「弁証取穴の基礎」弁証取穴に使われる常用穴を補瀉に分類2

「弁証取穴の基礎」

弁証取穴に使われる常用穴を補瀉に分類2

 

1 気血陰陽の虚証に対する弁証取穴の常用穴

  1. 気虚証の常用穴
    脾経と胃経の経穴には補気作用がある。気の製造工場に相当する脾胃を補うことで補気することができる。
    常用穴としては足三里(胃経の合穴)、太白(脾経の原穴)である。さらに、公孫(脾経の絡穴)、兪穴の脾兪、胃兪、章門(脾経の募穴)、気会の膻中(上焦の気会)、胃経の募穴の中脘(中焦の気会)、先天の元気の海である気海(下焦の気会)、三陰交、関元も使用できる。
    太淵(肺経の原穴で兪土穴)、肺兪(兪穴)への補法で、脾胃で作られた気を全身に配送するセンター的機能(肺は一身の気を主る)を有する肺を補うことができ、肺気、あるいは、宗気を補うことができる。また肺の表裏関係である大腸経の合谷(原穴)は汗証の気虚証による自汗等に使われる。
    全身的な気虚証には、任脉の代表的な経穴である膻中(上気海)、中脘(中気海)、気海(下気海)、太淵(一身の気を主る)、太白(後天の気を生じる)、足三里(強壮の穴、気血の生化の源)、脾兪と胃兪(後天の気の源)、大谿と腎兪(先天の気の源)等によって補気できる。
    以上の経穴は、すべて補気作用があるが、臨床上の必要に応じて適切な選穴をするとよい。
  2. 血虚証の常用穴 
    三陰交、足三里、脾兪、胃兪(血の製造工場である脾を補い、全身的血虚に対応できる)膈兪(心肝血虚、上半身の血証に使われる)
    血海(調経、下半身の血証、血虚による皮膚瘙痒に使われる)
  3. 陰虚証の常用穴
    腎は、全身の陰陽の根本であるので、陰を補うためには、腎経あるいは、腎と関係する経絡から選穴する必要がある。例えば、復溜(経金穴で腎の母穴)、照海、太谿(原穴)、陰谷(合穴)、腎兪、志室、大腸兪、三陰交(足の三陰経の交会穴)等である。
  4. 陽虚証の常用穴
    腎は、精を蔵し、水火の宅であるので、陽を補うためには、腎経あるいは、腎と関係する経絡から選穴する必要がある。例えば、太谿、関元、命門、大椎(諸陽の会)、腎兪、志室、三焦兪、大腸兪、気海兪等
    腎陰虚、腎陽虚、腎気虚、腎精不足に対して、腎経中の大半の常用穴は共通して使えるが、各証型による経穴の使い分けもある。

以上の全ての常用穴を取穴するというわけではなく、臨床上の必要に応じて適切な選穴をすればよい。

 

2 臓腑の虚証に対する弁証取穴の常用穴

  1. 臓腑の虚証に対する常用穴
    気血陰陽を補う常用穴、該当する経絡の原穴(太谿、太白、太淵、神門、合谷)、母子関係の母穴、下合穴、背兪穴、募穴、任脉、督脈の常用穴から選穴する。
    肺気虚、衛気不固 太淵、合谷、肺兪、足三里、太白、公孫、風門、膻中(例えば、合谷と足三里、太淵と太白というように組穴にして使うことができる)
    肺陰虚 復溜、照海、肺兪、太淵(太淵、肺兪だけでは不十分であり、肺の陰液を補うには、腎経の復溜あるいは照海は不可欠である)
    心気虚 足三里、神門、心兪、膻中(心経を補うだけでは心気は補えないので、気の生産工場に相当する脾胃を足三里で補う必要がある)
    心血虚 三陰交、神門、心兪、(膈兪を追加してもよい。血の生産工場に相当する脾胃を三陰交で補う必要がある)
    心陽虚 神門、心兪、厥陰兪、関元(針の補法に焼山火あるいは灸)、膻中、大谿(関元、太谿で、陰陽の根本である腎陽を補う必要がある)
    心陰虚 復溜、神門、心兪、太谿(腎陰を補う必要がある)
    脾気虚 足三里、太白、脾兪、公孫、三陰交
    脾虚生湿 陰陵泉(一穴で治療する場合は先瀉後補あるいは平補平瀉、脾兪、足三里等を補う場合は瀉法)足三里、水分、脾兪
    中気下陥 足三里、合谷、百会、気海、中脘
    胃陰虚 復溜、胃兪(復溜で腎陰を補うことで胃陰を補うことができる)
    肝血虚 三陰交、肝兪、血海、曲泉、陰谷
    肝陰虚 復溜、三陰交、曲泉、肝兪、太谿、陰谷、
    腎気虚、腎精不足、腎陽虚、腎陰虚の弁証取穴は上記した腎虚証の各証型の取穴と同じである。腎不納気、腎気不固の取穴は、腎気虚の取穴に準じる。

