パソコン病と、それと関係する疾患や体質の治療法

パソコン病の現状

今や、国民の過半数が程度の差はあるが、パソコン病に罹っているように思える。しかし、包括的で効果的な治療法が、いまだ確立していない。パソコン病の深刻な症状に苦しんでいる人が多いにもかかわらず、命に関わる病気ではない、あるいは、あまりにも一般化してしまっているので仕方がないという諦めから、まともに病気として扱われていないのが現状である。

現代の職業や日常生活において、パソコンや携帯、iPad、スマホ、ゲーム器等を長時間、使用することが一般化している。このような現状において機種によって症状も多少異なるが、深刻ないわゆるパソコン病になって仕事を継続することが不可能になった人や、パソコン病とそれに関係すると思われる深刻な症状に悩みながら仕事を続けている人は数知れない。

例え、深刻なパソコン病を患っていても、現代社会においては、パソコンを抜きにした仕事が考えられないということもあって、我慢して続ける以外に選択の余地がない。

いろいろ治療を試みてみるが、満足のいく治療結果が得られないで困っているのが現状である。

*パソコン病は、仕事の効率という面からすると、眼が霞んできて、頭が回転しなくなり、首、肩、上肢の痛みや痺れに耐えながら、パソコンに向かって座っているが、ポカミスが連発するようになり、時間が経過するだけで仕事になっていないことがある。

現場の第一線の本来的には優秀な人材が、パソコン病で無気力化しているようでは、日本経済の先行きは暗澹たるものである。これは仕方がないでは済まされることではなく、なんとしても、どうにかしなければならないことである。

このような現状に対して、明確な対策と効果的な予防法と治療法を提示したい。またパソコンを使用し続けることができる長距離ランナーであるために、この治療法が頼りになるものと確信する。

 

はじめて体験する治療法

パソコン病をめぐるこのような現状に応えるために、パソコン病の一般的特徴を明らかにすること、また体質や仕事の条件によって、その症状やその程度が異なってくる。

個々の患者の主症状と、それと関連する体質や諸症状、さらに、男女差、年齢差、職業等の差を総合的に勘案した個々の患者にみあったオーダーメイドの治療法が必要である。個々人の条件が異なるので、画一化された治療法には限界があるので、例え、マッサージによる治療であっても、問診、経絡診、舌診、脈診等の丁寧な診断をして、その人の証にそった治療を心がけるべきである。

医学レベルの高い治療効果を発揮し、しかも気持ち良く治療するという新しいスタイルの治療型マッサージを調気手技療法という。

*これまでのマッサージは、ほとんど診断行為をしないままで、一律のパターン化された慰安としての慰安型マッサージであった。このようなマッサージでは、高度の医学的レベルの治療を必要とするパソコン病の本格的な治療は不可能である。

調気治療法は、四診合算による正確な診断をし、その診断に基づいて治療方針を立て、経絡経穴に対して補瀉手技を行って治療をする。

*また、この治療法は、精神科、内科、外科、五感器科等、全疾患に対応できるもので、現代医学の脳の解剖生理に対応し、かつ中医学の基礎理論に基づいた頭皮治療法を中心にして治療を行う。

頭皮治療法は、頭部への治療をすることで、全身の司令塔である脳(治療区域は大脳、脳幹、小脳に区分される。)の治療を通して身体の治療ができる。

この頭皮治療法は、脳が原因の病気、たとえば、痴呆症、脳梗塞による半身麻痺、鬱病や不眠症を含む精神科疾患等の治療は得意分野になる。

頭皮治療法は、鍼治療あるいは手指による手技療法のいずれでも治療することができる。

*さらに、調気治療法は、頭皮治療法の他に、全ての運動器疾患の治療に対応できる手鍼療法、また臓腑弁証を基礎にし、現代医学も取り入れた治療法であり、全疾患に対応できる精度の高い耳ツボ療法、また中医基礎理論に基づいて体系化された補瀉法による全疾患対応型の体鍼等を行う。

実際の治療は、患者の希望する治療法によって、手技療法、鍼治療、耳ツボ療法、手鍼治療法、吸い玉療法等の単独の治療、あるいは、それらの組み合わせによる治療によって行われる。

 

臨床家の養成

あん摩指圧マッサージ師、鍼灸師、鍼灸学校あるいは盲学校の学生は、調気治療法を積極的に学んで、パソコン病の治療ができるようになってもらいたい。調気治療法を学ぶということは、パソコン病に限らず、広範な難しい病気、とりわけ現代病に対して自信をもって治療することができるようになる。

*調気治療法の治療家になる条件は、鍼灸学校や盲学校で、中医学の基礎理論を、しっかり勉強してきた人で、向上心のある人である。

学校で学んできた中医学の基礎理論には歴史的な制約があって、それだけでは不十分なところがあるので、さらに、それに、上乗せする形で、現代社会で一般化している現代病の特徴を理解できるようにするためのハイレベルの中医学基礎理論と脈診、舌診、経絡診等の診断学の実践的学習、経穴の効能に関する経穴学の学習等が必要になる。

*鍼治療の臨床家として、本格的なプロのレベルを目指すには、経絡、経穴、治療線、反応点のミリ単位での正確な位置を感覚レベルでわかるように訓練すること、1ミリ以内の誤差で、正確に無痛で経穴に鍼を刺入できるように訓練すること、経絡を流れている気に対して補瀉手技をして、その補瀉の効果が治療直後には、はっきりと確認できるようになるレベルまで訓練をすること、最後に実際の患者に対する臨床訓練を経て治療結果を予想して、その予測通りの治療効果を発揮できるようになるまで長期の訓練を続ける必要がある。

*臨床訓練の成果が比較的早く出しやすいことや、訓練の順序から考えて、手指による調気手技療法の訓練を優先的に先行した方が良い。このことは、手技療法の方が、鍼治療よりランクが低いと考えるべきではない。手技は、一切の道具を使わずに、手指だけで治療するのだから、それで驚くほどの良い治療効果を出せるのなら、まるで神技のようになる。人間のなせる技としては、最高級のものであると誇れるようになれるまで臨床訓練に励んでもらいたい。

*現代人が本格的な鍼師、手技療法のプロになるためには、臨床訓練のなかで、歴史的に喪失してきた人間の感覚や感性を呼び覚まし回復させる必要がある。

鍼師の場合は、邪念の虜から解放されて治療に集中できるようにする、またミリ単位の正確さが求められる鍼の操作技術等の訓練を通して、失われた能力を徐々に回復させることができる。回復には、個人差があるが、相当、長期の訓練を要する。鍼師に必要なレベルの感覚や感性を獲得できた人は、将来、本格的なプロの鍼灸師になれる。

鍼灸師の一般的レベルは、資格においてはプロであっても、その実力は、半人前のレベルにさえ達していない。しかし、適切な指導を受けながら、基礎的な手技の訓練と臨床経験を重ねてゆけば、ほとんどの人は本格的プロになれる可能性がある。

