「弁証取穴の基礎」気、火、血、津液、陰虚、陽虚の病の病因、症状、取穴3

「弁証取穴の基礎」

気、火、血、津液、陰虚、陽虚の病の病因、症状、取穴3

 

1 気病の病因、症状、取穴 

  1. 気虚
    病因 飲食不節による気の生化不足、過労、慢性病、先天の気の不足、老化、
    症状 顔色淡白、息切れ、自汗、倦怠感、眩暈、風邪を引きやすい、少食、運動すると症状が悪化しやすい、舌淡胖大、白厚苔、脈診 細、無力
    取穴 太淵、太白、足三里、気海、脾兪、胃兪、大谿、腎兪等
  2. 気陥(中気下陥)                 
    病因 気虚の原因にプラス極度の過労、慢性の下痢、多産、力み過ぎ
    症状 気虚証の症状に加え、昇挙無力の症状 腰腹部の墜脹感、頻繁な便意と慢性的下痢、胃下垂、脱肛、子宮下垂、腎下垂等の内臓下垂
    取穴 足三里、太白、中脘、百会、脾兪等
  3. 気滞、気欝(欝滞)
    共通する症状 脹痛、遊走性の痛み、噯気や矢気で症状が軽減する。
    ・肝欝気滞

    病因 情志失調
    取穴 太衝、内関あるいは間使、期門、支溝、陽陵泉等
    ・脾胃気滞 

    病因 飲食不節、痰湿、肝気横逆
    取穴 足三里、中脘、内関等
    ・大腸気滞

    病因 便秘、飲食不節
    取穴 天枢、気海、上巨虚等
  4. 気逆
    ・肺気上逆 

    病因 外邪、痰湿、
    症状 咳、喘
    取穴 尺沢、列欠、孔最、天突、風門、肺兪
    ・肝気上逆

    病因 情志失調
    症状 イライラし怒りっぽくなる、冷えのぼせ、頭痛、眩暈、昏厥
    取穴 太衝、丘墟、期門、内関、百会、風池
    ・胃気上逆

    病因 外邪、食滞、肝気犯胃
    症状 悪心、嘔吐、噯気、吃逆
    取穴 足三里、中脘、内関
  5. 気脱、気閉
    ・気脱

    病因 大量の発汗、出血、激しい下痢、慢性病、中風
    症状 浅呼吸、顔面蒼白、四肢厥冷、玉のような自汗、昏倒、中風の脱症
    取穴 関元、気海、神厥への灸、足三里、合谷
    ・気閉 

    病因 外邪(穢濁の気、熱邪)、強い情志失調、深刻な気欝、中風
    症状 閉厥(外邪による)、昏厥(情志失調)、呼吸急促、中風の閉症
    取穴 井穴、十宣(中風の閉証)、人中、百会、内関、合谷、豊隆、太衝

 

2 火邪(熱邪)による外感病の治療

  1. 火邪(熱邪)は、外淫の火熱邪と内火(内熱)に分類される。外淫の火熱邪には風熱、暑邪、湿熱等がある。
    また、外感温熱病は衛気営血弁証に従って治療できるが、臓腑弁証と衛気営血弁証は異なる弁証スタイルであるが、衛気営血弁証の4段階に、一定程度、相応する臓腑弁証があり、かなりの程度まで、共通した取穴ができる。
  2. 風熱表証あるいは衛分証
    共通する症状 発熱、発汗、軽度の悪風悪寒、面紅、頭痛、口渇、咽喉痛、咳、脈浮数
    取穴 井穴、栄穴、大椎、曲池、合谷、列欠
  3. 熱邪壅肺あるいは気分証
    共通する症状 高熱、悪熱、口渇、大汗、咳喘、黄色い粘い痰、便秘、尿赤、脈沈滑数、舌質紅苔黄燥
    取穴 魚際、尺沢、合谷、曲池、大椎、肺兪、豊隆、内庭
  4. 熱入心包あるいは営分証
    共通する症状 身熱、口乾するが口渇はない、心煩、心神不安、不眠、意識障害、譫語、脈細数、舌質紅こう
    取穴 栄穴、内関、人中、三陰交、復留
  5. 血熱動風(熱極生風)あるいは血分証
    共通する症状 吐血、衄血、血便、血尿、手足の痙攣、角弓反張、意識障害、燥動、五心煩熱、潮熱、脈細促、舌質紫こう
    取穴 栄穴、太衝、内関、人中、曲池、大椎、三陰交、復留
  6. 暑邪 
    症状 暑熱邪 高熱、大汗、面赤、煩渇、昏厥、四支痙攣、脈洪数
    (暑)湿邪 四支倦怠、胸悶、食欲減退、下痢、舌黄膩苔
    気、津液の損耗 口渇、気短、四肢無力、乏力、脈細無力
    取穴 暑熱邪 井穴、栄穴、曲池、大椎、内関、曲沢、人中
    (暑)湿邪 内関、陰陵泉、足三里あるいは豊隆、中脘
    (暑邪による気、津液の損耗には、足三里、復留あるいは三陰交の補法)

