「弁証取穴の基礎」 弁証取穴で使われる常用穴を補瀉に分類1

「弁証取穴の基礎」

弁証取穴で使われる常用穴を補瀉に分類1  

要穴は全て覚えた方がよいが、臨床上は、そこまでの必要性はない。

要穴には、五兪穴(60穴)、原穴(12穴)、絡穴(15穴)、郄穴(16穴)、八会穴(8穴)、八脈交会穴(8穴)、下合穴(6穴)、背兪穴(12穴)、募穴(12穴)、交会穴(96)がある。

これらの要穴は、理論上、大切であるが、臨床上あまり使われないものもある。

これらの要穴の中から、弁証取穴で常用される臨床的価値の高い90穴位を使いこなせるようになる必要がある。

経穴学の教科書は、肺経の経穴から始まって、順序よく、全経穴を取り上げてゆくのが一般的であるが、ここでは、弁証取穴に使われる常用穴を、補法、瀉法、補瀉双方に使われる経穴に、3分類して取り上げることにする。

 

1 弁証取穴で補法に使われる常用穴

 大部分の経穴の作用は基本的に補瀉の双方向性がある。弁証取穴においても、瀉法、補法、補瀉双方に使う経穴に三分類できる。

各経絡上の経穴は、その経絡に属する臓腑の生理、病理との関係、あるいは各経穴の固有の性格によって、瀉法、補法、補瀉双方に使えるかどうかを考えるべきである。

  1. 補法に使われる脾経、胃経、腎経の常用穴
  • 脾経、胃経は、脾胃は気血生化の源なので、補気、補血、後天の気を補う経絡である。脾経、胃経の井穴と栄穴や顔面部の経穴は、一般的に補法としては使われないが、その他の経穴は、基本的には補瀉法のいずれにも使われる。
    例えば、足三里、太白、三陰交等は気血を補う常用穴であり、また、腹部の乳根から気衝までの経穴も補法として使われる。
  • 腎は陰陽の根本である。陰陽の根本を補い、先天の気を補うことができるのは腎経であり、太谿、復溜、照海等は陰陽の根本を補う常用穴である。
  • 脾経、胃経、腎経は気血陰陽を直接的に補える経絡である。この三経以外の経絡は直接的に気血生化の源、陰陽の根本を補うことはできない。

 

補法に使われる背兪穴、原穴、任脈、督脈の常用穴

  1. 背兪穴は臓腑の経気が輸注しているので、臓腑に対する補法に、また瀉法にも使える。
  2. 十二原穴は臓腑の原気が通過し留まる経穴なので、理論上は、原穴は臓腑の治療ができ、また、臓腑の虚を補うことができる。
    しかし、臨床上、臓腑の補法として使うことができる原穴は太谿、太白、太淵、神門、合谷等であり、その他の原穴は、臨床上、補法で使うことはあまりない。太谿以外の原穴は瀉法としても使うことができる。腎の原穴である太谿は腎には実証はないので瀉法で使うことはしない。
  3. 任脉の関元は壮陽の穴であり、気海は元気あるいは下焦の気を補うことができる。また、中脘は中焦の気を、膻中は上焦の気を補うことができる。
  4. 督脈の命門と大椎は腎陽を補うことができる。

 

3弁証取穴で瀉法に使われる常用穴

 腑病には、実証が多く、また腑が詰まると大変なことになるので、補法が使われることは少ない。気血生化の源を補う足三里等がある胃経は、瀉法だけでなく、補法としても使われるが、胃経以外の手足の陽経の経穴は瀉法としてよく使われる。

  1. 大腸経で瀉法に使われる常用穴は曲池、合谷(例外的に、合谷は肺経の表裏関係の原穴であるので、汗証の虚証の自汗等の治療に対して補法として使われるが、他の経穴は瀉法としてよく使われる)
  2. 小腸経の常用穴は後谿(臓腑としての小腸の治療は、下合穴の下巨虚を使って治療する、あるいは脾の病証として治療するので、小腸経の経穴は臓腑弁証取穴で使うことは少なく、瀉法としてよく使われる。)
  3. 膀胱経の常用穴は秩辺、次髎、委中、崑崙、束骨(膀胱経の背兪穴は補瀉双方に使えるが、それ以外の経穴は瀉法に多く使われる。)
  4. 胆経の常用穴は丘墟、足臨泣、陽輔、環跳(胆経は瀉法に使われることが多いが、髄会の懸鍾、筋会の陽陵泉、補益脳髄、明目の作用がある風池等は補法にも使われる。)
  5. 三焦経の常用穴は中渚、外関、支溝(三焦は臓腑の外腑であり、三焦の上焦、中焦、下焦の各臓腑の治療は各臓腑の経絡の経穴、兪募穴等で治療する。三焦経の経穴は、外腑としての三焦病、経絡病、少陽病の治療に使われ、瀉法に使われることが多い。)
  6. 肺経の常用穴は尺沢、列欠、魚際(尺沢は合水穴であるので、尺沢は補法にも使えるが、臨床上は、母子関係で、金の子穴になるので、肺の実証に対する瀉法に使われる。列欠は絡穴で、理論上は補法にも使えるが、臨床上は瀉法として使われることが多い。)
  7. 心包経の常用穴は間使、内関(心包は邪気から心を防衛する作用があることにより、去邪するのに適している経穴であり、補法に使用することはない。)
  8. 肝経の常用穴は太衝、行間、期門(太衝は原穴なので、理論上、補瀉双方に使えるが、肝血虚には三陰交への補法が使われるので、臨床上は、太衝は補法に使われず瀉法に使われる。また、肝陰虚には、曲泉は合水穴なので補法に使われるが、通常は、復溜や三陰交が使われることが多い。)
  9. 井穴は心下滿を主る、あるいは、開竅醒神やその経の疎通経絡の効能だあることから瀉法あるいは瀉血法に使われる。
  10. 栄穴は身熱を主るので、清熱のために瀉法として使われる。(例外として、腎経の然谷は、腎は水火の宅であるので、腎陽虚に対して補法で使うと温補腎陽の効能がある。)

