知っているが、手技療法で、委中を、どのように運用するべきか分かっていないので、委中を臨床で使う人はほとんどいない。

調気手技療法では、於血タイプの腰痛に対しては、足首を浮かして膝蓋骨を圧迫しないようにしておいて、委中に補瀉迎随の瀉法と捻転の瀉法を組み合わせた手技を症状の程度に応じて数分間以上、連続して行う。すると、ほとんどの場合、きわめて良い治療効果を出すことができる。局所の腰部を長時間治療するよりも、委中の治療の方が、短時間で、数倍の治療効果があり、効果も持続する。

これは、委中の経穴の効能によるものであり、その効能を引き出すことができる手技の力による。

これまでに習得してきた様々な手技療法の手技を否定するというのではなく、それらの技術を基礎にしながら、また、それらを引き継ぎながら、補瀉手技の理論や方法を上乗せするようにすればよい。

これまでの手技療法は弁証論治による治療法ではなかったので、補瀉手技の必要がなかった。もし、虚実の弁証を間違えて、補瀉手技を施せば、マイナスの治療効果が出る可能性もあるので、弁証と補瀉手技は一体として捉えて治療するべきである。

調気手技療法は、弁証に基づいて、手指を使って経絡に流れている気に対して補瀉手技を行い、陰陽五行の平衡を調える治療法である。

手技療法の手技は、鍼治療のように経穴の一点に手技を施すこともするが、その特徴を生かして経絡を中心に、線あるいは帯状に、あるは経筋病などは、面で治療するという具合に臨機応変に対処してゆくことになる。

経絡の走行や取穴位置から手指が大きく逸れていたり、治療してゆく順序が補瀉迎隨の方向と反対になったりして、その治療効果を発揮できなかったり、マイナス効果になることさえある。

治療後、揉みおこしで痛くなったという話をよく聞くが、ほとんどの場合、診断をしていないことや技術的未熟さで、逆効果になったケースと思われる。

経絡経穴の位置を実践的に訓練して正確に分かるようになる必要がある。経絡に沿って指で撫でてゆくと、経絡は溝状になって走行していることが分かる。

また、経絡の溝を指で撫でていくと、指先に窪みが感じられるところが、ほとんど経穴の(あな)になっている。

経絡経穴の位置は目視でも訓練すると、かなりの程度まで正確に分かるようになってくる。

経絡の幅と経穴の大きさは皮膚面では、数ミリくらいに感じられるが、筋肉層の表面にふれる深さでは、経穴の大きさは1ミリくらいに感じられる。

手技療法においては、骨際とそのすぐ横にある腱や筋との間にできる溝、腱と腱や筋と筋の間にできる溝に経絡が走行しているのを指で感じ取ることができるように練習をするとよい。

また経絡の溝を撫でていると、はっきりとした窪みを感じることができる経穴(例えば、手三里、風池、百会、崑崙)があるので、分かりやすいところから練習をするとよい。

適度の圧力を加えて、溝状になっている経絡の走行に沿って手技をすると、指先に経絡や経穴固有の感覚が伝わってくる。その感覚を逃さないように手技を行う必要がある。

経絡学説を基礎にする手技療法と現代医学を基礎とするマッサージとは原理が異なるので、明確な使い分けをする必要がある。これを混同すると、補瀉迎隨の方向を間違えることになる。リンパマッサージの手技の順序と経絡治療の補瀉迎随の手技の順序とは同じになることも、反対になることもある。

調気手技療法は、現代医学を基礎とした手技療法と違って、筋肉や神経、リンパに対して手技をするのではない。

例えば、ある筋肉の一部が硬くなって痛みがある場合、そこの筋肉を揉み解すというようには考えない。その筋肉を栄養している経絡の流れの詰まりを取ることにポイントをおいて治療する。あるいは、その痛みが、どのような原因によって痛みが出るようになったのかをよく考え、その根本原因に対する治療をおこなう。

今している治療は、どのような原理で治療をしているのかをよく理解した上で、原理的な一貫性をもって治療する必要がある。

手技療法の経験が豊富な人は、圧力の加え方やその強さに関しては経験的に自然に分かっているので上手な人が多い。

経験的に分かっていることが、実際の治療では大切なことではあるが、それらについて原理からよく理解していることも大切である。原理から理解している人は、初心者でも上達するのが早いし、応用も効くことになる。

手技療法における適度な圧力とは、どういうことか。

鍼治療における鍼の刺入の適当な深さは、経絡の中に流れている気に対して、得気が得られる深さということになる。調気手技療法における指の適度な圧力とは、経絡の深さに、ほどよく圧力が加わる強さが適当ということになる。

虚実によって、多少の圧力の加え方に、差が出てしかるべきであるが、臨床上の感覚としては、強すぎることもなく、弱くて物足りないということでもなく、ほどよい強さで、気持ち良くて、効きそうな感じがするのが良い。

手技療法での得気は、手指で経絡の中を流れている気に対して適度の圧力を加えて、その気を効果的に動かせる状態になったことを得気が得られたという。

手指の圧力が強すぎると、得気が得られる深さを突き抜けるので、痛く感じるだけで治療効果もでない。場合によっては、筋肉痛が残るかもしれない。

また、圧力が弱いと、経絡の深さに届かないので、痒いところに手が届いていない感じがしてイラついてくることがある。

得気を得た後、その気の感覚を逃さないように、経穴や経絡に補瀉手技を施して行くことになる。調気手技療法の手技のポイントは、経絡の気を体感しながら、補瀉手技をするということである。

気の感覚が分からないままで、形だけの補瀉手技をすると、痛たかったり、気持ち悪かったりすることもしばしばあり、治療効果も期待できないばかりか、逆効果になることもある。だれでも、一定の訓練をすれば気の感覚が分かるようになるので、難しく考えることはない。