 

内火(内熱)の治療

内火(内熱)は、五志化火(気鬱化火)、飲食不節による湿熱、胃熱、邪欝化火(六淫邪気、痰湿、瘀血の長期の欝滞)、陰虚内熱、陰虚陽亢がある。

  1. 情志失調による五志化火
    ・肝火上炎

    症状 眩暈、頭痛脹痛、のぼせ、目赤、易怒、イライラ感、口苦、口乾、耳鳴り、季肋部痛脹痛、舌紅、苔黄、脈弦数
    取穴 行間あるいは太衝、期門、風池、百会
    ・心火上炎 

    症状 心煩、不眠、口渇、面紅、排尿時痛があり赤く濁る、舌に瘡ができ糜爛する、舌尖紅こう、脈数有力
    取穴 神門、内関、心兪
  2. 飲食不節(脂っこいもの、甘いもの、味の濃いもの、辛いもの、酒)による熱化
    ・胃熱 

    症状 胸焼け、胃の灼熱感、冷飲を好む、消穀善飢、歯周炎、口臭、便秘
    舌紅、苔黄、脈滑数
    取穴 内庭、中脘、足三里、内関
    ・脾胃湿熱 

    症状 胃脘腹部のつかえ、身体が重だるい、下痢、小便短赤、身熱、皮膚瘙痒、舌紅、苔黄膩、脈滑数
    取穴 陰陵泉、太都、内庭、足三里、中脘
  3. 邪鬱化火
    ・六淫の火熱邪が入裏したもの、あるいは六淫の風邪、寒邪、湿邪が入裏した後、欝して化火することがある。
    取穴 栄穴、曲池、大椎、(湿熱邪には陰陵泉を追加する。)
    ・痰湿、瘀血が長く欝滞すると化火し、湿熱、血熱になることがある。
    取穴 湿熱 陰陵泉、豊隆、中脘、中極、栄穴
    血熱 三陰交、血海、膈兪、栄穴
  4. 陰虚内熱あるいは陰虚陽亢
    ・房事過多により精、陰液を損傷し、陰虚内熱になる。
    ・邪熱により陰液を損傷し、陰虚内熱になる。
    ・気鬱化火により陰液を損傷し、陰虚内熱になる。
    ・五志化火により陰液を損傷し、陰虚内熱になる。
    ・老化や慢性病により陰虚内熱が進行する。
    取穴 復留、(照海、三陰交、大谿、腎兪、栄穴、太衝を追加取穴してもよい)

 

4 血病の病因、症状、取穴

  1. 血虚証
    病因 脾胃虚弱による気血生化不足、大量の失血、七情過度、過労による血の損耗
    症状 顔面蒼白あるいは萎黄、舌また唇色淡白、頭暈、目のかすみ視力減退、心悸、不眠、手足の痺れ、筋肉の痙攣、経血減少、色淡、経期の遅れ、あるいは閉経、脈細無力
    取穴 三陰交、(血海、膈兪、脾兪、胃兪、足三里を追加取穴してもよい)
  2. 血瘀証
    病因 情志による内傷(肝欝気滞瘀血)、外傷、気虚、気滞、寒邪、熱邪、津液の損耗
    症状 刺痛、固定痛、腫塊、拒按、シビレ、麻痺、経血の紫暗色の血塊、生理前、初期の生理痛、心悸、舌紫暗瘀点瘀斑、脈渋弦結
    取穴 三陰交、血海、膈兪、合谷、太衝、(合谷、足三里の補法と三陰交の瀉法 気虚瘀血)
  3. 血熱証
    病因 外感火熱邪、五志化火等による臓腑の火熱、飲食不節による火熱邪が血分に影響
    症状 衄血、喀血、吐血、血便、血尿、崩漏、斑疹等の出血、舌紅こう、脈数有力
    取穴 三陰交、(血海、栄穴、大椎、曲池、行間あるいは太衝を取穴してもよい)
  4. 血寒証
    病因 寒邪による寒凝気滞
    症状 手足、少腹部の冷痛、皮膚は紫暗色、生理は遅れ、経血は紫暗色で血塊がある、舌暗淡、脈沈遅渋
    取穴 三陰交、血海、太衝、関元や局所に針の瀉法と灸