*鍼灸の技術は、数千年の歴史的経験の上に築かれてきたものなので、自己流の学習や訓練には限界がある。補瀉手技の原理や基本的な技術は、歴史的に形成されてきた技術を継承し発展させてきた先生から学んだ方が良い。その技術が本物か、偽物かは、臨床において、その効果が実証されるかどうかである。

ほとんどの人は、本物を見たことがないので、偽物をつかまされていることに気付くことがない。偽物を本物と信じ込まされていることが、悲喜劇の始まりである。プロにふさわしい治療能力を身に着けるには、本物に出会って、本物の鍼の技術を獲得することである。後は、本人が執念をもって諦めずにやることである。楽な近道はない。

 

盲人の臨床教育と雇用について

盲人は、指の感覚の鋭さ、精神的集中力、手技に関する学習能力の高さ、さらに最も大切なやる気において、治療家としての資質が優れているので、その能力や資質が、十分に生かされるように教育すれば、優秀な治療家に育ってゆく可能性がある。

その可能性を実現させるための教育の問題は、施設や設備や資金の問題ではなく、教育内容、あるいは、先生のレベルの問題である。しかし、個々の先生のレベルの問題というよりも、日本全体の鍼灸のレベルの低さの問題である。

*国際的な比較をすると、日本の針灸のレベルの低くさや制度上の問題があることが明らかになってくる。日本の中だけで議論していても、何が問題なのかさえ分からない。

中国、アメリカ、韓国等と国際比較したとき、鍼灸の国家的レベルでの普及の度合いは、日本の方が、比較にならないほど低い。老舗の日本が低迷し、鍼灸の伝統がゼロであった新参者のアメリカが、なぜ、そんなに盛んになったのか、日本は、なぜ低迷し続けているのか冷静に、良く考えてみる必要がある。

国民的な人気や信頼度、治療の実力、教育制度において、比較にならないくらいの差があるのが現状である。

低能力高プライド型になった老舗の日本鍼灸は、歴史の皮肉で、いまや井の中の蛙である。自らの姿を鏡に映してその滑稽さを自覚し恥も外聞も、かなぐり捨て、アメリカから学ぶべきものは学び、日本の鍼灸を立て直すための参考にするべきである。

*さて、盲人が仕事に付いてからは、仕事をする際に、盲人としてのハンデイーがあるので、患者へのサービス面等で不十分な面があると思うが、肝心の治療内容自体は何ら劣ることはない。

盲人の仕事上の能力や問題点が総合的に、客観的に評価され、行政の支援も得ながら、関係者が仕事の環境を整えるようにすれば、盲人の雇用が促進されることになると思う。

これまでの行政の盲人に対する福祉政策は、社会的評価が高かったと思う。しかし、今後は、さらに盲人の治療家としての能力や資質が社会的に正当に評価されて、積極的に社会進出できるように官民を問わず、努力すべき課題である。

そのためには、社会的なニーズに合致する教育内容や制度に必要に応じて改められるべきである。社会的に評価されるような教育のレベルを設定すること、現代の状況から、あまりにもかけ離れ現代社会とかみ合わなくなった教育内容から、現代社会の要請に答えられるような内容に根本的に改めて行くべきである。また、思い切って発想を変えて、これまでのしきたりや習慣、既得権に拘ることなく改善してゆくことが大切である。

国民のニーズに答えるということは、平たく言えば、これまでよりも格段に治療効果を発揮できるような教育内容と教育環境にするということである。

*たとえば、一般の鍼灸学校や盲学校の学生時代は、国家試験に合格するための授業はするが、臨床家を養成するための授業はほとんどない。例えば、在学中に、一度も、本物の患者を治療する経験はないままで、国家試験に合格したので、さあー、臨床現場で、自由に患者の治療をしてくださいと言われても、治療できる人などいるわけがない。

誰が考えても、卒業後、最低1年間くらいの臨床研修制度が必要であることは分かるはずであるが、そのような研修システムはどこにも存在しない。つまり、臨床家としては素人同然の人が治療していることになる。患者の側から見れば、なんという恐ろしいことか。

試みに、特区制度のような考えを導入して、盲学校の卒業見込み者や卒業生の希望者から小人数を選抜して、1年間、適当な研修施設で、盲人の条件に合った教育内容(たとえば、望診よりも、脈診、問診、経絡診を重視した独自の実践的な診断学を採用する)で、ハイレベルの臨床研修を行い、その結果を参考にして、今後の改革の方向性を探っていったらどうだろうか。

学校の経穴の取穴の授業では、ツボの位置に、直径1センチくらいのシールを貼る練習をしている。臨床では、無痛で刺入し、臨床効果を発揮するには、約1ミリの誤差で取穴する必要があるが、そのような臨床指導能力のある先生は、ほとんど見かけることはない。鍼治療はツボを使って治療するのに、そのツボの位置が外れている。あるいは、経絡やツボが、どこにあるのか感覚レベルで分かっていない。これでは、臨床効果が出る治療ができるはずがない。

盲人は、指の感覚が鋭いし、集中力も高いので、正確なツボの位置を指先で分かるように、丁寧に指導すれば、短期間に、相当ハイレベルの段階まで行ける可能性がある。

また、どのツボが何に効くのかという経穴学の授業が存在していないので、ツボを使ってどのように治療すればよいのか見当もつかない人がほとんどである。

日本鍼灸の現状は、絶望的なほど、臨床家が育つ見込みが制度的にない。ここで、高級なレベルの議論をしているのではない。本来は、鍼灸学校の一年生で終えていなければならないことが、教育のカリキュラムから抜け落ちているのである。

必要不可欠な針灸の基礎知識と技術の臨床研修が最低でも必要である。臨床家として将来、飛躍してゆくための基礎的な訓練をする研修施設が必要である。あるいは、学校のカリキュラムの変更をするか、臨床教育能力のある教師の養成から始める必要がある。

あん摩指圧マッサージの教育内容は、鍼灸以上にお粗末で医学レベルの治療効果は、ほとんど期待できない。

また、整骨院は、保険治療で成立っているが、もし、鍼灸と同様、保険適用がなくなれば、その治療レベルからみて、どれだけの整骨院が生き残れるだろうか。

盲人の治療家としての資質が臨床教育を通して開発されて、これまで以上に、その能力が格段に高まれば、社会福祉とは別次元で、経済的メリットを動機にして、盲人の雇用が拡大してゆく可能性が出てくる。

福祉的性格の生活支援というよりも、職業能力を高めて自立して安定的な生活ができるようにするための臨床研修を中心にした教育投資の方に重点を移すべきではないだろうか。

*鍼灸、マッサージの一般の学校教育制度の問題もあるが、先ずは、盲人の職業能力の向上と、経済的自立能力を高めることを目標にして、あれこれの既存の制度や習慣に拘ることなく、実行可能なところから改革に着手すべきである。