調気手技療法においては、補瀉手技の中心になるものは補瀉迎隨である。さらに、身体の正面の中心線に対して、手指を外回りさせる(瀉法)、あるいは、内回りさせる(補法)かの回転方向の違いによる捻転補瀉法、また、押して気を入れるか(補法)、あるいは、撮んで邪気を引き抜く(瀉法)かによる提挿の補瀉法がある。

臨床では、いくつかの補瀉法を組み合わせた複合の補瀉法(補瀉迎隨と捻転補瀉法)が使用されることが多い。

また、呼吸補瀉法、男女による左右の使い分け等の補瀉法もある。

さらに、双方向性の良性の調節作用をもたらす平補平瀉法がある。

補瀉法の問題とは少し異なるが、運動が速く活発である気に対する手技をする場合は、気の性質に合わせて、小刻みに、速く動かす手技が適している。

また、津液や血に対する手技は、その性質に合わせて、やや大きめで、ゆっくりとした動作が適している。

 

4.調気手技療法の習得の問題点

調気手技療法のうちの有力な治療法である頭皮治療法は、中医学の基礎理論を学んだことがある人なら、治療線と手技のコツを学び、比較的簡単なレベルの弁証能力があれば、だれでも、調気手技療法だけなら、数回の講習会でかなりの程度までできるようになる。その後、弁証能力の向上のための努力と一定の臨床経験を経て、再度、講習を受ければ、相当程度のハイレベルの調気手技療法の治療ができる可能性がある。

調気手技療法による治療家を目指すには、学校教育に上乗せする形で、中医学の基礎理論に基づいた調気手技の実技訓練と、脈診、舌診、問診、経絡診等の診断学、経絡経穴学等の学習をする必要がある。

鍼治療による頭皮鍼をマスターするには、弁証能力を高めることと、鍼の操作の技術や補瀉手技の訓練をする必要がある。

調気手技療法の基礎的なことを理解し、初歩的な基礎訓練を終えた後、臨床指導のもとに、弁証論治による実践的治療を行う必要がある。実践的な治療を通じて基礎理論の深い理解や手技の体得ができるようになり、さらに、臨床能力も高くなる。

鍼治療を通じて弁証論治の治療の流れが分かっている人は、手技の訓練を中心に行ってゆけば、比較的短期間に調気手技療法を習得することができる。

弁証能力に自信がない人は、確かな診断ができない状態で治療することになり、良い治療効果を出すことは難しい。

中医学の基礎理論や診断学、経穴学等の基礎的学習とその臨床応用に関する指導を受ける必要がある。これは大変なことのように思われるかもしれないが、確実に調気手技療法をマスターしてゆく早道である。

この調気手技療法は、これまでの手技療法の様々な伝統的な手技に、いくつかの新しい手技を加えると、そのまま引き継いでゆくことができる。また、これまでの手技療法に弁証論治の治療法を上乗せすればよい。

現在の状況下では、あん摩、指圧、マッサージは、国家資格を有していながら、他の国家資格がない手技療法と競合して劣勢に立たされ、止めどもなく地盤沈下をしている。

この調気手技療法は、あん摩指圧マッサージやその他の手技療法の一部も含めて、慰安の域を脱し切れていないレベルから、医学レベルの治療体系に質的な飛躍を遂げ、患者の治療要求に具体的に答えられるようにすることを目指している。

患者から信頼される治療ができるようになれは、地盤沈下に歯止めがかかるようになる。

 

 

白川式手鍼治療

「白川式手鍼治療」

下後谿、上焦穴、三焦穴、下焦穴、下合谷の手鍼5穴で、ほぼ全身の運動器疾患の治療ができる。

下後谿

*下後谿の位置

・後谿の位置は、手を握ると、第5中手指節関節の尺側にできる横紋の先端であるという説は、厳密にいうと間違いである。横紋の直下は腱になっているので、痛くて刺鍼することはできない。

横紋の先端は目安であって、正確な位置は、横紋の先端の真横で、腱と第5中手指節関節との間にできる溝のなかにある穴である。

臨床上、刺鍼しやすくて臨床効果も後谿と同様である下後谿の位置は、横紋の先端よりも、手関節の方向に約2分くらい寄った位置にあり、第5中手指関節の尺側の骨がコーナーになっているところで、その骨のコーナーと腱の間にできる溝の中にある穴である。

*後谿と3つの経絡との関係

・後継は太陽小腸経であるので、太陽小腸経に対しては、もちろん、同名経の太陽膀胱経に対しても、また八脈交会穴の一つであることから督脈に対しても関係を有する。

・後谿は3つの経絡と関係しているので、同時に3つの経絡と関係する疾患を治療することができる。人体の後部の頭部、頚部、肩背部、腰部、臀部、上肢、下肢にわたる広範囲な治療ができる。

*後谿の効能と臨床応用

・後継は、小腸経の経気の宣通作用があり、小腸経の各種の邪気による詰まりを取り除いてくれる。

・小腸経の五兪穴の体重節痛を主る兪穴なので、小腸経のどの部位であっても、湿邪が停滞して重痛や重だるさがあるときは、この経絡上の去湿ができる。例えば、五十肩で肩貞や天宗付近に重痛や重だるさがあるときは、局所に刺鍼するよりも、去湿作用のある後谿に瀉法をして、運動鍼にすると著効が見られる。

なお、湿邪の程度が広範囲、あるいは重度の場合や慢性化している場合は、全身的な去湿作用がある陰陵泉の瀉法と組み合わせるとよい。

後谿は、小腸経、同名経である太陽膀胱経、督脈上の広範囲の疾患を治療することもできる。具体的には、後頚部の寝違え、ぎっくり腰、委中の付近の痛みや、パソコンのやり過ぎ等による後頚部や肩背部の小腸経、膀胱経、督脈と関係する広範囲の痛みや凝り、また、それが原因で引き起こされる指や上肢の痛みや痺れ等が治療範囲になる。