 

5 津液不足、痰湿の病の病因、症状、取穴

  1. 津液不足
    病因 飲食不節による生化不足、労倦、火熱邪、燥邪による津液の損傷、大汗、尿崩、嘔吐、下痢
    症状 口渇、鼻、口唇、咽喉の乾燥、嗄声、皮膚の乾燥、煩燥、小便短少、便秘、舌紅燥、脈細数
    取穴 復溜、大谿、三陰交、肺兪
  2. 脾虚生湿(痰)、痰湿困脾、腎虚水ぼう、湿邪による痺証(着痺)、風寒邪による肺失宣降  
    ・脾虚生湿(痰)

    病因 飲食不節、過労等による脾陽不足
    症状 食欲不振、下痢、浮腫、小便不利、倦怠感、身体が重い、舌白苔、淡胖大、歯痕取穴 足三里、太白、陰陵泉(先瀉後補)、脾兪
    ・痰湿困脾

    病因 湿邪、飲食不節(甘いもの、冷たいもの、生もの、脂っこいものの取り過ぎ、酒の飲み過ぎ)
    症状 胃脘部のつかえ、食欲減退、下痢、頭重、四支の倦怠と重だるさ、舌白膩、脈  滑
    取穴 陰陵泉、足三里、中脘、内関
    ・腎虚水ぼう

    病因 先天不足、老化、房事過多、慢性病による腎陽虚
    症状 浮腫(下肢に現れやすい)、小便の回数、量の減少、腰の重痛、動悸、息切れ
    取穴 水分、関元(針灸)、中極、腎兪(針灸)、三焦兪、三陰交、太谿
    ・痺証(着痺)

    病因 湿邪
    症状 四支の関節の重痛、麻木、固定痛、雨天に増悪
    取穴 陰陵泉、足三里、五兪穴の兪穴、局所に針と灸(病位が骨にあるリュウマチには灸は必須)
    (陽気不足で寒湿不化を伴う場合は関元に灸、大谿に針の補法を追加)
    ・風寒邪による肺失宣降

    病因 風寒邪
    症状 悪風悪寒、眼瞼浮腫、主に上焦の浮腫、倦怠感と重だるさ、小便不利、咳、無汗、取穴 列欠、合谷、風門、大椎(針、灸)、陰陵泉

 

6 陰虚、陽虚の病の病因、症状、取穴

  1. 陰虚
    病因 先天不足、老化、房事過多、邪熱、五志化火、慢性病
    症状 腰の虚痛、足腰の無力、遺精、耳鳴り、五心煩熱、頬部紅潮、盗汗、咽乾、舌紅、少苔、痩薄、裂紋、脈細数
    取穴 復溜、腎兪、(照海、大谿、三陰交、気海を追加取穴してもよい)
  2. 陽虚    
    病因 先天不足、老化、房事過多、慢性病
    症状 足腰の重痛無力、畏寒、冷え症、精神萎縮、陽痿、不妊症、小便不利、尿失禁、浮腫、水様性の下痢、舌淡胖大、白苔、脈沈無力
    取穴 大谿、関元(針灸)、気海、命門(灸)腎兪

「弁証取穴の基礎」弁証取穴に使われる常用穴を補瀉に分類2

「弁証取穴の基礎」

弁証取穴に使われる常用穴を補瀉に分類2

 