もし、盲人が、有能な治療家として活躍できる能力を身につければ、例えば、パソコン病等の現代病の治療が得意であれば、鍼灸マッサージ治療院へ、リハビリの期間を半分以下に短縮できる治療能力があれば、それが評価されて病院のリハビリ科へ、病院で、診断がつかない、あるいは治療効果が出にくい疾患の治療が得意であれば、病院の鍼灸マッサージ外来へ、湯治客から治療型のマッサージを期待されて、湯治目的の温泉地への雇用が開けてくる。また、条件が揃っていれば、開業してもやって行ける。

盲人の高い治療能力による集客力が期待できるということになれば、雇用する側にとっては、営業上のセールスポイントになるので、雇用の機会が増えてくる。

たとえば、温泉地で、治療型の優れたマッサージができる盲人がいるという噂がたてば、全国から湯治客がやって来て、寂れかけていた温泉町の観光が蘇るかもしれない。

盲人が、その地方の福の神になれるかもしれない。

 

A.パソコンの長時間の操作によって引き起こされる身体的症状

全身的には、極度の運動不足になるが、作業の姿勢を保つために、頚部、肩、肘、手首、背部、腰部を固定し続けるので持続的な負担がかかることになる。それで、これらの部位は動かさないことによる疲労が蓄積されることになる。一方、指や眼は動かし過ぎによる疲労が蓄積される。この疾患の特徴は、全体的には固定して動かさないが、指や眼の局所の使い過ぎによる疲労が存在している。このようなアンバランスな疲労の仕方が問題である。この疾患の治療は、局所的治療に限定することなく全身的観点から、上記したようなアンバランスを回復させるような治療が必要である。

身体的な主な症状としては、以下の1から3の症状である。

1.長時間、パソコンの操作をするため前屈姿勢が、主な原因で引き起こされるストーレートネック等による頚部や肩の凝り、上肢の指、腕関節、肘、肩関節等のシビレや痛み

2.長時間、座りっぱなしの姿勢が原因で起こる背部、腰部の凝りや痛み、下肢の浮腫みや重だるさ

3.眼の酷使による眼精疲労

 

B.高度な頭脳労働に伴う症状

「パソコン」を操作する際に、機械的操作だけでなく、高度な頭脳労働あるいは創造的な仕事をしている場合は、Aの身体的症状に加えて、以下のような、頭の使い過ぎによる固有の症状が出る。

1.数時間、集中して脳を使い続けると、頭の中が満タンになってそれ以上詰め込めない状態になる。具体的には、極度の頭の疲労感、集中力の低下、頭痛、意欲の減退、記憶力の低下、創造性やひらめきの欠如等である。

2.頭の使い過ぎによる脳の疲労は、気血を損傷するという虚の側面もあるが、むしろ、頭がいっぱいになって、オーバーヒートしてエンスト状態になることから、脳が気滞於血になって、しかも熱化して働かなくなるという実証になる。

この状態では、パソコンに向かって仕事をしているつもりでいても、実際には、頭が回転しなくなり、ミスが続発し、時間だけが流れて仕事がはかどらない状態になる。

3.これらの症状は、パソコンの機械的操作を長時間続けるだけでも出現することがあるが、高度な頭脳労働を伴う場合は、このような脳の疲労に伴う症状が一層、出現しやすくなる。

4.脳の疲労回復をはかるためには、睡眠によって脳を休息させることができる。

また、夜、睡眠を十分に取らないと、陰陽のバランスが崩れて、頭が熱っぽくなったり、頭の切れ味が悪くなったりして、創造的な仕事ができなくなる。

睡眠に関わりなく、脳が一定の限度を超えて疲労した場合は、仕事を継続することは、実際的に無理であり、時間の無駄になるので、早めに仕事を切り上げて治療した方が良い。

脳の疲労をリフレッシュする治療は、比較的速く効果的に行うことができる。

 

C.精神的ストレスがかかっている場合の症状

仕事上のストレスや、人間関係の軋轢によるストレス等の問題を抱えながら仕事をしている場合は、A,Bの症状の他にストレスによる固有の症状が加算される。

  1. 強いストレスを受けると肝気鬱結を起こして気血の流れが全身的に停滞する。

肝気鬱結になると、肝血によって養われている筋が、肝血の流れが詰まることで養われなくなる。このことが引き金になって、それまでは潜在的で我慢できる範囲内であったA、Bの症状が増悪し、我慢の限界を超えて、仕事を投げ出してしまうようになることもある。

2.パソコンの操作による眼の使い過ぎからくる眼精疲労だけでなく、ストレスによる肝気鬱結で気血の流れが詰まり眼が肝血で養われなくなると、極度の視力低下や眼の奥の痛みや眼の乾燥あるいは眩しさや眼の周りのクマという症状がさらに加算されることがある。

3.また、肝気鬱結になると、身体的症状の悪化にとどまらず、精神症状を伴うことが多い。イライラ感、怒りっぽい、あるいは鬱々とする、落ち込む、泣きたくなる等、精神状態が不安定化しやすくなる。それで、仕事の集中力の低下、ミスの続発、対人関係でのトラブル等を起こしやすくなる。

4.一般的には、誰しもパソコンのやり過ぎは固有の様々な症状を引き起こすものである。

しかし同じ条件でパソコンの仕事をしていても、ある人は深刻な症状が出るが、ある人は肩凝り体操をすれば楽になるという程度の症状しか出ないという人もいる。

このような個人差が生じる主な原因として、ストレスによる肝気鬱結証に伴う症状があるかどうかが大きく関係している。

5.現代社会はストレス社会なので、大半の人は程度の差はあるが肝気鬱結があるので、この面からの治療を加えることで、効果的な治療をすることができる。

肝気鬱結の治療は、即効性があり、治療後は爽快になるが、ストレスの原因そのものは治療で除去することはできない。治療で、ストレスに立ち向かう力を回復させることが、ある程度、可能になるので、後は、本人の努力でストレスの原因そのものを取り除くようにしてもらいたい。

しかし、同時に人間生きている限り、ストレスは、つきものであり逃れられないというのも事実なので、ストレスを自分流の仕方で解消しながら上手に付き合っていくようにすることも大切である。

 

D.飲食不節に伴う症状

アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎ(とくに、甘いもの、野菜や刺身などの生もの―火をとおすとよい、油っこいもの等は湿邪が生じるのでよくない)、また夜食は、痰湿を生じ、水の代謝が悪くなって、浮腫み、重だるさ、眠気、無気力等の症状が出やすくなる。また症状は天候に左右されやすい。

このような症状が、A,Bの症状に加算されると、頭が重く、眠くなり、意欲と根気がなくなって仕事を継続する気力がなくなり、まるで、ふぬけのようになる。これは、性格の問題ではなく、痰湿証という病気の一種である。