 

3 臓腑間の虚証に対する弁証取穴の常用穴

  1. 各臓腑の弁証取穴を適当に組み合わせる。
    肺脾気虚 太淵、太白、足三里、肺兪、脾兪
    肺腎気虚 太淵、太谿、肺兪、腎兪
    心脾両虚 神門、三陰交、心兪、脾兪、足三里
    心腎陽虚 神門、太谿、関元(針の補法に焼山火あるいは灸)、心兪、腎兪
    心腎不交 復溜、三陰交、太谿、神門(瀉法)心兪、腎兪
    心胆気虚 神門、心兪、肝兪、三陰交、丘墟、太衝、膻中
    脾胃虚弱 足三里、太白、脾兪、胃兪
    脾腎陽虚 足三里あるいは太白、太谿、関元(針の補法に焼山火あるいは灸)、脾兪、腎兪
    肝腎不足 太谿、三陰交、肝兪、腎兪、気海
    肝腎陰虚 復溜あるいは三陰交、腎兪、肝兪
    肝陽上亢、肝陽化風 復溜あるいは三陰交、太衝(瀉法)、風池(瀉法)百会(瀉法)、湧泉(瀉法)

 

4 外邪に対する弁証取穴の瀉法の常用穴

  1. 風邪 
    曲池(一身の風邪、風熱表証、肌膚の風邪、)、列欠(風寒と風熱の表証)、大椎(風寒と風熱の表証―風寒には針の瀉法と灸)、風門、外関、風池、合谷
  2. 寒邪
    列欠、大椎(風寒表証―針の瀉法と灸)、寒熱喘咳を主る各経絡の五兪穴の経穴(痺症―陽輔、崑崙、解谿等)、中脘(寒邪直中―針の瀉法と灸) 
  3. 湿邪
    陰陵泉 各経絡の五兪穴の体重節痛を主る兪穴(痺症―足臨泣、束骨、後谿等)
  4. 火熱邪
    曲池(風熱表証、衛分、気分、陽明の熱)、大椎(風熱)、各経絡の井穴、身熱を主る各経絡の五兪穴の栄穴(魚際、液門、労宮あるいは内関で代用する、行間あるいは太衝で代用する、内庭、侠谿等)
  5. 燥邪
    列欠あるいは尺沢(瀉法)、肺兪(先瀉後補)と復溜(補法)

 