1 気血陰陽の虚証に対する弁証取穴の常用穴

  1. 気虚証の常用穴
    脾経と胃経の経穴には補気作用がある。気の製造工場に相当する脾胃を補うことで補気することができる。
    常用穴としては足三里(胃経の合穴)、太白(脾経の原穴)である。さらに、公孫(脾経の絡穴)、兪穴の脾兪、胃兪、章門(脾経の募穴)、気会の膻中(上焦の気会)、胃経の募穴の中脘(中焦の気会)、先天の元気の海である気海(下焦の気会)、三陰交、関元も使用できる。
    太淵(肺経の原穴で兪土穴)、肺兪(兪穴)への補法で、脾胃で作られた気を全身に配送するセンター的機能(肺は一身の気を主る)を有する肺を補うことができ、肺気、あるいは、宗気を補うことができる。また肺の表裏関係である大腸経の合谷(原穴)は汗証の気虚証による自汗等に使われる。
    全身的な気虚証には、任脉の代表的な経穴である膻中(上気海)、中脘(中気海)、気海(下気海)、太淵(一身の気を主る)、太白(後天の気を生じる)、足三里(強壮の穴、気血の生化の源)、脾兪と胃兪(後天の気の源)、大谿と腎兪(先天の気の源)等によって補気できる。
    以上の経穴は、すべて補気作用があるが、臨床上の必要に応じて適切な選穴をするとよい。
  2. 血虚証の常用穴 
    三陰交、足三里、脾兪、胃兪(血の製造工場である脾を補い、全身的血虚に対応できる)膈兪(心肝血虚、上半身の血証に使われる)
    血海(調経、下半身の血証、血虚による皮膚瘙痒に使われる)
  3. 陰虚証の常用穴
    腎は、全身の陰陽の根本であるので、陰を補うためには、腎経あるいは、腎と関係する経絡から選穴する必要がある。例えば、復溜(経金穴で腎の母穴)、照海、太谿(原穴)、陰谷(合穴)、腎兪、志室、大腸兪、三陰交(足の三陰経の交会穴)等である。
  4. 陽虚証の常用穴
    腎は、精を蔵し、水火の宅であるので、陽を補うためには、腎経あるいは、腎と関係する経絡から選穴する必要がある。例えば、太谿、関元、命門、大椎(諸陽の会)、腎兪、志室、三焦兪、大腸兪、気海兪等
    腎陰虚、腎陽虚、腎気虚、腎精不足に対して、腎経中の大半の常用穴は共通して使えるが、各証型による経穴の使い分けもある。

以上の全ての常用穴を取穴するというわけではなく、臨床上の必要に応じて適切な選穴をすればよい。

 

2 臓腑の虚証に対する弁証取穴の常用穴

  1. 臓腑の虚証に対する常用穴
    気血陰陽を補う常用穴、該当する経絡の原穴(太谿、太白、太淵、神門、合谷)、母子関係の母穴、下合穴、背兪穴、募穴、任脉、督脈の常用穴から選穴する。
    肺気虚、衛気不固 太淵、合谷、肺兪、足三里、太白、公孫、風門、膻中(例えば、合谷と足三里、太淵と太白というように組穴にして使うことができる)
    肺陰虚 復溜、照海、肺兪、太淵(太淵、肺兪だけでは不十分であり、肺の陰液を補うには、腎経の復溜あるいは照海は不可欠である)
    心気虚 足三里、神門、心兪、膻中(心経を補うだけでは心気は補えないので、気の生産工場に相当する脾胃を足三里で補う必要がある)
    心血虚 三陰交、神門、心兪、(膈兪を追加してもよい。血の生産工場に相当する脾胃を三陰交で補う必要がある)
    心陽虚 神門、心兪、厥陰兪、関元(針の補法に焼山火あるいは灸)、膻中、大谿(関元、太谿で、陰陽の根本である腎陽を補う必要がある)
    心陰虚 復溜、神門、心兪、太谿(腎陰を補う必要がある)
    脾気虚 足三里、太白、脾兪、公孫、三陰交
    脾虚生湿 陰陵泉(一穴で治療する場合は先瀉後補あるいは平補平瀉、脾兪、足三里等を補う場合は瀉法)足三里、水分、脾兪
    中気下陥 足三里、合谷、百会、気海、中脘
    胃陰虚 復溜、胃兪(復溜で腎陰を補うことで胃陰を補うことができる)
    肝血虚 三陰交、肝兪、血海、曲泉、陰谷
    肝陰虚 復溜、三陰交、曲泉、肝兪、太谿、陰谷、
    腎気虚、腎精不足、腎陽虚、腎陰虚の弁証取穴は上記した腎虚証の各証型の取穴と同じである。腎不納気、腎気不固の取穴は、腎気虚の取穴に準じる。

 

3 臓腑間の虚証に対する弁証取穴の常用穴

  1. 各臓腑の弁証取穴を適当に組み合わせる。
    肺脾気虚 太淵、太白、足三里、肺兪、脾兪
    肺腎気虚 太淵、太谿、肺兪、腎兪
    心脾両虚 神門、三陰交、心兪、脾兪、足三里
    心腎陽虚 神門、太谿、関元(針の補法に焼山火あるいは灸)、心兪、腎兪
    心腎不交 復溜、三陰交、太谿、神門(瀉法)心兪、腎兪
    心胆気虚 神門、心兪、肝兪、三陰交、丘墟、太衝、膻中
    脾胃虚弱 足三里、太白、脾兪、胃兪
    脾腎陽虚 足三里あるいは太白、太谿、関元(針の補法に焼山火あるいは灸)、脾兪、腎兪
    肝腎不足 太谿、三陰交、肝兪、腎兪、気海
    肝腎陰虚 復溜あるいは三陰交、腎兪、肝兪
    肝陽上亢、肝陽化風 復溜あるいは三陰交、太衝(瀉法)、風池(瀉法)百会(瀉法)、湧泉(瀉法)