痛みがあるこれらの部位の局所に取穴するよりも、後谿の運動鍼の方は治療効果が高い。局所に顕著な圧痛点や硬結が残る場合は、後谿の取穴や得気の状態を手直しして再度運動鍼を行うとよい。さらに局所に著しい硬結や反応点があれば局所取穴を追加してもよい。

・また、膀胱経に頑固な湿邪が停滞していて重だるさが残る場合は、後谿と膀胱経の兪穴の束骨とを組み合わせて取穴するとより効果的である。

また、於血の痛みが残る場合は、井穴の至陰に15度角で1分刺入して得気を得た後、瀉法をして置鍼する。抜鍼時に出血するが、アルコール綿でよく拭くとよい。あるいは、活血化於のために郄穴の金門に瀉法をするとよい。

・風寒邪に侵襲されて起こる太陽膀胱経の頭項強痛に対しては、漢方薬では、葛根湯が使われるが、鍼治療では後谿の瀉法がよい。

*督脈の治療範囲と治療

後谿は、督脈が邪気に侵襲されて起こる脊柱の強ばりや痛み、そして、督脈上のすべての病変の治療ができる。

・後谿の治療範囲は、むち打ち、頸椎症、ストレートネック等による頚、肩部の疾患、また脊柱側弯症、猫背、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、すべり症、脊柱官狭窄症等の胸椎、腰椎等の背柱に関係するすべての疾患、それらが原因で上肢や下肢に及ぶ痛みや痺れ、運動制限等は、後谿の治療範囲になる。

・例えば、骨粗鬆症の治療では、後谿は表示法として刺鍼すると激痛を緩和できる。また、骨粗鬆症の弁証は腎虚証になるので、腎陰虚証であれば復溜、懸鐘、腎兪等への10分間くらいの補法が必要である。この配穴と手技で、急性期の激痛もほどほどの程度に治まる。骨粗鬆症の手技療法で、局所への圧力は危険なので控えるべきである。遠隔治療である程度の効果を出すことができる。

・脊柱官狭窄症は、後谿の運動鍼で痛みの症状が緩和される。さらに於血あり、下焦湿熱証もあるので、内関から間使への透刺、三陰交、陰陵泉、中極等を取穴する必要がある。局所取穴は、反応点に行ってもよい。於血や湿熱邪が去邪されても、腎虚が残る場合には、腎虚の治療をする必要がある。

*刺鍼方向、刺鍼の深さ

・刺鍼方向と深さ 刺鍼方向は、直刺にすると刺入後、2分くらいの深さで、骨に鍼尖がひっかかるので、刺入方向は、やや手掌の方向に向け、骨に引っ掛からないように刺入すべきである。

・刺入の深さは、8分くらい刺入したところで、ふんわりと止まる感じがする。その感じが得気の感覚である。気の防御作用によって、鍼の刺入の勢いが押し留められるのである。

・気体である気に触れても、ふんわり止まる感覚がするだけで手答えがないのが当然である。得気を得た瞬間に何か手ごたえがある筈だと思って、さらに深く刺入すると、経絡の気が流れている深さを突き抜けて、得気とは関係ない神経や、腱などをきっかけた得物の感覚になり、痛みを伴ったきつい響きになる。

・得気を得た後、数分間くらい置鍼すると、軽くて滑らかなだけの得気の感覚から、鍼尖に気血が集まってきて、魚でも喰らいついたようなきつくて粘る感じに変化する。そこで瀉法をすると、心地よい感覚を伴った効果的な瀉法の手技になる。

上焦穴

上焦穴は、手の第3指と第4指の中手指節関節の前方の奇穴の八邪穴の窪みから刺入し、中手骨間に、1寸の深さで横刺する。

上焦穴は肩部の肩井、頚部の風池の附近の肩こりに即効性があり、また、10分間ほど、置鍼しておくと、上焦の背部全体あるいは僧帽筋全体の凝りが緩んでくる。

上焦穴は肩こり治療のキーポイントになる。

 三焦穴

三焦穴は、第2指と第3指の中手指節関節の前方の奇穴の八邪穴の窪みから刺入し、第2と第3中手骨が交わるところの奇穴の腰腿点に向けて1寸5分から2寸ほど横刺する。

八風から1寸、横刺すると、頚部の天柱から大杼にかけての膀胱経と風池から下の頚部の胆経のラインの凝りや痛みが緩和する。

さらに、5分横刺すると背部の凝りや痛みが緩和する。

さらに、5分横刺すると、腰部と下肢の胃経、3陰経(腎経、肝経、脾経)の凝りや痛みが緩和する。

 下焦穴

下焦穴は、第4指と第5指の中手指節関節の前方の奇穴の八邪穴の窪みから刺入し、第4と第5中手骨が交わるところの奇穴の腰腿点に向けて、1寸5分から2寸ほど横刺する。

下焦穴は、腰、臀部、下肢の膀胱経と胆経の広範囲な部位に対して治療効果がある。例えば、坐骨神経痛の治療では、坐骨神経に沿っての多数の刺鍼をするよりも、下焦穴、一穴に刺鍼した方が臨床効果が高い。

また、原因に関わりなく、股関節の痛みには効果的である。また、膀胱経、胆経のどの部位の痛みに対しても治療できる。

また、骨折や捻挫の後、気血の流れが悪くなり瘀血が形成され、局所的に正気不足に陥り、邪気に侵襲されやすくなり、膀胱経や胆経が痺症になることが多い。このような骨折、捻挫の後遺症と痺症の治療に、下焦穴は威力を発揮することが、しばしばある。

