湿熱証

1インポテンツ、前立腺、頻尿、慢性腎炎
2慢性的疲労感、禿げ、アルコール中毒

3花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性の喘息、慢性鼻炎とアレルギー体質

4帯状疱疹、頭重、梅雨や台風の影響による全身的重だるさ

5脊柱官狭窄症、足腰の重だるさと熱感

6黄斑変性、飛蚊症、目やに

1~6の疾患や症状は、一見、関連性がなさそうに見えるが、全てが、中医学でいう「湿熱証」である。

湿熱証の病因の第一は、湿熱の原料である酒の飲み過ぎである。また湿邪の原料となる甘いもの、脂っこいもの、生もの等のとり過ぎもよくない。湿熱証の治療に不可欠なことは、過度の飲酒や食事内容に気をつけることである。

湿熱証の共通穴は陰陵泉であり、さらに症状や病の程度により、内庭、足三里、豊隆、中脘、中極、各経絡の五兪穴の体重節痛を主る兪穴等を必要に応じて追加取穴する。

 

症例1インポテンツ、前立腺肥大、頻尿、慢性腎炎

上記の4つの病気や症状の病因と治療法は、ほとんど同じである。

弁証は、半世紀ほど前までの食量難で栄養不良の時代には、腎陽虚証が一般的であったが、飲み過ぎ、食べ過ぎの現代では、弁証は下焦湿熱証が一般的である

下焦湿熱証の取穴は、陰陵泉、中極、次膠、さらに中脘、水分、足三里を追加取穴しても良い。

手技は、程度に応じて、30秒~2分間の手技を30分間に2~3回の瀉法を行う。

治療効果は、インポテンツでは、即効性が見られることが多く、飲酒、食事に気を付けて、週に2~3回の治療を数週間続けると治癒する可能性が大である。

慢性腎炎の弁証は腎陽虚証、脾気虚、下焦湿熱証があるが、現代では、圧倒的に下焦湿熱証が多い。慢性腎炎の治療では、腎炎そのものが、にわかに治癒するわけはないが、腎炎に伴う諸症状は、驚くほど改善することがある。透析を始める直前の段階まできている場合は厳しいが、その前の段階であれば、腎炎そのものも改善されてゆく可能性もあり、透析をしなくて鍼治療でコントロールできる場合がある。

 

症例2 慢性的疲労感、やる気が出ない、眠たい、頭重、まぶたが垂れ下がる

慢性的疲労感は気虚証によるものと考えられてきたが、飲み過ぎ、食べ過ぎの現代では、湿熱証の実証タイプの方がはるかに多い。このタイプの症状は、酒を飲み過ぎて全身的に、けだるい感じがして何もしたくないという状態に似ている。このタイプの人は、ゴロゴロして休んでいても症状は好転しない。むしろ適度の運動をして汗を出すなどして発散させた方が楽になる。

湿熱証タイプに対する取穴は陰陵泉、足三里、豊隆、中脘、頭維、四紳聡

 

症例3禿げ

禿げのタイプは、老化現象である腎虚証、中気下陥(脾の昇清作用の低下)、気血不足、肝欝気滞瘀血(瘀血証)、肝胆湿熱証がある。

老化現象の腎虚証による禿げは、男女を問わず、老化に伴うものであるので、病的禿げとは言えないが、腎虚証の治療すれば進行を遅らせることができる。さらに細くなり弱々しそうになった髪の質が一本一本しっかりしてくるので、髪の本数が増えなくても、禿げが目立たなくなる。

円形脱毛症はストレスによる肝欝気滞瘀血タイプであり、良く見かけられる。肝欝と局所の治療をすることで、良好な結果が出る。

中気下陥、気血不足による禿げは、頭部に栄養が届かず禿げるタイプである。気血を補い、頭部に栄養が届くようにすれば、やがて髪が生えてくる。

現代で、もっとも多い禿げのタイプは、肝胆湿熱証である。この証は、頭部が熱くて汗が多い。比喩的な表現をすれば、お湯で毛根が蒸されて髪が抜けるということになる。

湿熱の原料であるアルコール等を控えること、ストレスの発散解消をすることが養生法のポイントになる。

肝胆湿熱証の取穴は、陰陵泉、足三里、中脘、太衝、期門、丘墟、風池、百会、頭維、四紳聡 肝胆湿熱証そのものが好転してきたら、禿げの方も好転し始める。

 

症例4花粉症

アレルギー体質による花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性の喘息、アレルギー性の慢性鼻炎に共通するものは湿熱証と衛気不固である。