 

4 外邪に対する弁証取穴の瀉法の常用穴

  1. 風邪 
    曲池(一身の風邪、風熱表証、肌膚の風邪、)、列欠(風寒と風熱の表証)、大椎(風寒と風熱の表証―風寒には針の瀉法と灸)、風門、外関、風池、合谷
  2. 寒邪
    列欠、大椎(風寒表証―針の瀉法と灸)、寒熱喘咳を主る各経絡の五兪穴の経穴(痺症―陽輔、崑崙、解谿等)、中脘(寒邪直中―針の瀉法と灸) 
  3. 湿邪
    陰陵泉 各経絡の五兪穴の体重節痛を主る兪穴(痺症―足臨泣、束骨、後谿等)
  4. 火熱邪
    曲池(風熱表証、衛分、気分、陽明の熱)、大椎(風熱)、各経絡の井穴、身熱を主る各経絡の五兪穴の栄穴(魚際、液門、労宮あるいは内関で代用する、行間あるいは太衝で代用する、内庭、侠谿等)
  5. 燥邪
    列欠あるいは尺沢(瀉法)、肺兪(先瀉後補)と復溜(補法)

 

5 内生の病邪に対する弁証取穴の瀉法の常用穴

  1. 気滞
    内関あるいは間使(胸脘脇腹部の気滯、肝鬱気滞)、太衝(肝の気機失調による気滞)、合谷(肺の気機失調による気滯)、 膻中、中脘、気海(上、中、下焦の気滞)、天枢(大腸気滞)、足三里(脾胃気滞)
  2. 血瘀
    三陰交(全身性)、膈兪(上半身、心肝)、血海(下半身、生理痛、生理不順)、合谷(多気多血の経脈の原穴)、太衝(肝鬱による気滞瘀血)、各経絡の郄穴(各臓腑経絡の瘀血)
    効果的な活血をするには、血に作用する経穴を単独で使うよりも、「気は血の帥」であるので、気に作用する経穴を組み合わせて使う方が効果的である。
    例えば、気虚瘀血には足三里の補法と三陰交の瀉法、気滯瘀血には、合谷、内関、間使と太衝、血海、三陰交等を組み合わせる。(たとえば、合谷と太衝、間使と三陰交の組穴)
  3. 内生の湿邪、湿熱、寒湿、痰湿痰熱
    湿邪、湿熱には陰陵泉(全身性、中焦)、中脘(中焦)、中極、次髎(下焦)列欠(上焦)寒湿には針に灸
    痰湿には豊隆(全身性、中焦の去痰)、
    痰熱には豊隆、内庭(全身性、中焦)、 足三里(中焦)、中脘(中焦の去痰)、天突(気道の降痰)、水分(利水)
    気虚生湿には、陰陵泉に瀉法あるいは先瀉後補あるいは平補平瀉、太白、足三里に補法、また陰陵泉の瀉法と脾兪の補法の組み合わせることもできる
  4. 内生の火熱邪 
    五兪穴の身熱を主る各経絡の栄穴(内庭、魚際、行間、液門等)、曲池、大椎、三陰交(血熱)
    陰虚内熱には復溜あるいは照海、大谿の補法
  5. 内風 
    太衝、百会、風池、風府
    血虚生風 三陰交、足三里、血海に補法
    陰虚陽亢による肝風内動には、太衝、風池、百会の瀉法、復溜あるいは三陰交の補法

 

6 逆気に対する常用穴、各経絡の疎通経絡の常用穴

  1. 逆気に対する常用穴
    五兪穴の逆気を主る合穴、あるいは原穴、募穴を使う
    肺気上逆 尺沢、列欠、孔最、天突、肺兪、風門、肝気上逆 太衝、期門、日月、百会、風池
    胃気上逆 内関、足三里、上脘、中脘、胃兪、膈兪
    肝胃不和による胃気上逆 内関、太衝、足三里、中脘
    すべての経穴を取穴する必要はなく、程度に応じて追加取穴するとよい
  2. 各経絡の疎通経絡の常用穴 
    各経絡の郄穴、井穴(井穴は開竅醒志だけでなく、経気の通暢ができる、至陰、商陽、少商、少沢、関衝等)、局所穴の瀉法あるいは吸角