三焦穴と下焦穴の両穴に刺鍼すると、下肢の全経絡を治療することができる。

ぎっくり腰などの於血腰痛には、これまで一般的に使われてきた腰腿点を取穴してもよい。

 下合谷

下合谷は、第1指と第2指の中手骨が交わるところのすぐ前方にできる窪みで、合谷より3分ほど陽谿に寄った位置である。刺鍼方向は直刺、刺入の深さは約6~8分。

下合谷に刺入すると、胸鎖乳突筋の下方や肩井の前側から缺盆にかけての凝りや痛みが緩和する。

なお、別の治療法として、胸鎖乳突筋は人体の側面になるので、少陽経の治療範囲として捉えて、懸鐘で治療できる。また、肩井附近の凝りや痛みの治療は合谷でできる。また、缺盆や肺経のエリアの肩こりは尺沢が効果的である。

 

 

「解説と注意点」

手鍼は、全て運動鍼にするか、マッサージを併用した方が効果的である。

八邪の穴は手背の皮膚の表面から5ミリほど下方で、中手指節関節の前方の陥凹にある。指を自然に曲げた状態で、八邪穴の陥凹に正確に刺入することが第一のポイントになる。次は中手指節関節の骨に鍼尖を引っかけないように関節の溝を通し、さらに、中手骨間の溝にそって、上下左右に逸れないように横刺しなければいけない。

何かに引っかかっているような感じがしたら、無理に押し込むようなことはしないで、少し鍼を抜いて刺鍼転向した方がよい。するする抵抗なく刺入できるところに刺入すれば、ツボに無痛の状態で命中し効果もよい。

手鍼の刺鍼方向が正確であれば、目標とする治療効果が得られるが、方向が逸れると治療目標が外れることがある。しかし、目標以外の思わぬ治療効果がでることもある。

治療範囲や目標によって、5種類の手鍼穴の使い分けや組み合わせを工夫するとよい。例えば、三焦穴で頸部の治療をするのなら1寸の深さでよい。背部の治療は1寸5分の深さでよい。腰部や下肢の胃経、三陰経の治療をしたい場合は1寸5分から2寸の深さになる。

また、頚部や肩部の凝りや痛みに限定した治療をする場合は、三焦穴の1寸と上焦穴の2穴の組み合わせ、さらに、症状に応じて、下合谷、後谿を組み合わせて治療すると、効果的な肩こりの治療ができる。

手鍼は邪気で詰まった凝りや痛みを取る治療法なので、手技は瀉法になるが、手技には拘らず、適度な強さの平補平瀉法でもよい。また神経に触れて電撃様の強刺激になることがある。その場合は、不快な感じがしやすいが、即効性が出ることがある。

手鍼は簡単な治療法で広範囲で、しかも高い治療効果を出しやすい治療法であるが満点の治療法ではないので、他の治療法である耳針、頭皮鍼、体鍼の弁証取穴、局所取穴等を組み合わせて治療しても問題ない。さらに、運動鍼や手技療法を加えた方がよい。

手鍼は頚部、肩背部、腰部、臀部、下肢、上肢等のほぼ全身の運動器疾患を包括的に治療できる。

また、眼、鼻、耳等の感覚器や一部の臓腑にも副産物的に良好な治療効果が出ることがある。この領域での治療法は、まだ不確定なところが多く、これからの課題である。

 

名称未設定-2 名称未設定-1

 

白川式頭皮鍼(大脳、脳幹、小脳、脊柱の治療)

「白川式頭皮鍼」

(大脳、脳幹、小脳、脊柱の治療)

この頭皮治療法は頭皮への鍼治療あるいは調気手技療法により、脳の病変に起因する病気、さらに身体の広範な一般的病気に対しても治療できる。

 

「頭皮治療法の治療線の位置とその効能」

A脳幹線

*脳幹線Ⅰ                       

*脳幹線Ⅰの位置は、頭部の百会より前側を陰、後側を陽に分けて、頭部の陰の側である百会から神庭までの督脈上の治療線であり、下焦、中焦、上焦に3等分される。

*心は君主の官であり、精神の舍るところであり、心の生理作用は、精神活動や全身に対する司令塔としての脳が有する機能に重ね合わせて捉えることができる。

脳幹の生命維持の最高中枢としての機能は、上中下焦の各臓腑を統括、指揮する君主の地位にある心の生理作用に相当する。

臓腑の治療は、脳幹線Ⅰと脳幹線Ⅱの上焦、中焦、下焦で行い、精神面の治療は、大脳線Ⅰ、Ⅱ、Ⅲで、運動面の治療は大脳線Ⅳ(上肢線、下肢線)と小脳線で行うことができる。

これは、大まかな区分であって、実際の治療では、各治療線が入りくんでいたり、相互に影響し合っていることを考慮して治療線を選ぶ必要がある。

*脳幹線Ⅰ、Ⅱによる治療は、脳幹の自律神経の最高中枢としての機能、さらに内臓、血圧、呼吸、循環器等の制御作用や体温調節、ホルモン分泌、睡眠等に対する広範な治療効果が期待される。

 

*脳幹線Ⅱ

*前額部髪際の上方5分の眉衝(督脈と頭の臨泣のほぼ中間)から下方に1寸の線―上焦

*前額部髪際の上方5分の頭の臨泣(瞳の直上であるが、督脈から3㎝~3,5㎝外方)から下方に1寸の線―中焦

*前額部髪際の上方5分の頭維から数ミリ督脈よりの位置から、下方に向かって溝状になっている長さ1寸の線―下焦

*脳幹線Ⅱの上焦、中焦、下焦は、脳幹線Ⅰの上焦、中焦、下焦と、ほぼ同様の治療効果がある。治療効果を高めるために脳幹線1と脳幹線Ⅱを同時に使用することもできる。

脳幹線1は、急性病、慢性病のいずれにも対応できる。脳幹線Ⅱは急性期の治療に効果を発揮しやすい。脳幹線Ⅰ、Ⅱは、急性で重篤な疾患の場合、その効果を目に見える形で発揮しやすい。