痰湿証の病因である飲食の不摂生を改めることが第一であるが、同時に痰湿を取り除く治療をする必要がある。

食べ過ぎ、飲み過ぎであることは、本人も分かっているが、飲食がストレス解消のためになっているために、やめられない場合がある。ストレスの解消法として、スポーツとか、森林浴とかが良い。運動によって代謝をよくすることもできるのでダイエット効果も期待できる。また、趣味や好きなことに夢中になることがストレス解消になる。また、ストレスがあっても、それほど気にならないように精神的安定感が保たれるような治療や訓練をすればよい。

ストレスが強い時は、なおさらそうなるが、胃に余分の熱があると、消化吸収が良すぎて、食べても、食べても、お腹がすきやすいということがある。このような場合は、胃熱を取り去る治療をするとか、口と胃に蓋をするような治療をすることで、食べ過ぎ、飲み過ぎを自己コントロールしやすくする必要がある。

 

E.生理痛と随伴症状

男性には実感として分かりにくいことではあるが、女性は毎月の生理に伴う諸症状があって、それが仕事において支障を来すことがあり得る。これには、個人差があるが、ほとんどの女性にあり得ることである。このことが当然のこととして、男性の側においても認識され、企業としても相応の対策が立てられていなければ、現代は男女共同参画時代と言われても、その前提条件が整っていないということになる。

生理に伴う症状には、生理前にイライラしたり、怒りっぽくなったり、精神的に不安定化しやすくなり、仕事に集中できなくなることがある。さらに季肋部痛、少腹部痛、片頭痛、耳鳴り、冷えのぼせ、異常な頚部や肩の凝り、視力の低下、少腹部痛、浮腫み、動悸、下痢あるいは便秘、異常食欲あるいは食欲不振、顔面の吹き出物、眼の周りのクマ等の症状を伴うことある。

A,Bの症状に、このような症状が加算されると、ますます仕事に集中することがむつかしくなる。

生理痛の程度が酷くて、仕事に集中できない人が、相当数いるにもかかわらず、何もないかのように見過ごされているのが現状である。

生理痛の重い症状がある人に対しては、企業としても対策を立て、仕事に集中できるようにする必要がある。

このことの解決策は、大げさに考える必要はなく、生理痛の治療は生理前に行えば、生理痛の予防ができるし、また生理痛そのものの治療も効果的にできる。また痛みを抑えるだけでなく、すべての症状を同時に治療することもできる。さらに、治療を継続すれば、生理痛の根本的な治療の可能性もある。

婦人科疾患のもう一つの代表的な更年期障害は、個人差はあるが、程度の重い人は深刻であり、心身ともに限界をオーバーするような症状が長期に続く場合もあり、退職せざるをえなくなることもある。

更年期障害は、一定の時期が来なければ、すっかり治癒することはむつかしいが、症状をコントロールすることは可能であるので、治療しながら仕事を継続することができる。

 

F.運動不足に伴う症状

学生時代に運動部にいて、スポーツで鍛えて、体力には自信があった筈の人が就職後、パソコンの仕事を一日中するようになって、半年もしないうちに、身体も心もぼろぼろになって会社を辞めていく人がいかに多いことか。

本人が一番、ショックを受けているが、会社の方も有能な人材として将来を期待していた人の突然の退職願いに驚くと同時に、またか、どうしてと疑問符が湧いてくる。

この疑問に答えるのは、さほど難しいことではない。

学生時代には、スポーツをして身体をよく動かしていた。就職をしてからは、一日中、パソコンに向かって座っているので、運動によるエネルギー消費が極端に減少しているにもかかわらず、食べる量はほとんど変わらないという場合、どうなるか、食べ過ぎた分は、人体にとって不必要な邪気である痰湿として体内に蓄積される。

食べ過ぎによる痰湿は、デブになってかっこが悪くなるというだけでなく、邪気となって、自分自身に襲い掛かってくるのである。

巷では、この状態をメタボとも言っているが、痰湿は全身の至る所に行き着き、いたずらをする。頭に行き着くと、頭重、嗜眠、無気力、落ち込み、鬱々としてくる、この状態にストレスが加わると本格的鬱病になる可能性がある、皮下に貯まると浮腫、全身的重だるさと倦怠感、様々な臓器にも深刻な影響を及ぼす可能性もあり、まさに万病のもとになり得るのである。

また、極端な運動不足は、動かないことによる於血を形成するので、全身至る所に、於血に伴う痛みを生じる可能性がある。

A,Bの症状に、運動不足と食べ過ぎによる痰湿の症状が加算されると、深刻な得体のしれない症状を伴ったパソコン病になって、就職後、数ヶ月もしないうちに退職願の提出という事態になりかねない。

このような事態を回避するには、急激な運動不足が命取りになるので、運動量を減らすにしても、徐々に減らすようにするべきである。そのためには、仕事が終わった後、適当なスポーツができるような時間的余裕が持てるようにする必要である。また、運動量に見合った食事量にするべきである。

なお、病的状態になってしまった場合は、食欲を抑える治療と痰湿と於血を取り除く治療を行う必要がある。このような治療を行えば、退職願いを出す必要がなくなる。

 

G.低血圧、高血圧タイプの症状

高血圧、低血圧のいずれであっても、肩凝りの性質のちがいがあるが、仕事と関わりなく日常的に肩凝りになりやすい場合がある。このような肩凝りタイプの人は、パソコンのような肩凝りを起こしやすい仕事をしたら気の毒なことになる可能性があるので、しっかりとした対策を立てて仕事をする必要がある。

現代では、少なくなってきた脾気虚タイプの低血圧の人は、脾の昇清作用が弱く、また気の流れる勢いも弱いので、気に先導されて流れている血も目詰まりを起こして流れが停滞し、気虚於血の肩凝りになる。このタイプの人は、肩凝りになったからと言って運動をしてもエネルギー不足のタイプなので運動をした分だけ、さらに疲れる可能性があるので、疲れるような激しい運動は避けて、負担が少ない軽度の気持が良くてほぐれるような運動をするとよい。

このタイプの治療は、補気をメインにして、正気を損傷しないように活血する必要がある。治療効果は即効性があり、また治療を継続すると体質が変わって根治することもある。

また現代は、メタボの問題が大きくクローズアップされる時代なので、食べ過ぎによる痰湿中阻、またストレスによる肝気鬱結の状態が長く続くと、結果的に、脾の昇清作用が低下して肺や頭に栄養が届かなくなり、中焦が実証であるにもかかわらず、上焦が虚証になって低血圧になることがある。

このタイプの低血圧は、若い女性にも多く、食欲があって、エネルギッシュである反面、午前中は低血圧の気虚証の症状があるが、身体を動かしているうちに、中焦の実証による詰まりが緩んでくると、脾の昇清作用も働くようになって上焦の虚証がなくなり、エンジンがかかってくる。この治療は低血圧の虚証の症状があっても、肝気鬱結や痰湿中阻が本質的な原因なの、実証としての治療をメインにするべきである。