 

 臓腑の実証に対する弁証取穴の常用穴

肺熱 魚際あるいは尺沢
痰湿阻肺 尺沢、豊隆
心火 神門、内関(栄穴の少府、労宮は理論と一致するが、臨床上は使われることは少ない。神門と内関の方が臨床的価値は高い)
痰火擾心 神門、内関、豊隆、中脘、内庭、鳩尾
痰迷心竅 神門、内関、豊隆、陰陵泉、中脘、鳩尾、心兪
心血瘀阻 神門、内関、三陰交、心兪、厥陰兪、膈兪、郄門
胃熱 内庭、中脘、(天枢、足三里を追加してもよい)
胃寒 中脘、足三里、胃兪(灸)
食滞 中脘、足三里、内関、天枢
湿困脾 陰陵泉、足三里、中脘
肝気鬱結 太衝、期門、内関、陽陵泉
肝火上炎 太衝あるいは行間(理論上は行間になるが、太衝で代用できる)百会、風池
寒凝肝脈 太衝、大敦(針の瀉法と灸)

 

8 臓腑間の実証に対する弁証取穴の常用穴

心肝火旺 神門、内関、太衝あるいは行間
脾胃湿熱 陰陵泉、足三里、中脘、天枢、内庭
肝胆湿熱 太衝、陽陵泉、陰陵泉、侠溪、行間
肝胆火旺 太衝、風池、丘墟、侠溪、行間、陽輔(肝胆火旺による片頭痛に対して有効である。陽輔は経火穴であり、母子関係で木の子穴になる)
肝火犯肺 尺沢あるいは魚際、太衝あるいは行間
肝気犯脾 太衝(瀉法)、太白あるいは足三里の補法
肝気犯胃 太衝、足三里、中脘
下焦湿熱 陰陵泉、中極、次髎、水分
上記した常用穴は、弁証取穴において、原則に適合しているが、弁証取穴で使われる常用穴は、臨床経験に依存するところが大きいので、固定的に考える必要はない。
上記した常用穴は、臨床で頻繁に使用されている常用穴をほぼ網羅している。実際の弁証取穴では、上記した常用穴の中から、臨床上の必要に応じて適当な常用穴を選べばよい。

「弁証取穴の基礎」 弁証取穴で使われる常用穴を補瀉に分類1

「弁証取穴の基礎」

弁証取穴で使われる常用穴を補瀉に分類1  

要穴は全て覚えた方がよいが、臨床上は、そこまでの必要性はない。

要穴には、五兪穴(60穴)、原穴(12穴)、絡穴(15穴)、郄穴(16穴)、八会穴(8穴)、八脈交会穴(8穴)、下合穴(6穴)、背兪穴(12穴)、募穴(12穴)、交会穴(96)がある。

これらの要穴は、理論上、大切であるが、臨床上あまり使われないものもある。

これらの要穴の中から、弁証取穴で常用される臨床的価値の高い90穴位を使いこなせるようになる必要がある。

経穴学の教科書は、肺経の経穴から始まって、順序よく、全経穴を取り上げてゆくのが一般的であるが、ここでは、弁証取穴に使われる常用穴を、補法、瀉法、補瀉双方に使われる経穴に、3分類して取り上げることにする。

 

1 弁証取穴で補法に使われる常用穴

 大部分の経穴の作用は基本的に補瀉の双方向性がある。弁証取穴においても、瀉法、補法、補瀉双方に使う経穴に三分類できる。

各経絡上の経穴は、その経絡に属する臓腑の生理、病理との関係、あるいは各経穴の固有の性格によって、瀉法、補法、補瀉双方に使えるかどうかを考えるべきである。

  1. 補法に使われる脾経、胃経、腎経の常用穴
  • 脾経、胃経は、脾胃は気血生化の源なので、補気、補血、後天の気を補う経絡である。脾経、胃経の井穴と栄穴や顔面部の経穴は、一般的に補法としては使われないが、その他の経穴は、基本的には補瀉法のいずれにも使われる。
    例えば、足三里、太白、三陰交等は気血を補う常用穴であり、また、腹部の乳根から気衝までの経穴も補法として使われる。
  • 腎は陰陽の根本である。陰陽の根本を補い、先天の気を補うことができるのは腎経であり、太谿、復溜、照海等は陰陽の根本を補う常用穴である。
  • 脾経、胃経、腎経は気血陰陽を直接的に補える経絡である。この三経以外の経絡は直接的に気血生化の源、陰陽の根本を補うことはできない。