また、脳幹線Ⅱは、臓腑の治療にとどまらず、臓腑病が経絡上に、反応として手足に痛みが出てきたような場合は、優れた治療効果を発揮しやすい。

例えば、左足の外膝眼の痛みや足三里付近の突っ張りが常にあって、しかも、胃痛が慢性的にあるような場合、運動器疾患の膝関節痛として捉えるよりも、臓腑弁証を優先して、大脳線Ⅳの下肢線よりも、右側の脳幹線Ⅱ中焦で治療した方が良い治療効果を出せる。

 

B大脳線

*大脳線Ⅰ―督脈上の神庭から髪際の約1寸下方にある小さな窪みがあるところまでの長さ約1寸5分の督脈上の線。

*この額にある窪みの経穴名を「閃光」と命名する。この閃光穴に針尖が届いて得気が得られた瞬間に、光りが放射線状に放たれる感じがすることがあるので閃光と命名した。

督脈上の人中、印堂、神庭、百会等は脳の働きや精神状態に作用し、それぞれの特徴があるが、閃光穴は清脳開竅あるいは精神状態の改善において、最高級の効果を発揮するのではないかと思われる。

*大脳線Ⅰの治療を始めると、先ず目に変化が現れ、明るく感じられるようになり視力がアップする。脳の前頭葉付近の活動にまるでスイッチが入ったような感じがしてくる。さらに脳全体がリラックスしクリアーな状態になってくる。

顔の表情が穏やかになり、垂れ下がっていた瞼が開いて目が大きく見えるようになる。顔全体の弛みがなくなり、美白になる。

*大脳線Ⅰの治療効果は、脳の覚醒、精神安定、記憶力や思考能力の向上、意欲の向上、大脳の疲労回復、不眠症、鬱病、認知症等の精神面の治療と、視力の向上や、顔面と胸の中心付近の鼻、咽喉、胸部の身体上の症状の治療、さらに、それらの部位の美容効果がある。

 

*大脳線Ⅱ―百会から神庭までの督脈に平行する5分外方の溝状の線。

督脈上の脳幹線1と、その数ミリ外方付近にできる溝状で圧痛がある反応線は、臓腑の治療ができる。

大脳線1に平行する5分外方の大脳線Ⅱの上焦、中焦、下焦は、臓腑の治療もできるが、それよりも各臓腑と関連する精神面の治療に適している。

*督脈の1寸5分外方で臓腑の名称がついている背部兪穴は臓腑の治療ができ、3寸外方に精神と関係する名称がついている経穴が連なっているが、それらの経穴は各臓腑と関係する精神面の治療に適している。

脳幹線Ⅰと大脳線Ⅱの関係は、背部の督脈の外方1寸5分にある兪穴と3寸外方にある精神と関係する名称がついている経穴との関係に似ている。

 

*大脳線Ⅲ

*大脳線Ⅰより約5分外方で、髪際から上方に向かう長さ5分の線(脳幹線Ⅱの上焦の上半分に相当する)と、大脳線Ⅱの上焦の下半分を合わせた長さ約1寸の線。

*大脳線Ⅲは、大脳線Ⅱ上焦の下半分と脳幹線Ⅱの上焦の上半分(髪際より上方部分)が重なる部分からなりたっているので、大脳線Ⅲ固有の治療線というものはない。

また大脳線Ⅲは督脈の外方約5分であるが、臨床上は、5分外方付近にできる溝状の反応線ということになる。

*大脳線Ⅲは、大脳線Ⅱの上焦と脳幹線Ⅱの上焦の治療線の連続線上にある。このことからもわかるように大脳線Ⅲは上焦にある心の生理作用と関係する精神安定、心理的安定、不眠、記憶力の向上、大脳の疲労回復、創造性の向上、意欲の向上、鬱病、認知症、顔面の表情の好転等に対する治療に効果を発揮する。

大脳線Ⅲ(Ⅰ寸)と脳幹線Ⅱの上焦の髪際より下半分(5分)を合わせて、約1寸5分透刺する治療をすると、心の生理作用である精神面と身体面の両面にわたる疾患に効果的な治療ができる。

*さらに、大脳線Ⅲは膀胱経でもあるので、晴明や天柱にも繋がっているので視力の向上、膀胱経の頚部の凝りや痛み等に対しても効果がある。

*大脳線Ⅰと大脳線Ⅲに刺鍼すると、大脳そのものの存在が意識されるようになることがある。そのような感覚が出たときは大脳の活動に良好な作用が及び著効が期待される。

*精神科疾患の治療には、大脳線Ⅰと大脳線Ⅲを同時に治療すると、期待した治療結果が現れることが多い。

また、肝気欝結でイライラしている、あるいは、鬱々として落ち込んでいるような場合は、さらに、脳幹線Ⅰ中焦(肝)や大脳線Ⅱの中焦(肝)を追加するとよい。

 