高血圧症タイプの人は、陽気が亢進しているので、仕事に関わらず、常に頭の中が熱っぽくて膨張する感じがあり、頚部や肩も、同様に張っている感じがする。興奮するような刺激を受けると、症状が悪化することがある。このようなタイプは、肩が凝りやすいパソコンの仕事を長時間続けることはできない。無理をしたら、後で大変辛い症状に襲われることがある。

比較的若い人で、陽気が亢進しているだけの実証タイプの高血圧は瀉法の治療をするとよい。老人や陰虚陽亢タイプの高血圧には、陽亢には瀉法、陰虚には補法をするとよい。

 

「パソコン病の基本的症状と関係する疾患別の治療法」

1.パソコンの長時間の操作に伴う身体的症状とその治療法 

a.頭皮治療法

この治療法は、身体に対する司令塔に相当する大脳、脳幹、小脳に対する治療を通して、全身の治療を行うという新しい治療法である。これまでの一般的な治療法である身体の臓腑や身体の各部分に対して行う治療法とは、発想において全く異なるものである。

*パソコン病の特徴である疲労の仕方のアンバランスの回復には、全身運動である水泳、ジョギング、全身を動かす体操、その他の適切なスポーツ等が良い。頭皮治療では、全身的な運動に相応するものとして、全身的な治療効果を狙って、全身の気滞於血、痰湿を取り除くために、脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦に対して鍼または指の手技による瀉法を行って、全身の気血津液の調和をはかる。その後、個別的な症状や局所の治療を行うようにする。

*パソコン病の直接的な症状である頚部と肩、肩関節の症状がある場合には、頭皮治療法の図に描かれている脊柱線の頚椎とそれに並行する数ミリ外側の反応線、さらに肩凝り線とそれに並行する反応線に鍼よる雀啄の瀉法、または手指による平補平瀉の手技を行う。

上肢、下肢に症状がある場合は、大脳線Ⅳの上肢線、下肢線とそれに並行する反応線に、

また背部、腰部に症状がある場合は、脊柱線の胸椎、腰椎、仙骨と、それに並行する反応線に、鍼の瀉法または手指による平補平瀉法の手技を行う。

*手指や適当な道具による手技の治療効果は、針治療に近い効果を出すことができる。

手指による手技の場合は、治療線中で反応が強く現れている部分を中心にして平補平瀉法の手技を行う。

*治療線の選定は、臓腑弁証や経絡弁証を基礎として行うが、同時に、現代医学の基礎知識を参照にして選定する。

「手技のポイント」

治療線は、1から2ミリくらいの細い溝状になっているので、20度角くらいで、正確に刺入する。線から逸れると、痛みが出やすく効果も少なくなる。正確に刺入すると、絡むような感じがなく鍼先が滑らかであり、痛みや響きもない。少し時間が経過すると、鍼先が締め付けられるような粘い感じがしてくる。そのような感じがしたら、治療効果がはっきり出てくる。

鍼の手技は、雀啄の補瀉法である。

指による手技は平補平瀉法である。得気を得て気持ちが良い範囲内の圧力で手技をする。

b.耳ツボ療法

神門、肝、眼、 頚、肩、腰、上肢、下肢の相応する部位、耳尖の刺絡

取穴位置の誤差は1ミリ以下のピンポイントである。少しずれても、治療効果は半減するか、ゼロになる。圧刺激をすると、顔をしかめるくらい痛がるところがピンポイントのツボである。種子を貼った後に、もう一度、顔をしかめるくらいの圧痛があるかどうかを確認する。圧痛点を丁寧に探すことが仕事である。単純なことであるが、このことが実行できるようになれば、耳ツボ名人になれる。

臓腑弁証を基礎にした取穴に、現代医学に基づいた取穴を併用する。

この耳ツボ療法では、植物性の種を絆創膏で張り付けるだけなので、補瀉手技はできないが、平補平瀉の手技の効果が出るので、良性の双方向性の調節作用を引き出すことができる。したがって、虚証、実証に対しても効果を発揮できる。

鍼や金属製品を使って耳の軟骨の炎症を起こした場合、治療が難しいことがあるので使用禁止すべきである。植物性の種は安全である。

c.手鍼治療

督脈、小腸経、膀胱経の痛みに対しては、下後谿

頚部のすべての部位の痛みや凝りに対しては、三焦穴で5分から1寸の範囲の反応点

背部の凝りや痛みに対しては、三焦穴の1~1.5寸の範囲の反応点

腰部、下肢(胃経、三陰経)の痛みや凝りに対しては三焦穴の1.5寸~2寸の腰腿点付近の反応点

腰部、股関節、下肢(膀胱経、胆経)の痛みや凝りに対しては、下焦穴の1.5寸から2寸の腰腿点付近の反応点

肩井穴の前方から鎖骨の内側部の痛みには下合谷

手のツボに鍼、または手技による瀉法をする。運動鍼にすると効果的である。

d.経絡、経穴による鍼治療

全身の気の巡りをよくするために、内関から間使あるいは郄門までの透刺を先行して行う。すると、局所や個々の症状に対する治療効果が良くなる。

大腸経の症状と頚部(C2の天柱付近)の症状と肩井付近の凝りには合谷の運動鍼

少陽経の風池や天髎の凝りや痛み、頚部(C3からC6の膀胱経)の症状には外関

小腸経の症状と頚部(C6からTh1の膀胱経)の症状には後谿の運動鍼

督脈上の頚部や腰背部の症状、同名経の膀胱経全体の症状には後谿

全身の於血による症状、または肩関節の肺経の痛みには三陰交

肺経の重だるい症状には同名経の陰陵泉

全身の湿邪による重だるさや浮腫みには陰陵泉と豊隆

大腸経の肩凝りや関節痛には、同名経の足三里の下1寸

肝気鬱結、肝火上炎には太衝、内関から間使の透刺、風池、百会

眼の症状には光明、太衝、陰陵泉(湿熱)、三陰交(於血)、風池、天柱、攅竹から晴明の透刺、絲竹空から太陽へ透刺

風池の周辺の凝りや痛みの症状には丘墟

胸鎖乳突筋の痛みには懸鐘

頚部、肩凝りの局所取穴としては天柱、風池、肩井、天髎、天宗等、また、局所の是穴

症状のある経絡の井穴

局所に吸い玉

e.経絡、経穴への手技療法

全身的レベルの肝気鬱結や労損による気滞於血による痛みや凝り、精神的不振には、内関から郄門にかけて心包経の経絡に対する瀉法を行う、この治療を、個々の症状に対する治療よりも先行させて行う。また、肝経の太衝と、肝経の骨上の蠡溝から中都までの経絡に対する瀉法