 

補法に使われる背兪穴、原穴、任脈、督脈の常用穴

  1. 背兪穴は臓腑の経気が輸注しているので、臓腑に対する補法に、また瀉法にも使える。
  2. 十二原穴は臓腑の原気が通過し留まる経穴なので、理論上は、原穴は臓腑の治療ができ、また、臓腑の虚を補うことができる。
    しかし、臨床上、臓腑の補法として使うことができる原穴は太谿、太白、太淵、神門、合谷等であり、その他の原穴は、臨床上、補法で使うことはあまりない。太谿以外の原穴は瀉法としても使うことができる。腎の原穴である太谿は腎には実証はないので瀉法で使うことはしない。
  3. 任脉の関元は壮陽の穴であり、気海は元気あるいは下焦の気を補うことができる。また、中脘は中焦の気を、膻中は上焦の気を補うことができる。
  4. 督脈の命門と大椎は腎陽を補うことができる。

 

3弁証取穴で瀉法に使われる常用穴

 腑病には、実証が多く、また腑が詰まると大変なことになるので、補法が使われることは少ない。気血生化の源を補う足三里等がある胃経は、瀉法だけでなく、補法としても使われるが、胃経以外の手足の陽経の経穴は瀉法としてよく使われる。

  1. 大腸経で瀉法に使われる常用穴は曲池、合谷(例外的に、合谷は肺経の表裏関係の原穴であるので、汗証の虚証の自汗等の治療に対して補法として使われるが、他の経穴は瀉法としてよく使われる)
  2. 小腸経の常用穴は後谿(臓腑としての小腸の治療は、下合穴の下巨虚を使って治療する、あるいは脾の病証として治療するので、小腸経の経穴は臓腑弁証取穴で使うことは少なく、瀉法としてよく使われる。)
  3. 膀胱経の常用穴は秩辺、次髎、委中、崑崙、束骨(膀胱経の背兪穴は補瀉双方に使えるが、それ以外の経穴は瀉法に多く使われる。)
  4. 胆経の常用穴は丘墟、足臨泣、陽輔、環跳(胆経は瀉法に使われることが多いが、髄会の懸鍾、筋会の陽陵泉、補益脳髄、明目の作用がある風池等は補法にも使われる。)
  5. 三焦経の常用穴は中渚、外関、支溝(三焦は臓腑の外腑であり、三焦の上焦、中焦、下焦の各臓腑の治療は各臓腑の経絡の経穴、兪募穴等で治療する。三焦経の経穴は、外腑としての三焦病、経絡病、少陽病の治療に使われ、瀉法に使われることが多い。)
  6. 肺経の常用穴は尺沢、列欠、魚際(尺沢は合水穴であるので、尺沢は補法にも使えるが、臨床上は、母子関係で、金の子穴になるので、肺の実証に対する瀉法に使われる。列欠は絡穴で、理論上は補法にも使えるが、臨床上は瀉法として使われることが多い。)
  7. 心包経の常用穴は間使、内関(心包は邪気から心を防衛する作用があることにより、去邪するのに適している経穴であり、補法に使用することはない。)
  8. 肝経の常用穴は太衝、行間、期門(太衝は原穴なので、理論上、補瀉双方に使えるが、肝血虚には三陰交への補法が使われるので、臨床上は、太衝は補法に使われず瀉法に使われる。また、肝陰虚には、曲泉は合水穴なので補法に使われるが、通常は、復溜や三陰交が使われることが多い。)
  9. 井穴は心下滿を主る、あるいは、開竅醒神やその経の疎通経絡の効能だあることから瀉法あるいは瀉血法に使われる。
  10. 栄穴は身熱を主るので、清熱のために瀉法として使われる。(例外として、腎経の然谷は、腎は水火の宅であるので、腎陽虚に対して補法で使うと温補腎陽の効能がある。)

 