*大脳線Ⅳ

大脳線Ⅳの下肢線の位置は、前頂から頭維までの溝状になっている線を3等分して、前頂より3分の1の線である。

顔面線は前頂から頭維までの線で、頭維より3分の1の線である。

上肢線は顖会から頭維までの溝状の線で、その中間部分の3分のⅠの線である。

*大脳線Ⅳは、下肢線、上肢線、顔面線で、下肢、上肢、顔面の運動麻痺、感覚麻痺、痛み痺れの治療をすることができる。とくに脳梗塞による半身麻痺には著効がみられる。

大脳線Ⅳは、脳血管障害の脳梗塞等による半身麻痺の治療に著効があるが、通常の運動器疾患でも、部位や範囲に関わりなく、上肢、下肢を丸ごと治療できる。

*上肢、下肢、顔面の治療に関しては、ここで紹介している大脳線Ⅳの位置と異なる「頭鍼療法の国際標準化方案」の大脳の運動野と感覚野に位置する運動区、感覚区の治療区を参照してもよい。また朱氏頭皮鍼の治療帯を参照して治療してもよい。

*病歴の短いものは著効が出やすいが、病歴の長いものは、治療効果が低下する傾向があるので、頭皮鍼と体鍼とのコンビネーションによる治療でカバーするとよい。

*脳血管障害による半身麻痺の治療で、大脳線Ⅳの下肢線、上肢線を使って治療を始めると、脳血管障害に伴う認知症がある場合、手足の治療効果が出る前に、ぼんやりとしていた眼に輝きがみられるようになり、話す内容もしっかりしてきて、認知症が消え去ることがある。

*脳梗塞で倒れて、急性期が過ぎて、半身麻痺状態での寝たきりになっている患者の頭の健側の大脳線Ⅳの上肢線、下肢線、顔面線の位置付近を見ると、その付近が少し陥没し高範囲に凹んでいることがある。また手で撫でると、さらに、そのような状態がよくわかる。

その広範囲な凹んだ部位を指で適度な圧をかけて、10分間くらい、撫でていると、言語障害も、徐々に話が通じる程度に回復し、手を貸してあげれば自分の足でトイレまで歩いて行けるようになるくらい急速に回復することがある。

鍼治療にこだわる必要がなく、手技療法でも、十分対応が可能である。

脳梗塞の場合、治療の開始時期は、発作直後の様態が安定すれば、治療の開始時期が早ければ早いほど治療効果が良い。この時期は、リハビリを開始する以前の段階であり、寝たきりの状態でもあるので、治療方法としては手技療法の方が適当である。

脳出血の場合は、様態が十分に安定したことを確認した後、、慎重に治療を開始した方が良い。脳出血の場合も、同様の治療効果が期待できる。

 

C小脳線

*小脳線は、大脳線Ⅱの上焦の上半分の線と重なっている。

*小脳線の治療をすると、平衡感覚の改善等が治療直後にみられることがある。

*小脳の機能である姿勢の維持、協調動作、運動の学習能力、筋の緊張の調節、大脳で思考したことをコピーして記憶し保存する記憶能力等の治療効果が期待できる。

*協調動作は腎の作強の官に相当するが、老化で腎虚証が進行すると協調動作が上手くゆかなくなったり動作がスローモーションになるが、これは小脳の老化現象によると考えられる。

老化に伴う下肢の頼りなさや、運動の学習能力の低下や、記憶の保存能力の低下等は、老化による腎虚証の進行に伴って顕著になるが、これらも小脳の老化現象と関係していると考えられる。

老化現象に伴うこのような小脳の機能低下の症状には、小脳線(瀉法)と脳幹線Ⅰ下焦(腎の補法)を組み合わせて治療するとよい。

これまで、認知症といえば、主に大脳の老化の問題が取り上げられてきたが、今後は、小脳の老化の問題にも注目し、その治療法の開発に力を注ぐべきである。

*小脳の治療に関しては、この小脳線の治療位置とは異なり、後頭部に位置する解剖学的小脳の位置にある頭鍼療法の国際標準化方案の平衡区を参照にすることができる。

 

D脊柱線

*脊柱線は、頭部の陽の側である百会から外後頭隆起までの線である。

人体の陽の側の督脈、膀胱経の病変の治療ができる。

*脊柱線を5等分し、上から5分の1は頚椎、その下の5分の1は胸椎上焦、その下の5分の1は胸椎中焦、その下の5分の1は腰椎、その下の5分の1は仙骨部になり、腰椎と仙骨を合わせて下焦になる。

*督脈上の病変の治療は督脈上の脊柱線で行い、膀胱経のⅠ行線、2行線は、病変部位の反対側の1分~5分外方で、相応する部位の反応線で治療する。

なお、背部の膀胱経は臓腑の反応が出やすいので、そのような場合は、臓腑弁証に基づいて相応する臓腑の治療線と組み合わせて治療する必要がある。

*百会より前側の陰(大脳線Ⅰ、脳幹線Ⅰの上焦、中焦、下焦)と百会より後側の陽(脊柱線の頸椎、上焦、中焦、下焦)のそれぞれをセットにして治療すると治療効果が高まることがある。

例えば、背中の肝兪付近に痛みがあり、肝気鬱結証による眼の症状や季肋部痛がある場合の治療は、脳幹線Ⅰと脳幹線Ⅱの中焦と脊柱線の胸椎(中焦)の外方2~3ミリ付近の反応線を組み合わせて治療すると臨床効果がよい。

腎虚腰痛で、腎虚証に伴う症状と腰の虚痛や頼りなさやふらつきがあれば、脊柱線の腰椎に瀉法をするのではなく、脳幹線Ⅰの下焦とともに、それぞれに、腎虚の程度に応じて3分から10分間の補法をするとよい。また置鍼する必要はない。

 

E少陽線

*少陽前線頭維から和膠までの溝状になっている斜めの線で、その中心付近の約3分の1の長さに相当する頷厭から懸釐までの線が少陽前線である。

片頭痛、顔面麻痺、三叉神経痛、顎関節症、口腔内疾患や顔面部の広範囲の前面と側面の患側の治療と美容に使用する。顔面の半分に対する美容上の効果(美白とリフトアップ効果、浮腫、ほうれい線、眼瞼下垂)が大きい。