全身的レベルの湿邪や痰湿による重だるさには陰陵泉や豊隆の瀉法を加える。

*治療は、全身的レベルの治療を優先した方が良い。局所の治療は、全身状態を好転させておいた後に治療すると、効果的な治療ができる。

手技療法では、鍼治療のように、ツボという一点に対して、あるいは、経絡の線に対して、さらに面に対しても対応できるので、臨機応変に使い分けながら効果的な治療をすることができる。

*その後、個別の大腸経に沿った肩、肩関節、上肢、とくに示指の痛みやしびれ、運動制限、さらに肩井付近の凝りには、大腸経の合谷、あるいは曲池から温溜までの経絡に対する瀉法、あるいは陽明大腸経と同名経の陽明胃経の上巨虚から足三里にかけての反応点への瀉法

少陽経の頚部の風池や天髎付近の凝りや痛みに対しては、四瀆から外関までの経絡に対する瀉法

また風池の凝りには丘墟、肩凝りや肩関節部の凝りには陽陵泉、胸鎖乳突筋の凝りには懸鐘の瀉法

肩背部、肩関節部の小腸経の凝りや痛みには、支正の付近の経絡上の瀉法、あるいは後谿、または養老の瀉法の手技をしながら運動をさせる。

肺経に症状がある場合は、尺沢あるいは尺沢から孔最までの経絡上の瀉法、湿邪による重さがあれば、同名経の陰陵泉、また於血による痛みがあれば、三陰交の瀉法

督脈、太陽小腸経、膀胱経の3経の凝りや痛みには、後谿の瀉法で運動をさせる。

各経絡のどの部位であっても、関係する経絡の井穴を指で刺激しながら運動をさせる。

膀胱経の下肢、腰部、背部の痛みや凝りには、委中の瀉法

頚部の膀胱経の痛みや凝りには、崑崙の瀉法

膀胱経の湿邪による重みには、兪穴の束骨、胆経の湿邪には足の臨泣

各経絡の疎通経絡には井穴

「手技のポイントについて」

伝統的な手技療法である調気手技療法は、四診合算による弁証に基づいて、経絡経穴を選定し、経絡に流れている気に対して、程よい圧を加え、得気を得た状態で、補瀉手技を行い、陰陽五行のバランスを整えることである。

*撮む強さ、押して回転するときの圧力の強さの加減は得気を得られる強さである。

指による補瀉手技で、得気を得る指の適度の圧力とは、経絡に流れている気に、指が程よく届く深さである。患者は、気持ちよく感じ、効きそうな気がする指の圧力が良い。

圧が弱ければ、経絡の深さに圧が届いていないので、物足りない感じがする、強過ぎれば、経絡を突き抜けているので痛く感じ、治療効果も半減する。

程よい強さで気持ちよく感じる圧力が、経絡の深さに丁度、届いていて、経絡の中を流れている気を捉えることができるので治療効果も高くなる。

*男性は、筋肉質であるので、筋肉の中に流れている経絡に指の圧力が届くには、女性よりも強い圧力が必要である。女性は男性よりも弱くてよい。女性は男性の半分から3分の2程度の圧がよい。

実証は硬くなった凝りがあることが多いので、経絡に圧刺激が程よく届くようにするには、強くする必要がある。虚証の場合は、力がなくなって柔らかくなっている場合が多いので弱い圧力でよい。

経絡経穴から指が逸れたら、効果がなく、痛いあるいは嫌な感覚がして、効く気がしないと患者は感じる。

*この手技は、筋肉やリンパに対するマッサージとは違って、経絡を流れている気に対して働きかけていくことがポイントなので、気の感覚を捉えながら治療することが大切である。そのためには、患者の反応をよく見ながら、初心者は、時には、どんな風に感じているかを患者に尋ねながら行うとよい。

*引くは瀉法、押すは補法、 経絡の気の流れに逆らうのが瀉法、従うのが補法、患者の正面に向かって外回りに回転さすのが瀉法、内回りが補法である。この回転方向は陰経、陽経にかかわらず、あるいは背部においても同じ回転方向になる。したがって、背部では内回りになる。これらの補瀉法の原則を間違えると、治療効果は裏目に出ることがある。揉みおこしなどというものは本来的にはあってはならない。それは、虚実の診断を間違えたか、得気が取れていないか、補瀉手技をまちがえたかである。

*一般的に行われているマッサージでは、ほどほどの気持ち良さがあるが、実証タイプの拒按の反応が出る人はマッサージ嫌いになる。一般的マッサージは、補の作用に傾いているので、このような拒按タイプの人には裏目になる。一般的には、補瀉法の原理は適用されていないので、まぐれで効くこともあるが、裏目に出ることも多い。プラスマイナスゼロであれば、まあまあということになる。

*肩井、天髎、肩外兪付近の局所の実証の凝りには、大きく撮んで引っ張る提挿の瀉法の手技が良い。

背部や腰部の凝りには、脊柱起立筋を縦の状態で、あるいは、交差するように、大きく撮みながら、下から上に向かって手技をする。凝りの強いところは、撮んだ状態でしばらく引っ張るとよい。

あるいは、親指や母指球を使って、ときには、硬い凝りがある腰部などには肘を使って、瀉法の方向(背部では内回り)に回転させる捻転の瀉法の手技をしながら、また補瀉迎随の原則に従って、下から上に向かって補瀉迎随の瀉法を行う。

*捻転の瀉法の回転方向は、患者さんの正面に向かって、外回りの回転が瀉法であり、この回転方向は、背部においても、陰経、陽経に関わらず同じである。ちなみに、背面の回転方向は内回りになる。なお、任脈、督脈の回転方向は、男性は左半身の回転方向、女性は右半身の回転方向に準じて行う。

*頚部の膀胱経や胸鎖乳突筋の凝りは、大きく撮んで引っ張る、撮みにくいところは、瀉法の捻転による手技にする。

手足の凝りや弁証取穴による経穴の瀉法には、補瀉迎随による瀉法、撮んで引っ張る提挿の瀉法、それがしにくい場合は、瀉法の回転による捻転の瀉法、なお、アキレス腱やふくろはぎは、撮んで引っ張る瀉法がよい。

 

2.頭脳労働に伴う症状の治療

a.頭皮治療法

大脳の疲労に対しては、大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰ上焦に鍼の瀉法、あるいは指による手技療法

b.耳ツボ療法

神門、額、神経系統皮質下、脳、心、枕、

c.経絡経穴による鍼治療

百会、風池、天柱、印堂、合谷、内関から間使、三陰交

d.経絡経穴への手技療法

内関から郄門までの経絡には経絡の気の流れに逆らうように補瀉迎随の瀉法を行う。

百会の捻転の瀉法、 督脈、任脈の手技は、男性は左半身、女性は右半身の手技に準ずる。

風池、天柱の付近は、内回りの回転による捻転の瀉法、頚部の膀胱経は、撮んで引っ張れるようなら、そうしてもよい。また、少し難しいけれど、膏肓兪付近のスジを指で引っ張ってもよい。