5 内生の病邪に対する弁証取穴の瀉法の常用穴

  1. 気滞
    内関あるいは間使(胸脘脇腹部の気滯、肝鬱気滞)、太衝(肝の気機失調による気滞)、合谷(肺の気機失調による気滯)、 膻中、中脘、気海(上、中、下焦の気滞)、天枢(大腸気滞)、足三里(脾胃気滞)
  2. 血瘀
    三陰交(全身性)、膈兪(上半身、心肝)、血海(下半身、生理痛、生理不順)、合谷(多気多血の経脈の原穴)、太衝(肝鬱による気滞瘀血)、各経絡の郄穴(各臓腑経絡の瘀血)
    効果的な活血をするには、血に作用する経穴を単独で使うよりも、「気は血の帥」であるので、気に作用する経穴を組み合わせて使う方が効果的である。
    例えば、気虚瘀血には足三里の補法と三陰交の瀉法、気滯瘀血には、合谷、内関、間使と太衝、血海、三陰交等を組み合わせる。(たとえば、合谷と太衝、間使と三陰交の組穴)
  3. 内生の湿邪、湿熱、寒湿、痰湿痰熱
    湿邪、湿熱には陰陵泉(全身性、中焦)、中脘(中焦)、中極、次髎(下焦)列欠(上焦)寒湿には針に灸
    痰湿には豊隆(全身性、中焦の去痰)、
    痰熱には豊隆、内庭(全身性、中焦)、 足三里(中焦)、中脘(中焦の去痰)、天突(気道の降痰)、水分(利水)
    気虚生湿には、陰陵泉に瀉法あるいは先瀉後補あるいは平補平瀉、太白、足三里に補法、また陰陵泉の瀉法と脾兪の補法の組み合わせることもできる
  4. 内生の火熱邪 
    五兪穴の身熱を主る各経絡の栄穴(内庭、魚際、行間、液門等)、曲池、大椎、三陰交(血熱)
    陰虚内熱には復溜あるいは照海、大谿の補法
  5. 内風 
    太衝、百会、風池、風府
    血虚生風 三陰交、足三里、血海に補法
    陰虚陽亢による肝風内動には、太衝、風池、百会の瀉法、復溜あるいは三陰交の補法

 

6 逆気に対する常用穴、各経絡の疎通経絡の常用穴

  1. 逆気に対する常用穴
    五兪穴の逆気を主る合穴、あるいは原穴、募穴を使う
    肺気上逆 尺沢、列欠、孔最、天突、肺兪、風門、肝気上逆 太衝、期門、日月、百会、風池
    胃気上逆 内関、足三里、上脘、中脘、胃兪、膈兪
    肝胃不和による胃気上逆 内関、太衝、足三里、中脘
    すべての経穴を取穴する必要はなく、程度に応じて追加取穴するとよい
  2. 各経絡の疎通経絡の常用穴 
    各経絡の郄穴、井穴(井穴は開竅醒志だけでなく、経気の通暢ができる、至陰、商陽、少商、少沢、関衝等)、局所穴の瀉法あるいは吸角

 

 臓腑の実証に対する弁証取穴の常用穴

肺熱 魚際あるいは尺沢
痰湿阻肺 尺沢、豊隆
心火 神門、内関(栄穴の少府、労宮は理論と一致するが、臨床上は使われることは少ない。神門と内関の方が臨床的価値は高い)
痰火擾心 神門、内関、豊隆、中脘、内庭、鳩尾
痰迷心竅 神門、内関、豊隆、陰陵泉、中脘、鳩尾、心兪
心血瘀阻 神門、内関、三陰交、心兪、厥陰兪、膈兪、郄門
胃熱 内庭、中脘、(天枢、足三里を追加してもよい)
胃寒 中脘、足三里、胃兪(灸)
食滞 中脘、足三里、内関、天枢
湿困脾 陰陵泉、足三里、中脘
肝気鬱結 太衝、期門、内関、陽陵泉
肝火上炎 太衝あるいは行間(理論上は行間になるが、太衝で代用できる)百会、風池
寒凝肝脈 太衝、大敦(針の瀉法と灸)

 

8 臓腑間の実証に対する弁証取穴の常用穴

心肝火旺 神門、内関、太衝あるいは行間
脾胃湿熱 陰陵泉、足三里、中脘、天枢、内庭
肝胆湿熱 太衝、陽陵泉、陰陵泉、侠溪、行間
肝胆火旺 太衝、風池、丘墟、侠溪、行間、陽輔(肝胆火旺による片頭痛に対して有効である。陽輔は経火穴であり、母子関係で木の子穴になる)
肝火犯肺 尺沢あるいは魚際、太衝あるいは行間
肝気犯脾 太衝(瀉法)、太白あるいは足三里の補法
肝気犯胃 太衝、足三里、中脘
下焦湿熱 陰陵泉、中極、次髎、水分
上記した常用穴は、弁証取穴において、原則に適合しているが、弁証取穴で使われる常用穴は、臨床経験に依存するところが大きいので、固定的に考える必要はない。
上記した常用穴は、臨床で頻繁に使用されている常用穴をほぼ網羅している。実際の弁証取穴では、上記した常用穴の中から、臨床上の必要に応じて適当な常用穴を選べばよい。

 

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