少陽線による治療は病位の同側で治療する。

*少陽後線天衝から角孫までの溝状になっている線―耳鳴り、耳閉感、難聴、偏頭痛、のぼせ。同側で治療する。

 

F肩凝り線

肩凝り線は、百会から約45度斜め後方の絡却までの約1寸の線―風池、完骨附近の頚部の痛みや凝り、三焦経、胆経の肩こり、肩関節痛、眼病

頚部や肩のこりが広範囲であれば、肩凝り線に平行して強い反応線が出ていることがあるので、そこも追加治療した方がよい。

 

G股関節線

股関節線は、百会から約45度斜め前方の通天までの溝状になっている治療線―股関節痛や臀部の側面の痛み、鼠蹊部の痛み、坐骨神経痛によい。

「解説と注意点」

 

頭を陰陽に区分して、百会より前側の陰(大脳線Ⅰ、脳幹線Ⅰ)と百会より後側の陽(脊柱線)のすべての治療線に刺鍼すると、経絡的には、陰経を統括する任脈と陽経を統括する督脈の治療をするのとほぼ同様なことになる。

このことは、任脈と督脈の経絡上の特徴から、12経絡に作用し、全臓腑(上焦、中焦、下焦)あるいは全身に治療効果もたらすことができる。

小周天と似た効果があり、体感的にも、ほぼ共通した感覚がある。

実際の臓腑弁証に基づいた治療では、脊柱線にも治療した方が効果的であるが、大脳線Ⅰと脳幹線Ⅰ上焦、中焦、下焦の方が治療のポイントになるので、脊柱の側に症状がなければ、脊柱線を省略しても構わない。

脳幹線Ⅰの上焦には心が含まれているので上焦はとりわけ重要である。上焦に刺鍼すると、上焦が温かくなり、すっきりした感じになる。また、他のどの治療線にもみられない感覚として、一瞬ではあるが、全身に、何かを感じることがある。これは心の君主の官つまり全身の司令塔としての役割と関係があるのかもしれない。

さらに、上焦には、肺が含まれているので、肺と皮毛との関係があることから、一瞬ではあるが、鳥肌が立つことがある。

また中焦に刺鍼すると、脾胃や肝胆の中焦全体が温かくなってくるとか、お腹がすっきりしてくる等の何らかの感覚を覚えることがある。

下焦に刺鍼すると、膀胱の存在が自覚されるとか、下焦全体が温かくなるとかの何らかの感覚を覚えることがある。

頭皮治療法では、百会より前面の陰の治療線の刺鍼方向あるいは手技の順序は、すべて頭頂から額の方向に向ける。百会より後面の陽の治療線の刺鍼方向あるいは手技の順序は頭頂から頚部に向ける。

刺鍼位置あるいは手技をする位置は、身体の病変部位の対側で治療する。少陽前線、少陽後線は同側で治療する。

例えば、乳房は2つあるので、いずれかの1つだけが病気になることもある。その場合は、乳房は上焦に位置するので、脳幹線1の督脈上にある上焦の部位より数ミリ外方(患側の反対側)に、やや深くて、ぼこぼこしているような溝状の圧痛を伴った反応線が出現することがある。そこが治療線となる。また脳幹線Ⅱの上焦(患側の反対側)に反応があれば、併用して治療するとよい。

また手技療法の場合は、治療線中の反応点に対して重点的に手技をすることになる。

正規の治療線のすぐ近くに、治療線のような溝があっても、反応がはっきりしない、あるいは、刺鍼した時、何かを引っかけて痛くて入りにくいような場合は、紛らわしい溝であって、正規の治療線でも、反応線でもない。

例えば、胃痛の治療で、任脈上の痛みであれば、督脈上の脳幹線1中焦を選ぶ。任脈の2寸外方の胃経に沿って痛みがあれば、脳幹線Ⅰの督脈上の中焦の位置より外方数ミリの反応線(患側の反対側)を見つけて治療するとよい。反応線と同時に中焦も治療してもよい。

すべての治療線は1ミリ~2ミリの狭い溝状になっている。鍼治療はその溝の底部に位置する狭い線から逸れないように注意深く横刺すべきである。上手に刺入できたときは、滑らかで抵抗感はなく、痛みもなく、するすると刺入できる。

鍼の刺入が溝の底の線から逸れると、痛みや締め付けられるような嫌な感覚がする。そのような感覚が出た場合は、溝から針先が逸れて何かを引っかけていることになる。

鍼の刺入角度は15度から20度で、頭皮と頭骨の間にある薄い筋肉層に刺入する。刺入角度が適当でなければ、頭皮を突き抜けたり、骨をひっかけたりすることになる。

そのような感覚が出た場合は、無理に鍼を押し込むようなことをしないで、少し鍼を抜いて刺鍼転向を何度でも行いながら、スムースに抵抗なく刺入できるところを探りながら進鍼するとよい。針先に抵抗感が出てきて、スムースに刺入しずらくなっても、鍼を捻転して滑らかな感じがあれば、力強く刺入しても問題ない。

どうしても、痛くて刺入できないような場合は、数分間、置鍼しておくと、鍼が馴染んできて刺入しやすくなることがある。

それでも上手くゆかない時は、抜鍼して正確な位置を再度確認し、やり直した方が良い。

正確な位置に刺鍼できていない場合は、治療線から逸れると痛いだけでなく治療効果も著しく低下する。

鍼のサイズは、直径0.25mm、長さ30mmが使いやすいが、状態によって、直径0.30あるいは0.22あるいは0.20に変えてもよい。長さは40mmまたは25mmでもかまわない。