肩井、天髎、肩外兪の付近は、一括して大きく撮んで引っ張る瀉法

肝兪の付近から大序までを、下から上に向かって、内回りに回転させながら行う補瀉法と捻転の複合の瀉。

脊柱起立筋を縦の状態で撮んで引っ張ってもよい。あるいは、兪穴を下から上に向かって、親指を滑らすようにしながら大きく撮んで行く、特に、肝兪、膈兪、心兪、蕨陰兪をやや強く撮んで引っ張る提挿法等の複合の補瀉手技を行うとよい。この代わりに、吸い玉で、下から上に向かってオイルを塗った皮膚の上を滑らしてゆく方法もよい。反応の強いツボは、吸い玉を、引っ張って刺激量を強くしてもよい。

 

3.精神的ストレスによる症状の治療法

a.頭皮治療法

大脳線Ⅰ、大脳線Ⅲ、脳幹線Ⅰあるいは大脳線Ⅱの中焦、上焦に刺鍼するか、指による手技をする。

鍼治療は瀉法

治療効果は、即効性があり、リッラクスできるようになる。ストレスの原因そのものは、治療で取り除くことはできないが、精神状態が好転してくるので、原因の解決に向けて取り組む力が出てくるかもしれない。あるいは、ストレスに対する免疫力が生理的にアップしてくる。

b.耳ツボ療法

神門、肝、心、神経系皮質下、脳幹、脳、額、枕、眼

治療効果は即効性があり、4~5日間、種を貼った状態のままにする。1日に、5回くらい撮んで多少痛い程度の刺激をする、すると、これで治療を継続していることになる。

それで鍼治療の効果よりも持続性があるので、慢性的な症状がある場合には、耳ツボ療法を採用するとよい。

c.経絡経穴による鍼治療

印堂、四神聡、風池、天柱、内関、神門、太衝に瀉法

肝気鬱結による精神症状に、不眠症が加わった場合には、心肝火旺として捉えて神門を追加取穴する。

老人や慢性化している人の不眠症の場合は、心腎不交の不眠症も考えられるので、その場合は、復溜あるいは三陰交の補法を追加する。

また、脾気虚タイプの人が、不眠症になると、心脾両虚になることがあり、その場合には、神門、三陰交の補法

d.経絡経穴への手技療法

心包経の内関から郄門、さらに、心経の神門から通里までの瀉法

印堂を撮んで引っ張る

百会、風池、太衝へ捻転の瀉法、

背部の肝兪から蕨陰兪、膏肓兪まで、捻転の瀉法、補瀉迎随の瀉法、あるいは撮んで引っ張る提挿の瀉法

肝経の骨上の蠡溝から中都の経絡に対する補瀉迎随の瀉法

 

4.飲食不節に伴う症状の治療

a.頭皮療法

脳幹線Ⅰ、脳幹線Ⅱの中焦、大脳線Ⅰへの鍼による瀉法、あるいは、指による手技をする。

脳幹線Ⅰ、Ⅱで、痰湿中阻の治療ができて、大脳線Ⅰで脳の痰湿を取り除く。

b.耳ツボ療法

脾、胃、肝、神門

この配穴で、脾の水湿の運化作用や肝の疏泄作用が良くなるので、メタボに伴う諸症状の治療や病気の予防には最適である。

頭皮治療と耳ツボ治療を併用すると、相乗効果で、さらに、全身の水の代謝が良くなり、気滞於血がなくなれば、顔面部や下肢、さらに全身の浮腫みや弛み、腹部の膨満、眼の周りのクマ、くすみ、肌荒れが取れ、全身的美容効果が出る。

ダイエットには、さらに飢点を追加するとよい。部分痩せを希望する人には、たとえば、腹部であれば、腹に取穴すれば良い。脂肪太りには、興奮点あるいは丘脳に取穴して、筋肉運動をすると、効果的に脂肪を消費できるのでダイエット効果が高まる。

c.経絡経穴による鍼治療

内関、中脘、水分、足三里、豊隆、陰陵泉、太衝、すべて瀉法にする

胃熱があり、冷飲を好む場合には内庭を追加取穴する。

頭重がある場合は頭維を追加取穴する。

脾虚湿生の虚証タイプには、足三里、陰陵泉に先瀉後補、補法にポイントがある。

d.経絡経穴への手技療法

内関から間使への瀉法、足三里、豊隆、太衝の瀉法、あるいは、肘、膝から先の手足の心包経、胃経、肝経への瀉法、さらに、胃兪、脾兪、膈兪、肝兪の膀胱経への補瀉迎髄、捻転法の瀉法

 

5.生理痛とその随伴症状の治療

a.頭皮治療法

脳幹線Ⅰ、Ⅱの下焦、中焦に鍼の瀉法、または調気手技療法の平補平瀉

b.耳ツボ療法

神門、肝、子宮、卵巣、内分泌

c.経絡経穴による鍼治療

内関、三陰交、太衝、少腹部の肝経上に出る反応点あるいは子宮穴

冷えのぼせには百会、太衝から湧泉に透刺、肝気鬱結による実証の全身的寒がりや冷え性には内関から間使のへ透刺、期門、太衝、三陰交の全面的瀉法で気血を巡らせるようにすると、全身の冷えが抜けて行く。季肋部痛には期門、偏頭痛には風池、丘墟、仙骨部痛には次髎を追加取穴する。

d.経絡経穴への手技療法

内関から郄門までの心包経の瀉法で行気することで、去湿の治療効果も高くなる。

三陰交から地機までの脾経の補瀉迎随の瀉法

太衝の捻転の瀉法、あるいは肝経の骨上の蠡溝から中都の経絡に対する補瀉迎随の瀉法

膀胱経の肝兪から膈兪まで、さらに次髎の瀉法

生理の後半から、出血したことで、血虚に伴う虚痛や全身的消耗感が出る場合は、足三里、三陰交に補法をする。

 