 

4 弁証取穴で補瀉双方に使われる常用穴

 経絡が属する臓腑に虚実があることから、経穴は、理論上、補瀉双方に使うことができるが、臨床上は様々な制約がある。

  1. 補瀉双方に頻繁に使われる常用穴は、胃経(足三里、脾経(血海、陰陵泉、三陰交、公孫)、心経(神門)、大腸経(合谷)、胆経(風池、陽陵泉、懸鍾)等である。
  2. 任脉(膻中、中脘、気海、中極)、督脈(百会、大椎)等である。
  3. 背兪穴(腎兪以外)は補瀉双方に使われる。
  4. 八会穴の章門、中脘、膻中、膈兪、陽陵泉、大杼、絶骨は補瀉双方に使える。
  5. 絡穴の豊隆は補瀉双方に使えるが、臨床上は去痰のために瀉法で使われることが多い。
  6. 任脉の気会の膻中は補気することもできるが、臨床上は、気滞に対する瀉法として使用されることの方が多い。
  7. 関元は補瀉双方に使えるが、通常は元陽を補う経穴として灸がよく使用される。
  8. 中極は膀胱の募穴であり、下焦湿熱証で瀉法として多用されるが、気化行水や膀胱の約束を助けるために補法として使われることもある。
  9. 気海は下焦の気滯に、あるいは元気を補う要穴として補瀉双方に多用される。
  10. 命門は、督脈の経気を通暢するために瀉法に使用することもできるが、通常は、命門火衰に対して灸を使う。

 

原穴の補法、母子関係での補法に使われる弁証取穴の常用穴

  1. 原穴の補法の常用穴
    原穴は理論上、臓腑の治療ができることになっているが、臨床上、臓腑弁証取穴で補法として使用できる原穴は、太谿、太白、太淵、神門、合谷である。その他の原穴は、補法として使うことは少ない。
    例えば、心包経の大陵は、臓腑理論上、臓腑の治療で瀉法に使えるが、補法に使うことはない。なお、神門は補瀉法のいずれにも使える。
    例えば、膀胱経の京骨は原穴であるが、経絡理論上は、臓腑弁証取穴で使うことができないとは言えないが、臨床上は、疏通経絡のために瀉法として使う。
    なお、腎経の太谿以外の原穴は全て瀉法に使うことができる。
    原穴が臓腑弁証取穴として使えるかどうかは、臓腑理論と整合性がある場合にのみ使える。
  2. 母子関係での補法の常用穴
    五兪穴を使って、母子関係での母穴を取穴することで補うことができる。しかし、臨床上、この取穴法の常用穴として使用されるのは、腎経の経金穴の復溜を使って腎陰虚を、肝経の合水穴の曲泉を使って肝陰虚を、肺経の兪土穴の太淵を使って肺気虚を、さらに脾経の兪土穴の太白を使って脾気虚や肺気虚を補う等である。太白は脾気虚だけでなく、肺気虚も補うのに有効である。
    脾経の太白で肺気虚を補える根拠は、脾経は肺経の母経であり、さらに脾経上では、太白は肺の母穴である土穴だからである。さらに、脾と肺の関係は、臓腑理論上からも、脾は気血生化の源であり、脾を補うことで、肺気も補うことができる。つまり、培土生金の関係にあるので、臓腑理論上も、臨床上も太白で肺気を補うことができる。
    しかし、母子関係の補瀉法の理論を一般化して臨床で使うことには無理があり、臨床上の効果にも疑問がある。この理論の有効性の範囲は臓腑理論と整合性がある場合のみである。
    例えば、腎虚に対して、腎経の経金穴の復溜の補法は有効であるが、腎の母経の肺経の経金穴である経渠で腎虚を補うということは臓腑理論上、無理がある。
    臓腑理論からして、肺経には、腎経や脾経のように補う力はないし、肺と腎の関係では、腎は陰陽の根本なので、腎が肺を補えるが、肺が腎を補うことはできない。したがって、経渠で、腎虚を補うということは、臓腑理論上、無理があり、臨床上の有効性も疑わしい。
    例えば、心気虚に対して、心経上の心の母穴である井木穴の少衝では、井穴の性格からしても、補うことはできない。臨床上は、原穴の神門や背兪穴の心兪には補う力があるが、井穴の少衝には、そのような効能はない。さらに、心の母経である肝経の井木穴の太敦にも補う力はない。
    心気に限らず、どの臓腑の気を補うにしても、気血生化の源である脾胃の経絡から、たとえば、足三里、太白を取穴し補法をすればよい。
    なお、理論上は、母子関係の補瀉法で、子穴を使って瀉すことができるが、臓腑理論上ありえない取穴になることがある。臨床上、有効性があるものは限定される。
    例えば、胆経の実証の治療に胆経の木の子穴である経火穴の陽輔、肺の実証には肺経の合水穴で金の子穴である尺沢は臨床においても有効である。しかし、肺実に対して、子経である腎経の合水穴の陰谷を瀉すことは臓腑理論上ありえないし、臨床効果もない。

 

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