4 弁証取穴で補瀉双方に使われる常用穴

 経絡が属する臓腑に虚実があることから、経穴は、理論上、補瀉双方に使うことができるが、臨床上は様々な制約がある。

  1. 補瀉双方に頻繁に使われる常用穴は、胃経(足三里、脾経(血海、陰陵泉、三陰交、公孫)、心経(神門)、大腸経(合谷)、胆経(風池、陽陵泉、懸鍾)等である。
  2. 任脉(膻中、中脘、気海、中極)、督脈(百会、大椎)等である。
  3. 背兪穴(腎兪以外)は補瀉双方に使われる。
  4. 八会穴の章門、中脘、膻中、膈兪、陽陵泉、大杼、絶骨は補瀉双方に使える。
  5. 絡穴の豊隆は補瀉双方に使えるが、臨床上は去痰のために瀉法で使われることが多い。
  6. 任脉の気会の膻中は補気することもできるが、臨床上は、気滞に対する瀉法として使用されることの方が多い。
  7. 関元は補瀉双方に使えるが、通常は元陽を補う経穴として灸がよく使用される。
  8. 中極は膀胱の募穴であり、下焦湿熱証で瀉法として多用されるが、気化行水や膀胱の約束を助けるために補法として使われることもある。
  9. 気海は下焦の気滯に、あるいは元気を補う要穴として補瀉双方に多用される。
  10. 命門は、督脈の経気を通暢するために瀉法に使用することもできるが、通常は、命門火衰に対して灸を使う。

 

原穴の補法、母子関係での補法に使われる弁証取穴の常用穴

  1. 原穴の補法の常用穴
    原穴は理論上、臓腑の治療ができることになっているが、臨床上、臓腑弁証取穴で補法として使用できる原穴は、太谿、太白、太淵、神門、合谷である。その他の原穴は、補法として使うことは少ない。
    例えば、心包経の大陵は、臓腑理論上、臓腑の治療で瀉法に使えるが、補法に使うことはない。なお、神門は補瀉法のいずれにも使える。
    例えば、膀胱経の京骨は原穴であるが、経絡理論上は、臓腑弁証取穴で使うことができないとは言えないが、臨床上は、疏通経絡のために瀉法として使う。
    なお、腎経の太谿以外の原穴は全て瀉法に使うことができる。
    原穴が臓腑弁証取穴として使えるかどうかは、臓腑理論と整合性がある場合にのみ使える。
  2. 母子関係での補法の常用穴
    五兪穴を使って、母子関係での母穴を取穴することで補うことができる。しかし、臨床上、この取穴法の常用穴として使用されるのは、腎経の経金穴の復溜を使って腎陰虚を、肝経の合水穴の曲泉を使って肝陰虚を、肺経の兪土穴の太淵を使って肺気虚を、さらに脾経の兪土穴の太白を使って脾気虚や肺気虚を補う等である。太白は脾気虚だけでなく、肺気虚も補うのに有効である。
    脾経の太白で肺気虚を補える根拠は、脾経は肺経の母経であり、さらに脾経上では、太白は肺の母穴である土穴だからである。さらに、脾と肺の関係は、臓腑理論上からも、脾は気血生化の源であり、脾を補うことで、肺気も補うことができる。つまり、培土生金の関係にあるので、臓腑理論上も、臨床上も太白で肺気を補うことができる。
    しかし、母子関係の補瀉法の理論を一般化して臨床で使うことには無理があり、臨床上の効果にも疑問がある。この理論の有効性の範囲は臓腑理論と整合性がある場合のみである。
    例えば、腎虚に対して、腎経の経金穴の復溜の補法は有効であるが、腎の母経の肺経の経金穴である経渠で腎虚を補うということは臓腑理論上、無理がある。
    臓腑理論からして、肺経には、腎経や脾経のように補う力はないし、肺と腎の関係では、腎は陰陽の根本なので、腎が肺を補えるが、肺が腎を補うことはできない。したがって、経渠で、腎虚を補うということは、臓腑理論上、無理があり、臨床上の有効性も疑わしい。
    例えば、心気虚に対して、心経上の心の母穴である井木穴の少衝では、井穴の性格からしても、補うことはできない。臨床上は、原穴の神門や背兪穴の心兪には補う力があるが、井穴の少衝には、そのような効能はない。さらに、心の母経である肝経の井木穴の太敦にも補う力はない。
    心気に限らず、どの臓腑の気を補うにしても、気血生化の源である脾胃の経絡から、たとえば、足三里、太白を取穴し補法をすればよい。
    なお、理論上は、母子関係の補瀉法で、子穴を使って瀉すことができるが、臓腑理論上ありえない取穴になることがある。臨床上、有効性があるものは限定される。
    例えば、胆経の実証の治療に胆経の木の子穴である経火穴の陽輔、肺の実証には肺経の合水穴で金の子穴である尺沢は臨床においても有効である。しかし、肺実に対して、子経である腎経の合水穴の陰谷を瀉すことは臓腑理論上ありえないし、臨床効果もない。