6.運動不足に伴う症状の治療

身体を動かさないと、気血津液の流れが停滞し、気滞、於血、痰湿が形成されて、それらの邪気が自分自身の身体に襲いかかってきて、様々な疾病を引き起こすようになる。

邪気を取り除き、気血津液の流れを回復させる治療をしなければならない。

治則は行気活血、行気去湿である。

a.頭皮治療法

脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦、上焦、邪気が停滞している臓腑や身体の局所に相応した治療線

b.耳ツボ療法

神門、肝、胆、脾、胃、さらに相応する臓腑や身体の局所のツボ

c.白川式手鍼

鍼または指による手技で、症状に応じて取穴するとよい。

d.経絡経穴による鍼治療と吸い玉治療

行気活血には、内関から間使への透刺、三陰交、また合谷、太衝の瀉法

行気去湿には、内関から間使への透刺、陰陵泉、豊隆の瀉法

各経絡の去湿には五兪穴の兪穴の瀉法

各経絡の活血には郄穴、あるいは井穴への刺鍼や、局所の吸い玉

各経絡の疎通経絡や炎症の治療には、井穴への刺鍼、さらに井穴からの抜鍼跡からの出血に対してはアルコール綿でよく拭き取って消毒する。

背部、腰部の兪穴には委中の瀉法と吸い玉をする、また腰背部にオイルを塗り、吸い玉を使って補瀉迎随法(下から上へ滑らす)と提挿法(吸いついている吸い玉を、さらに引っ張る)の複合の瀉法

e.経絡経穴への手技療法

行気活血には、内関から郄門までの瀉法、三陰交から地機までの瀉法、さらに合谷と太衝の瀉法、また肝経の骨上の蠡溝から中都の経絡に対する補瀉迎随の瀉法

行気去湿には、内関から間使の補瀉迎随の瀉法、豊隆、陰稜泉の瀉法

各経絡の去湿には五兪穴の兪穴

各経絡の活血化於には郄穴

各経絡の疎通経絡には井穴を爪で刺激をする。

背、腰部の気滞於血、あるいは湿邪には、補瀉迎随法、提挿法(撮んで引っ張る)、捻転法(背部は内回りの回転)の複合の手技、また委中の補瀉迎随の瀉法

肩凝りの肩井、天髎、肩外兪付近の凝りには、大きく撮んで引っ張る提挿の瀉法

肩背部の実証の凝りに対して、指圧で押すと、補瀉法の原理からすると押すは補法になるので、後から、重くなったり、なお、痛くなったりすることがある。揉みお越しの原因になる。

虚証タイプの人の凝りには、押すのは正しいが、現代では、治療院にマッサージで来る人のほとんどの人は、実証タイプの凝りなので、押さずに引っ張る瀉法がよい。

天柱、風池の凝りは内回りの捻転の瀉法か撮んで引っ張れるようなら、それがよい。

肩井、天柱、第2頚椎付近の凝りには合谷の捻転の瀉法、さらに曲池から手三里までの大腸経の補瀉迎随の瀉法がよい、また肩井の凝りは胆経であるが合谷の瀉法が効果的である。

風池や肩髎、第4~6の頚椎の凝りには外関の捻転の瀉法、また四瀆付近の三焦経の捻転の瀉法か補瀉迎随の瀉法がよい。

第6~7頚椎、第1胸椎の凝り、また小腸経、膀胱経、督脈の痛みには、後谿の捻転の瀉法

腰背部の実証の痛みには、委中の補瀉迎随の瀉法、頚部の膀胱の痛みには崑崙の瀉法、

心兪、蕨陰兪、膏肓兪の凝りや痛みには内関、太衝がよい

 

7.高血圧、低血圧に伴う治療

a.頭皮治療法

実証タイプの高血圧の治療には、脳幹線Ⅰの中焦、下焦の瀉法、脳幹線Ⅱの中焦の瀉法

陰虚陽亢タイプの高血圧には、脳幹線Ⅰの下焦は補法に変える

気虚証タイプの低血圧には、脳幹線Ⅰの中焦、上焦に補法

実証の痰湿中阻や肝気犯脾等により脾の昇清作用がうまく働かなくなると、結果的に、上焦が虚証になって引き起こされる低血圧には、脳幹線Ⅰ、Ⅱの中焦の瀉法

b.耳ツボ

実証タイプの高血圧には、肝、降圧点、神門

陰虚陽亢タイプには、実証タイプの高血圧のツボに、腎を追加する

気虚証タイプの低血圧には、脾、昇圧点

中焦が実証であるが、上焦が虚証になる虚実夾雑タイプの低血圧には、肝、脾、胃、昇圧点

「手技の問題」

耳ツボの治療は、植物の種を使って、ツボに圧刺激をするだけなので、鍼治療のような効果的な補瀉法をすることは難しい。しかし、耳ツボは双方向性の良性の調節作用が働きやすいので、虚証、実証のいずれにも、効果を発揮することができる。低血圧の虚証、虚実夾雑のいずれのタイプにも、脾、昇圧点等のツボは有効性を発揮する。

c.経絡、経穴による鍼あるいは手技による治療

実証タイプの高血圧には、百会、風池、内関、太衝、足三里の瀉法

陰虚陽亢タイプには、さらに復溜あるいは三陰交の補法を追加する

気虚証タイプの低血圧には、百会、合谷、足三里、あるいは太淵、太白の補法

中焦が実証であるタイプの低血圧には、内関から間使の瀉法、太衝、陰陵泉、足三里の瀉法。表示法として、合谷、百会の補法をすることもある。

 

おわりに

パソコン病の治療方法には、頭皮治療法(鍼、手技のいずれも可)、調気手技療法、耳ツボ療法、手鍼療法、鍼治療、灸、火鍼、刺絡、吸い玉等、様々な治療法がある。

患者の希望する治療法で、患者の体質や症状に合わせて、効果的な治療法を選択することになる。

鍼は、怖くていやだという人には、手指による調気手技療法や耳ツボ、吸い玉等で、鍼治療とあまり変わらないくらいの効果的な治療ができる。

治療する身体の部位も、頭皮、耳、手、眼のまわりや顔面、そして手足に重点をおいた全身治療等になるが、これも、患者の同意のもとに、効果的な治療の部位を選択することができる。

パソコン病の直接的な症状を中心にして治療するが、その症状を悪化させている病因に対して、あるいは体質に対しても治療する。また各患者に相応した養生法をアドバイスする。

根本的な問題は治療する側のレベルにある。現状のマッサージは、医学レベルの治療ができる体系になっていないので、慰安型マッサージの域を出ることができない。

患者からのマッサージに対する要望は、パソコン病をはじめ、病院に行っても、治りにくい病気に対して、医学レベルの治療効果があって、しかも気持ちよく治療してくれる治療型マッサージが求められている。

鍼治療においても、同様のことが言える。慰安型の鍼灸や、治療範囲が特定の疾患に限定されてしかも低レベルの治療効果しか期待できない鍼灸から、日常的疾患から難病の現代病に対しても対応能力のある治療型の鍼灸に転換してゆくことが求められている。

 

今後、鍼灸マッサージの学校、盲学校の学生や有資格者を対象に、パソコン病をはじめとする現代病の治療ができるように、臨床訓練を中心にした再教育を実施して、患者の要望に応えられるようにする必要がある。

 

鍼灸マッサージ専門学校、盲学校、さらに、病院、IT関連の企業、温泉地の観光関連産業等からの要求があれば、講習会、説明会、治療のデモストレーション等を行います。

東京五行堂中医臨床国際交流センター代表

東京医療福祉専門学校教員養成科講師

白川治療院 院長

調気手技療法研究会会長

 

白川 徳仁