花粉症で、鼻から出てくる大量の生温かい鼻水は、脾胃で作られ、肺に貯まっていた湿熱邪である。

涙は脾から肝に移行した湿熱邪が眼から溢れ出てきたものである。

湿熱証タイプの人は、脾胃で作られた湿熱邪により脾の昇清作用が阻まれる湿熱中阻になる。その結果、肺に栄養が届かなくなり、肺気不足、衛気不固になる。

衛気不固タイプの人は、自動車の排気ガス等がくっ付いた花粉や黄砂等の外邪に侵襲されやすく花粉症を発症する。このような湿熱証と衛気不固がない人は、外邪に対する防御作用が働いているので花粉症にはならない。

治療はアルコールを始めとして湿熱邪の原料となるような食物を控えることが養生法のポイントである。

花粉症の鍼治療は、脾胃湿熱証に対しては陰陵泉、豊隆、さらに、足三里、内庭、中脘、水分、中極を必要に応じて追加取穴する。

鼻水には、標示法として上星と列缺の瀉法、肺兪の先瀉後補。 涙には、太衝、風池

鼻水鼻ずまり。

涙の治療は即効性があるが、病院の薬を服用していると、鼻づまりの治療に対しては無効の場合がある。

花粉症はアレルギー体質が元にあるので、アレルギー体質が改善されない限り、簡単に治癒することはない。

しかし、アレルギー体質は湿熱証と衛気不固であるので、鍼治療で、湿熱証と衛気不固が改善されると、花粉症も臨床的治癒する。現代医学では、一度、花粉症になれば、花粉症は治癒することはないということになっているが、鍼治療で、臨床的治癒は可能である。

 

症例5アトピー性皮膚炎

花粉症は、湿熱邪が鼻水、涙として溢れ出てくるが、アトピー性皮膚炎は、湿熱邪が皮下に貯まる。

また衛気不固もあるので、乾燥した冬季は風邪に先導された燥邪に侵襲され、皮膚表面はカサカサに乾燥して耐えがたい痒みになる。一方、皮下は湿熱邪でジクジクしている。

夏季は、暑邪に侵襲されて皮膚表面が、熱感を伴ってジクジクして耐えがたい痒みになる。また皮下も湿熱邪でジクジクしているので、熱いお湯につかっているような感じになる。

痒みの治療は、合穴の曲池を取穴して去風する。約2分間の瀉法の手技を、30分間の置鍼時間中に、2~3回、施す。痒みに対しては曲池1穴で即効性がる。また、三陰交、血海、膈兪等を取穴して活血すると、風邪が滅び痒みが消える。

アトピー性皮膚炎の湿熱証の治療は、上記してきた疾患の取穴に順じたものになる。

また長期化した場合には、陰虚湿熱証になることがある。その場合は復溜を取穴する。

またストレスが加わると症状が悪化する。そのような場合は、太衝、内関、風池、百会を追加取穴する。

経過が長く重症のもの、花粉症、アレルギー性の喘息等を併発しているアレルギー体質の強いタイプの人は、治療は長期間になるが治癒することがある。

 

症例6帯状疱疹(ヘルペス)

ヘルペスは、現代医学の治療で、見た目には、きれいに治るが、神経痛が後遺症として残り、痛みが解消されないことがある。鍼灸で治療すると、神経痛が残ることがなく完治する。

ヘルペスの治療は鍼灸の適応症である。

ヘルペスは、湿熱証であるので陰陵泉を取穴する。肝胆湿熱証の場合は、体重節痛を主る兪穴の足の臨泣、中渚、太衝で去湿する。さらに、局所の状態に合わせて、梅花鍼を使うか、鍼で線状に、あるいは面に散鍼を施す。

 

症例7脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症には、いくつかのタイプがあるが、共通していることは下焦湿熱証である。

下焦湿熱証の取穴は後谿の運動鍼、委中、陰陵泉、中極、次膠、局所取穴である。

腎虚証があるタイプには補腎する。腎気虚、腎陽虚、腎精不足には太谿、腎兪、懸鐘、 腎陰虚には、復溜、腎兪、懸鐘を取穴する。

病気の経過が長く重症のものは治療期間も長くかかるが、一般的には、短期間の治療で臨床上の治癒をすることが多い。

 

症例8黄斑変性、飛蚊症

黄斑変性、飛蚊症は共に、肝胆湿熱証である。老化が進行したり経過が長くなった場合は陰虚湿熱証になる。

肝胆湿熱証の取穴は、陰陵泉、太衝、光明、風池、天柱、攅竹から睛明に透刺、絲竹空から太陽に透視、 肝腎陰虚には、曲泉、復溜に5分間以上の補法

黄斑変性、飛蚊症のいずれも、週に2~3回の集中治療をすると、はっきりとした治療効果をやがて確認できるようになる。