調気手技療法では、指の先端部分か爪を使うことになるが、適当な道具(玉石、水牛の角等を加工したもの)があれば、その道具を使って溝状の治療線や反応点を治療しても良い。

頭皮鍼の手技は雀啄補瀉法が効果的である。この手技は、得気を取って、気の感覚を逃さないように、小刻みに比較的速い提挿を行う。

瀉法は、提の方にアクセントがあり、速く力強く引き上げる。挿の方は元の位置に戻すという動作なので比較的ゆっくり力を抜いて行う。補法は、反対の要領で行う。

瀉法は、得気を取った後、数分間置鍼していると、鍼の周りに気血が集中してきて、重たいとか締め付けられるような感じに変化してくる。気血が集まってから瀉法をすると、気血に対して大きく作用しやすくなるので瀉法の効果が高まる。

手技の時間は、実(邪気)の程度に応じて、30秒から2分間くらい行い、置鍼時間中に手技を数回行ってもよい。

また、置鍼時間は、通常、30分程度であるが、置鍼の作用は緩やかな疎通経絡、止痛作用であるので、そのような必要性が高い場合は、さらに数時間置鍼してもかまわない。

鍼の補法は、気血が不足しているので、置鍼していても、気血は集まってこない。それで置鍼する必要がないので、刺鍼後、すぐに手技を開始するとよい。虚(気血津液の不足)の程度に応じて3~10分間連続して気血が満ちて来るまで補法の手技を行うとよい。その後は瀉法のように疎通経絡の必要がないので、置鍼することなく、すみやかに抜鍼すればよい。

調気手技療法で行う頭皮への補瀉手技は平補平瀉法で行う。具体的な動作は、溝状の治療線に沿って上下に、あるいは左右に均等に揺するように動かす。

このような手技によって虚実の過不足が平均化され、バランスを回復するようになる。

平補平瀉法の手技は、良性の双方向性の調節作用、つまり、自己治癒能力を効果的に引き出してくれる手技である。

しかし、虚実のバランスが大きく崩れているときは、平補平瀉法の効力には限界もあるので、身体の経絡経穴を使って補瀉手技を併用した方が良い。

調気手技療法も、鍼治療と同様に得気を取って補瀉手技を行う。手技における得気は、治療線に沿って走行している経絡の中を流れている気に対して、最も効果的に作用しやすいような適度な圧力を加えることである。

このような適度の圧力による得気の感じ方は、痛みが多少あっても気持ち良い感じがして、何か効きそうという感じがするものである。補瀉手技は、得気を得た状態で、気を逃さないように行うとよい。

頭皮による治療だけでも、十分な治療効果を出せる場合が多いが、身体の経絡経穴を使う治療や耳ツボ治療、手鍼治療等と組み合わせて治療すると、さらに良い効果を発揮する。

頭皮による治療は、元々、脳の解剖学を基礎にして開発された治療法という経緯がある。そういう事情から、治療線の選定には、一定程度、現代医学の知識にしたがって行うことができる。また、弁証に基づいて治療線の選定をすることもできる。両面から総合的判断をして治療するとよい。

現時点では白川式頭皮鍼は、治療法の骨格ができた段階であり、開発途上の治療法である。

白川式頭皮鍼は、病気に関する新しい治療法の確立を目指すと同時に、さらに、人間の潜在的知的能力や身体的能力を開発し、限界を超えることを目指すことにある。

また老化の予防法や老化に伴う病気の治療法の確立を行うとともに、さらに、若返りのための治療法を目指すことにある。

80歳の老人であっても、老化現象で薄くなった髪が、見た目にも、はっきり蘇ってきたと感じられる程度に変化することもある。

また老化に伴って、著しく忘れっぽくなっていたのが、若かった頃に戻ったとまではいかないまでも、自分自身で、納得できる程度に記憶力が回復する。

老化と関係なく、記憶力のよくない人でも、かなりの程度よくなる。

また脳の状態がクリアーになって、頭の回転がレベルアップしたように感じるようになる。

また感情の極端な起伏がなくなり精神安定する。

また、身体の柔軟性や運動能力の向上、さらに身体的運動の学習能力が向上し、運動の練習効果が高まる。

治療の過程で、このようなことが、しばしばみられるが、どの程度、安定的な効果が得られるかは、今後の研究課題である。

頭皮治療法による美容のための治療では、顔面や身体の局所に対する治療はほとんど必要がない。頭皮治療法で弁証論治に基づいた本治法を行うので、全身的な健康を回復させると同時に、全身的な美容効果を生じさせることができる。

顔のくすみや、クマをとるために、あるいは、ほうれい線を取るためやリフトアップのために、顔面に刺鍼するとか、またウエストの肥満解消のために腹部に刺鍼してパルスをかける必要性はない。そのような表示法による治療効果は、1日か2日であり、すぐに元に戻ってしまう。

臓腑弁証に基づいて、全身的な去湿、活血化於の治療(脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦、大脳線1、または体鍼による間使、三陰交、太衝、陰陵泉、豊隆、風池)をすれば、湿邪による全身の弛みや浮腫、気滞、於血による皮膚のクスミやカサツキが取れて全身な健康と美容に良好な結果が出る。

例えば、慢性的に脾胃に気滞や湿邪が停滞して腹部が膨満してウエストのサイズが大きくなっていたとすると、治療直後に、5㎝くらいウエストが細くなり、さらに、ふくろはぎのあたりも2㎝くらい細くなることも、しばしばみられる。

痰湿や於血が全身から取り除かれるということは、顔面の美容に限定されることなく、全身の美容効果をもたらす。

頭皮治療を中心にして、弁証論治による治療をすれば、局所取穴の必要性がほとんどなくなり、健康の回復と同時に、顔面を含めて全身的美容効果が現れる。

図

図2